お年玉








「ほら、ルルーシュ、お年玉だ」
C.C.が、そんな台詞と共にお年玉をルルーシュに渡した。
「何を考えている」
じっと、お年玉を見つめる。
そんなものをもらう年齢はもう過ぎているはずだ。
もっとも、世の中では18でもまだお年玉を親からもらう子供はごまんといるが、それは親に恵まれ、愛されている家庭での話だ。
皇帝で捨てられ、母のマリアンヌにも見捨てられた形となるルルーシュには関係のない話だった。
お年玉など、もらったことがない。
それは日本の文化という特徴のせいもあるが、ブリタニアに居た頃は母の愛に包まれてとても幸せに過ごしていたのだ。あの頃は、ナナリーとそしてユーフェミアや他の異母兄、異母姉と一緒に、一人の皇族の皇子として過ごした。
今ではもう、懐かしいだけの思い出。
いらぬ思い出だ。
だが、忘れたくないと思っている自分がいる。
マリアンヌの愛に包まれ、過ごした日々を。
「お年玉など、もらう年齢ではないし、金には困っていない」
「まぁそういうな。これでも、私はお前より100歳くらい年上なんだからな。たまには年長者の顔をさせろ」
「勝手にしろ」
ルルーシュは言い放つ。
C.C.の気まぐれな行動は、今にはじまったことではない。
ルルーシュは、ナナリーにはお年玉をあげた。
ナナリーからお年玉をもらった。
それで十分だ。
親のいない二人はそれでいいのだ。
そこに介入するC.C.。
ナナリーにもお年玉をあげたようで、先ほどナナリーがC.C.にありがとうございますといっているのを聞いていた。

たった二人の兄弟の間に侵入する者。
誰であろうと排除する。
それがルルーシュだ。
だが、C.C.は排除しない。
なぜなら、家族だから。

なんとなくお年玉の中身をあけてみると、中身は思ったとおりにピザのクーポン券だった。
ルルーシュは笑う。
くくくと、綺麗な顔を歪めることもなく。
アメジストの瞳が、C.C.を映す。
「C.C.」
「なんだ」
「これは、お前にくれてやる」
ピザのクーポン券を渡す。
「それでは、お年玉をあげた意味がないではないか」
「俺は、ピザなんて頼まない」
「それもそうだな。では、これは私が有効活用するとしよう」
大事にポケットにしまいこむ。
ルルーシュはまた声を押し殺して笑った。
この魔女を家族として、良かったと思う。

「愛しているぞ、C.C.」
「何を当たり前なことをほざいている」
なんともまぁ、でかい態度だことだ。
ルルーシュはC.C.の緑の髪をさらうと、そこに口付けるのだった。