金色の眠り「仲間」







「ティエリア、ティエリア」
刹那が、ハロを通じてヴェーダにアクセスした。
「聞こえているか?姿を見せてくれ」
刹那は、ロックオンの残した相棒のオレンジ色のハロを抱いていた。
「タダイマ、アクセスチュウ、アクセスチュウ」

はっと、ティエリアが顔をあげた。
「どうした?」
「刹那が呼んでる!行かなくちゃ!!」
「ああ、いってこい」
ティエリアは意識体のまま、白い翼を広げてヴェーダを飛び立った。
「どうした、刹那?」
ハロの中から、裸の透けたティエリアが現れる。
その姿に、ティエリアを見てしまったアレルヤとライルは頬を紅くして違う方向を見つめた。
ライルはマイスターとしてCBに残ることを決め、巡礼の旅で自分を探す旅を終えたアレルヤもマリーと一緒に帰ってきた。
マイスターは、全員健在だ。
いないのは、ロックオン、ニール・ディランディのみ。
ティエリアは、肉体はないとはいえ、意識体としてこうして刹那や他のマイスターに呼ばれると、姿を現して彼らを安心させた。
はじめは、ヴェーダへのアクセスにも応答しなかったティエリアであったが、何度も度かさなる刹那のヴェーダへのアクセスと、ヴェーダをトレミーの中に移すという、実行しかねない言葉に、はじめはヴェーダを経由して言葉を送っていたが、姿を見せてくれという言葉に、刹那はティエリアが意識体で生きており、意識体のままヴェーダの外に出れることも悟っていたのだろう。
刹那の数十回に及ぶ要請に、こうしてティエリアはハロから、呼ばれると透けた意識体で皆の前に姿を現すという、ちょっと荒療治のような登場をなした。

「ちょ、また裸かよ!服きろ、服!!」
ライルは最もな意見を述べる。
透けているとはいえ、裸は裸。
女性化した中性のティエリアの裸は、神秘的であり美しかったが、同時に少し淫靡な雰囲気もどこかに纏っていた。
「僕も、服着て欲しい・・・・」
アレルヤにまでいわれて、刹那は服をきろとかそういう要請はしないのだが、他のクルーも何も言わないが、二人が服をきろといつもうるさいので、ティエリアは紫の制服を着たイメージを脳内に描き、透けていた裸体に服を着させた。
「はじめっから、そうやって登場しろよな。なんでいつも裸なんだよ!」
「知らない。僕の意識体ははじめは裸だった。だから、そのままでいることが多い。こうやって呼び出されてヴェーダから移動すると、着ていた服が消える」
「俺は裸でも平気だが?」
刹那は首を傾げている。
そりゃそうだろう、ニールを失ったティエリアと刹那は恋人同士であった。
肉体関係もあったので、ティエリアの裸なんて見慣れているだろう。

「で、用事はなんだ、刹那?」
ライルを無視して、ティエリアは刹那の隣に移動する。
刹那の横には、フェルトがいつも立っていた。ティエリアを失ってから、フェルトと恋仲になって、告白して恋人同士になったらしい。
もともと、ティエリアにとって刹那との関係は、親友から恋人になったものなので、元に戻ってもなんの支障もなかった。刹那を今でも愛しているとは思うが、フェルトとの仲を邪魔しようとは思わない。
何より、誰よりも愛しいニールとまた出会えたのだ。
もう、ティエリアはニール以外を恋人として愛することはないだろう。

「いつになったら、完全に戻ってくるんだ?スペアの肉体はあるのだろう?ニールも一度は目覚めたが、お前を残していけないといってまた眠りについた。いつになったら戻ってくる?お前とニールの居場所はこのトレミーだ。ヴェーダの中じゃない」
きっぱりと言い放つ刹那に、ティエリアは困ったように苦笑する。
「戻るさ。いつか、必ず」
「じゃあ、今すぐ戻って来い」
「それはできない」
「何故だ?」
「僕のツインを残してはいけないから。リジェネに全てを背負わせることはできない」
「だったら、リジェネも連れてくればいいだろう」
刹那の思いがけない言葉に、ティエリアが驚く。
「いいのか?元は敵であったんだぞ」
「リボンズを裏切ったことは知っている。お前と同じイノベイドなんだろう?セラフィムガンダムを起動してくれたのはリジェネのお陰と聞いた。お前のツイン、兄弟ならトレミーの皆も受け入れる。誰も、反対する者は今のところいない」
「いいのか、みんな?」
皆を見回すが、皆頷く。
「帰ってこいよ。兄さんとそしてリジェネも連れて」
「帰っておいで」
ライルとアレルヤに続いて、マリーもイアンもフェルトもミス・スメラギもミレイナもラッセもみんな同意した。
「帰ってこい!!」
刹那が、金色に目を光らせた。
シンクロしたティエリアの瞳も金色になる。
「もう少し、待ってくれ。必ず帰ってくる。だから、もう少しだけ」
そう言って、ティエリアはヴェーダに戻っていった。

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