祈りの数だけ「一緒に羽ばたいて」







何度祈っただろう。
もう数え切れない。

ティエリアは、宇宙船の窓ごしに天使の翼を持ったニールと唇を重ねる。

「遅いです。迎えにきてくれたのですね」
スウっと、窓の外にいたニールが中に入ってくる。
そして、ティエリアを見て、隣にいるアンドロイドのニールを見て首を傾げた。
「俺が、いる・・・・」
「あなたのアンドロイドを作ったのです。許してください」
アンドロイドに触れると、それはエメラルドの光となって溶けて、ニールと融合した。
「え・・・・何これ」

今までニールが持っていなかった記憶が、波のように襲い掛かってくる。
情報という名の記憶はニールを包み込み、そして目の前のティエリアが何故アンドロイドを作ったのか知って、ニールはエメラルドの瞳で翼を広げた。
「壊れてなんかないよ」
ティエリアは泣いていた。
「お前は、壊れてなんかないよ」
「僕は、だってあなたを」
「俺もずっと愛してた。こんな姿になっても、愛ってかわらないんだな」

それは、まるで絵本の中の一ページ。

至高天の主が言っていた言葉を思い出す。
世界は愛に満ちていると。
愛はかわらない、不変の愛も存在すると。

この愛こそが、その不変の愛なのではないだろうか。

地上の天使は、何百年も、死んだ恋人ニール・ディランディを愛し続けてきたのだ。そして今も愛している。

「愛してる」
映画で見たとき、ニールはなんて陳腐な台詞だろうと思った。
絶対にこんな言葉は相手に囁かないと決めていた。
だが、今自分の守護する相手、それも地上の天使と呼ばれる特別存在な人間に愛を囁く自分は、そう、エーテルの海に浸って消えてしまった記憶も全て取り戻していた。
稀におきる、エーテルゼロという現象である。

天使となった者が、前世の記憶を思い出す現象。
それは、再びエーテルによって書き換えられる。至高天は常にエーテルで満ちている。

「ニール・ディランディっていうんだ。何百年も前の人間だった俺の名前」
「何を言っているのですか?迎えにきてくれたのではないのですか?」

ニールは翼を広げてティエリアを包み込んだ。

深い慈悲の感情。

「お前の守護天使になるために奴隷から出発して、何千年もたった。そうか、俺はこうなるために天使になったんだな」
ニールの腕の中で、ティエリアは安堵してニールに抱きついた。

その時だった。
ニールがエーテルをティエリアの中から感じたのは。
バサリと、金色の翼が六枚、ティエリアの背中に出現したのだ。

「ジブリール様のいっていた、地上の天使・・・・そうか。こういう意味だったのか」
なぜ、ティエリアが地上の「天使」と呼ばれていたのかやっと分かった。
ティエリアは、もともと天使だったのだ。
人間が作り上げた人工天使。
翼がなかった。至高天にもいけなかった。
でも、今ならいける。



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