血と聖水Z「女王の願い」







ティエリアはぐったりとしていた。
昨日、ロックオンに食べられ、吸血されたのだ。

「あ・・・・あうん」
ティエリアの喘ぎ声が、ホテルのロビーで響く。
ロックオンの手の中で、ティエリアは衣服を乱していた。
「ああ・・・・」
深く口付けされて、舌と舌が絡み合い、銀の糸を引く。
ロックオンは、人工血液製剤を噛み砕くと、昨日ティエリアに飲ませた白ワインと一緒に噛み砕いて、ついでに阿片も混ぜて飲ませた。
ヴァンパイアは麻薬に強い。
「ちょっと無理しすぎたな・・・・阿片いれたから、すぐに楽になる」
「あ・・・うん」
ロックオンがティエリアの口の中にいれた指を、ティエリアは甘噛みした後、舐めた。
ロックオンが、ティエリアの衣服を直してまた口付ける。
「ふ・・・」
舌が絡むキスを何度も受けて、それからロックオンはティエリアを抱き上げる。

「ちょ・・・・これはきついであります!!」
護衛担当の騎士が、股間をおさえていた。
「たえるんだ、たえろ!次の王となられるお方に欲情などしてはいかーん!!」
「しかし隊長、隊長の股間もやばいであります!なんて淫靡にエロいのでしょう、あのお二人は!!」
騎士三人は、蟹股で股間をおさえつつ歩いていった。

「にゃ・・・・エロいにゃエロすぎるにゃああ」
騎士の一人の頭の上に鎮座したフェンリルは、二人の間に入っていけず、いじけていた。

そのまま昼になり、馬車で出発する。すぐにティエル王国に入った。
そのまま数日かけて、王都に到着した。
馬車は、王宮の中へ入っていく。

騎士団長を先頭に、まわりを騎士たちに護衛されてティエリア、ロックオンは王宮に案内され、そして今即位している女王ティエルマリア二世が伏せる寝室へ入る。
ロックオンの頭をフェンリルは齧り続けている。血をたらたら流しながら、ロックオンはなんでもないかのようにふるまうが、頬がひきつっていた。

「ティエリア様・・・・ごほっ」
天蓋つきの豪奢なベッドの上には、ティエリアがいた。
「僕が・・・いる?」
「私が・・・いる?」
二人は、手をとりあって、まるで鏡の中の自分をのぞいているようにお互いを確かめる。
「そうでしたか・・・あなたも、女王ティエルマリア様のお子の容姿をついでいらっしゃるのですね」
女王は柔らかく微笑んで、ティエリアの頬に手を当てた。
「私は、ティエル王国46代目王。女王、ティエルマリア二世・ヴェルク・ヴァン・ティエル」
「僕は・・・・ティエリア・アーデ」
「私は、女王ティエルマリアの遺言により作られた、イノベイターと人間のハーフです。国が乱れることがあるようなら、私が作られるようになっていました。そして、私が生まれた」
「女王陛下・・・・」
「ティエルと呼んでください。あなたは私の姉妹。王位継承権を持つ姉です」
どう見ても、ティエリアのほうが年下なのだが、それは年を刻まない人工ヴァンパイアであるイノベイターの特徴でもあった。

「ティエリアが二人・・・こりゃ不思議だ」
リジェネもティエリアと同じ容姿をしているが、二人は魂の色まで同じだ。
ガジガジと、フェンリルはロックオンの頭を齧り続けている。

「あなたをお呼びしたのは・・・・次の王にするためではありません。このティエル王国を滅ぼそうとしてるヴァンパイアを退治していただきたいのです。夢に、女王ティエルマリアが現れ、ティエリア様ならそのヴァンパイアを滅ぼしてくれると・・・」
「この国がヴァンパイアに!?」
ティエリアは驚いた。
ティエル王国は、抱えるヴァンパイアハンターの数も世界で一番多い。
「ハンターでは対処がしきれないのです。名はリジェネ・レジェッタ。あなたと同じイノベイターであり、私たちの兄弟である方です」
「リジェネが!?何かの間違いだ!!」
ティエリアの声は、大きく女王の鼓膜をうった。
 




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