血と聖水外伝「フェンリルの買い物」







「にゃーにゃにゃにゃーにゃ」
フェンリルは機嫌よく尻尾を振っていた。
主のティエリアから、お使いを頼まれたのだ。
町を、フェンリルはいつもの散歩ルートを通って歩く。
「にゃにゃ。みーこちゃんだにゃ!」
「あら、フェンリルちゃん、お散歩?」
黒猫のみーこちゃんは、フェンリルの友達だ。お洒落さんで、毎週違う首輪をしている。
「似合う?この首輪。サファイアが大きいでしょう」
「綺麗だにゃー。みーこちゃんにとっても似合ってるにゃ!」
「あら、フェンリルちゃんのその首輪もかわいいわね。琥珀が綺麗」
「主にねだったら買ってくれたのにゃ!」
「ほんと、いい時代になったわねぇ。ペットの声が分かるようになるなんて。お陰で、エステもいきたい時にいけるし」
「そうだにゃー。僕はエステにはいかないけどにゃ。主がブラッシングしてくれるしにゃ」
「フェンリルちゃんの白銀の毛綺麗よね」
「どうもだにゃん」
フェンリルは、真っ赤に照れた。

「おっといけないにゃ!主から買い物を頼まれているのだにゃ!またにゃん!」
「またねー」
フェンリルは、塀からすたっとおりると、野菜&果物屋さんの前にやってきた。
「人参ちょーらいだにゃ!」
「おや、これまた珍しい。子猫のお客さんか」
「ちっがーうにゃ!僕はフェンリルにゃ!精霊だにゃ!」
「まぁ、お客さんならなんでもいいさー。人参いくつかな?」
「二本だにゃー。あと、苺も一パックだにゃ!」
「はいよー。全部で530リラだな」
「にゃー」
フェンリルは首にしていた風呂敷を下ろすと、財布をとりだした。
「はいだにゃ、お金よろしくだにゃ」
「はいよ、毎度・・・・あれれ?お客さーん、お金が足りないよ?」
「ガビーン!!!だにゃ!!」
フェンリルは前足で頬を押さえた。
「どうしようにゃ・・・・にゃーにゃー」
「お、いいこと思いついた。暇かい、お客さん」
「暇だにゃー」
「1時間だけお店のお手伝いしてくれたら、全部ただにしちゃうよ!」
「本当かにゃ!?」
願ってもいない言葉に、フェンリルは飛びついた。

5分後。
「あー、いらしゃいいらっしゃい、そこの綺麗なおねえさん新鮮な野菜や果物はいらないかーだにゃ!?はいよってしゃい見るだけならただだにゃーーん」
店のマスコットになったフェンリルは、野菜の並んでいる真ん中で客引きを始める。
そのかわいさに、ついついフェンリルの虜となって、野菜や果物を買っていくお客さんの多いこと。

「いや、助かったよフェンリル君。思った以上の成果だ。これ、少ないが駄賃として受け取っておくれ」
店の親父は、2千リラを財布の中にいれた。
ちなみに、1リラ=1円だ。
フェンリルが注文した人参二本と苺のパックを風呂敷に包んで、フェンリルは家に帰る。

「にゃーにゃ主、戻ったにゃ!!」
「フェンリルーーー!!」
心配してそわそわしていたティエリアは、フェンリルの帰りが遅いので町まで様子を見に行こうか迷っていたのだ。
「あれ?何このお金」
「野菜と果物屋さんでバイトしたにゃ。現金たりなくて、客の呼び込みしたら大盛況でにゃ、店の主人が2千リラお小遣いにくれたにゃん♪」
「そっか。いいことしたね。ごめんね、現金足りなくて」
「いいのにゃーん。主のためなら、働くのにゃーん」

「俺のためには煙草も買ってきてくれねーのにな」
「うっさいにゃ!」
ロックオンの頭にかじりつくフェンリル。
「あいてててて!!」
毎度こりない一人と一匹だ。

「にゃーにゃにゃ」
こうして、フェンリルは暇なときは魚屋さんで、ある時は金具屋さんで、ある時は魔法屋さんでいろんなとこで呼び込みのバイトをして、お金を確実にためていった。

そして、いよいよその日。

「主。プレゼント、だにゃ!!」
最高級のルビーのペンダントを、フェンリルはティエリアにプレセントした。
「こんな高いもの・・・どうしたの?しかもこれ、魔石のルビーじゃないか!高かっただろうに」
「いっぱいいっぱい・・・暇なときバイトしてお金ためたにゃ!」
「フェンリル・・・」
ティエリアはジーンときて涙をこぼした。
「僕、本当に君と契約できてよかった」
「僕もだにゃ。主、大好きだにゃー」
「僕も、フェンリルが大好きだよー」
「これ、お揃いにゃ。僕の首にもはめてにゃ」
「はい、これでいいかな」
「やったにゃー!念願の、自力でプレゼント、しかもお揃いにゃ!ふっふっふ、ロックオンを出し抜いたにゃ!」
ロックオンは煙草をふかしていじけていたという。

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フェンリル主人公外伝。
予定の「フェンリルの大冒険」はそれの長編かな?