血と聖水外伝「フェンリルとお引越し」







「にゃにゃにゃーにゃんにゃにゃにゃーごろにゃっ」
ロックオンの顔をばりばりに引っ掻いてご機嫌なフェンリルは、そのまま公園まで遊びに出かけた。
「にゃ?」
「ピーピー」
「にゃにゃ?」
「ピーピーピー」
「にゃーん。困ったにゃー」
カルガモのヒナが一羽、池のほとりで泣いていた。
「どうしたのにゃ?」
「お母さんがいなくなったの」
フェンリルだけに限らず、精霊はその生物とも、植物とも会話をできる特徴をもつ。
「それは困ったにゃ!!」
はたから見れば、ピーピーなくカルガモのヒナを、子猫が獲物として狙っている図に見える。

「くんくん。うむ、匂いきゃっちしたにゃ!ついておいでにゃ!」
「お母さんにあえるの?」
「あわしてあげるのにゃ!おひっこししたみたいだな、君のママは。はぐれちゃったのにゃ。僕が責任もって届けてあげるから、安心するのにゃ!」
「ありがとう、精霊さん」

「にゃーにゃにゃにゃにゃ」
「ぴーぴーぴー」

こうして、町を子猫一匹とカルガモのヒナがその後ろをピーピー鳴いて歩く変な光景が見れるようになった。

「くんくん。こっちだにゃ」
「うん。でも、足が疲れたよお」
「仕方ないにゃあ。僕の背中に乗るといいにゃ」
「いいの?」
「いいにゃ」
カルガモのひなは、フェンリルの背中にのって、首輪をくちばしで掴む。
「さぁ、いくのにゃー」

とことことフェンリルは歩く。
カルガモのヒナの足よりは早いスピードで、走りぬける。
「ついたにゃ」
「あら、坊や!!」
「お母さん!!」
「どこにいっていたの。探していたのよ。ちゃんとみんな後をついてきてると思ったら、お前だけ姿がなくって心配したのよ」
「にゃーにゃ」
「この精霊さんが、案内してくれたの」
「これはこれは・・・・氷の精霊のフェンリルさんですね。お世話になりました。お礼に・・・・このマーメイドの瞳をあげますね」
「ありがとうにゃー」
何かよく分からないが、フェンリルはお礼を貰った。

そのお礼をくわえて、ホームに戻ると、ロックオンが腰を抜かした。
「ちょ、まじ、お前がくわえてるのマーメイドの瞳じゃんか!マーメイドが100年に一度流す涙の結晶!!俺にくれ!!」
「いやだにゃ!これは、主にあげるのにゃ!」
「俺からティエリアに渡すから!!」
「いやだにゃ!!」
大人気ないロックオン。しかし、マーメイドの瞳なんて、夜の皇帝をしていた時代でも見たことのない宝石である。
「二人とも、ケンカはやめて!」

「主!主にこれあげるにゃん」
「あああ、先いかれたあああ!!」
「ふんだ、にゃ」
「これ・・・・マーメイドの瞳!?」
「そうだにゃ。カルガモさんのヒナを送り届けたお礼にもらったのにゃ」
「そのカルガモ・・・マーメイドの庇護を受けてるな。マーメイドの庇護をうけた動物しか、この宝石はもらえないんだよなぁ」
「ありがとう。マーメイドの瞳が手に入るなんて、夢みたい!」
ティエリアはとっても喜んでくれた。
フェンリルをその日は抱いて離さなかった。
マーメイドの瞳は、リングに加工されて、今も主の指を飾っているのにゃん。

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あーやべ。このしりーずくせになりそうw