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「こんなのあり?」
「飼われてる上に、精霊と友達?しかもワーウルフのみよこちゃんと恋した仲?」

「あ、みっちゃんのマスターさん。はじめまして。僕、ケルベロスの松尾芭蕉です。名前は旦那さんが勝手に決めたので気にしないで下さい」
「はぁ・・・・」
ケルベロスに椅子を勧められて、ティエリアは素直にそれに座ってしまった。
「あ、みなさんもどうぞ。ろくなもてなしできませんけど」
「これはこれは、ご丁寧に」
すすめられた椅子に座るライルとニールとアレルヤ。
リジェネは離れて様子を窺っているし、刹那は警戒している。敵の罠という可能性が高いからだ。
「ちょっとお茶入れてきます」
ケルベロスは奥にひっこんで、紅茶を人数分いれたトレイを頭に乗せて戻ってきた。どうやってお茶入れたんだって激しくつっこみたいのをみんな我慢した。
それを受け取って、皆困惑している。飲んでいいのか。でも何か入ってそうな気がしないでもない。
「マスター。まっちゃんはいい子だよ。精霊フェンリルの名にかけて誓う」
「みんな、飲んでも大丈夫。何も入ってないから」
精霊が、その名にかけて誓うというのは、命をかけて保障するということだ。
すすめられるままに、いつの間にか刹那もリジェネも椅子に座って、紅茶を受け取ってカップを傾けた。
ケルベロスは、テーブルの足を口でくわえておくから引っ張ってくる。その上にはケーキや菓子類がのせられていた。
「いや、どうもどうもご丁寧に」
ニールは、ついついケルベロスにお辞儀をしてしまった。
皆で、ヴァンパイア退治に向かって、なぜかティータイムに突入した。
「みっちゃんのマスターさん美人だね」
「でしょう?俺の自慢なの。契約のとき一目ぼれしちゃってさ。他のフェンリルと勝負までして、契約権こぎつけたんだわ」
ケルベロスとフェンリルは、尻尾を振って楽しそうに会話している。

「僕の旦那さん、エサくれない時もあるからなぁ。故郷の魔界に帰りたいよ」
「なんで飼われてるん?」
「いやぁ、魔界から迷いでて、魔王軍にならないかっていわれてさぁ。拒否したら、放り出されちゃって。なんか虚しくて、飼い主募集って看板たててたら、今の旦那さんに拾われた。でも、魔界に戻りたいなぁ」
「じゃあ、まっちゃんマスターの召還獣になっちゃいなよ!魔界に戻れるよ」
「え、ほんとに!?」
目を輝かせるケルベロス。
尻尾を振って、ティエリアのところまでやってきて、見つめてくる。
う。
この潤んだ瞳。ケルベロスだけど犬だし。ティエリアは犬も猫もすきだ。
「マスター、だめかな?」
フェンリルにまでそういわれて、ティエリアはため息をついた。
「いいの?飼い主裏切ることになるんだよ」
「いや、旦那さん放任主義だから。別にいいよー」
松尾芭蕉さんは、そういいました。

「じゃ、じゃあ・・・・」
ティエリアが立ち上がる。
「ティエリア・アーデの名において命ずる。汝、ケルベロス、今この瞬間をもって我が召還魔法の召還獣となれ」
「我が名はケルベロスの松尾芭蕉、契約をここに執行する」
ぱぁぁあと、契約の証である刻印がケルベロスの額に刻まれ、見えなくなった。
「終わり。魔界に戻れるよ」
「うん、でももう少し遊びたい。マスター、遊んできていい?」
尻尾をふるケルベロス。
召還獣として契約したモンスター、精霊は退治されることがない。契約というものが守ってくれるからだ。このケルベロスが、ただのモンスターに間違われて退治されそうになっても、全ての攻撃を受け付けない。
そして、誰の召還獣であるかが契約にのっとり、相手に分かる。
「じゃあ、城の外に馬車置いてるから、そこで待ってて。僕はここの古城の主を退治しないといけないから」
「はーい」
ケルベロスは嬉しそうに、首輪を引きちぎって、走り去っていった。
「では、我が力は今をもって不必要と判断した。マスター、精霊界に戻る」
フェンリルは、口調まで変えて、消えてしまった。
 



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