プール開き(魔女と魔王シリーズ)







夏。
ミーンミーンと蝉のなく声が遠くで木霊する。
ブリタニア帝国、100代目皇帝ナナリーの即位するその国では、暑さからプール開きが全国で広まっていた。
市民プールも学校のプールも。
そして、王宮のプールも。室内プールもあるが、普通のプールがやっとプール開きの日を迎えた。

皇帝ナナリーは、水着に着替えてすでにプールの中で自動前進機能つきのハイテク浮き輪で泳いでいる。ナナリーは足が不自由なので、一人では泳げない。
その隣では、C.C.が華麗にスイスイと泳いでいた。

ブッス〜〜。

小さなルルーシュは、女官に水着を渡されて自分で着替えて、そしてベンチの上で不機嫌そうに座っていた。
「おい、ルルーシュ。お前も泳げよ。いい加減、観念しろ」
C.C.がバシャバシャとルルーシュに向かって水をかける。
「この魔女がああ!!」
ルルーシュは、水鉄砲を取り出すと、それでC.C.に水をかけた。

ルルーシュの体育の成績は2。
頭脳明晰容姿端麗を誇る彼であったが、体育だけは苦手だった。持久力も忍耐力もなければ瞬発力もない。ああ、なんたるかな。ルルーシュは完璧のようで完璧ではない。
チェスでは全国大会優勝者と争うような腕だし、今でもシュナイゼルとはいい勝負で、勝ち負けはその時による。
「俺は・・・・・・俺は・・・・・・世界を呪う。なぜ、世界には体育という授業があるのだあああ!!!」
頭を抱えて、ルルーシュは嘆く。
悲嘆にくれるルルーシュであるが、現実は厳しい。

帝王学も学びながら、健康な体を作るためには体育は必須科目。
ああ、なんたるかな。
クロールで爽快に泳ぐスザクが羨ましい。

「ルルーシュ。ほら、浮き輪」
スザクが、子供用の浮き輪をルルーシュに渡す。
今日はスザクもいるために、家庭教師はスザク、つまりはゼロにルルーシュの体育の授業を譲った。

「泳がないと、家庭教師が追加で授業で温室プールで泳がせるだってさ」
「ぐぬぬぬ・・・・・世界は、なぜにこうも歪んでいる!」
「いや、ルルーシュ。ゼロレイクエムのお陰で、世界はすごく平和だから」
スザクが笑う。
プールからあがったC.C.は、浮き輪をつけた息子のルルーシュをプールに蹴り落とした。

ザッバーン。
よい子のみんなは真似してはいけません。
「何をする、C.C.!!」
「つべこべいわずに泳げ。せっかくスザクがゼロの時間を割いて、家庭教師になってくれたんだぞ。好意を無駄にするな。忘れるな。スザクはゼロだ。こうやって、共にいれる時間は貴重なのだ」
「知っている」
浮き輪でプカプカプールを漂いながら、ルルーシュは頬を膨らませた。

「小さなお兄様、どうか授業とは思わず楽しんでください」
「ナナリー・・・・楽しそうだな」
「ええ、とても気持ちがいいです」

「さぁルルーシュ!まずは・・・・苦手な平泳ぎからいこうか」
スザクが、手本をみせてくれる。
「こうか?」
のたーりのたーり。
手と足はばらばら、まるで海に落ちてもがいている泳げないイカのようだ。
「いや、そうじゃなくって、こう!!」
「口でいっても分からないだろう。こうだ!!」
C.C.が、ルルーシュの手足を強引に動かす。
「こうか!」
のたーりのたーり。
少しはましになったが、まるで海に落ちて溺れている泳げないタコのようだ。

C.C.はビキニの水着をきていた。
ルルーシュの手が、その上の水着をもがきながらつかんだ。
ぱらり。胸の位置で結ばれていたリボンがほどけてポロリと胸が。
「があああ!!!」
ルルーシュは、C.C.の胸に埋められた。
「見るなよ、スザク。見ていいのはルルーシュと同性のナナリーだけだ」
「は、はい」
おっぽいにおしつけられて、もがくルルーシュ。
嬉しいというより苦しい。

「C.C.さん、はい、水着」
漂っていた水着を着なおすC.C.。
ルルーシュはC.C.のわりと豊満な胸でパフパフされて沈没した。
「ルルーシュ!」
「お兄様!」

ポコココ・・・・。
プールの底に沈みかけていたルルーシュは、泳いだ。
必死に。
バシャバシャバシャ。
「すごいよルルーシュ!なんて凄い犬かきなんだ!!」
スザクが褒め称える。
「凄いな。あっはっは、お前には犬かきがお似合いだ」
「モガー!!」
バシャバシャバシャ。
「小さなお兄様、こんな才能があったなんて!」

見ていないで助けろよ、お前らとルルーシュは心の中で叫んだ。

ひょいっと、もがくルルーシュをC.C.が抱き上げる。
「浮き輪を忘れているぞ」
「溺れていたんだ!!」
「そうなのか。泳いでいるようにしか見えなかった」
「この魔女め!」
ルルーシュは、浮き輪をつけて必死にプールの中でC.C.を追いかける。
スイスイとC.C.は泳いでいく。
「ルルーシュ、そう、そうだよ、それが平泳ぎだ!」
スザクがルルーシュにそのままと声を続ける。
なんとか形になった平泳ぎでルルーシュはプールを泳ぐ。

ザプン。
C.C.はプールの中に潜り、同じく潜ったルルーシュと水中でキスをしてから水面にあがった。
「マーメイドみたいだな」
「ははは、これでも泳ぎは得意だ」
C.C.は満面の笑みで、ルルーシュののたくらした泳ぎに付き合う。

ルルーシュの、家庭教師の通信簿に、プールの泳ぎについての項目にこう書かれた。
「犬かきが素晴らしいルルーシュ様・・・泳ぎは得意ではあられぬ様子。しかし、泳ぐことは基礎体力をつけるにはよいのでこれからも犬かきで。注意、浮き輪必須。ないと沈没されます」
報告したのはスザクとC.C.だ。

「おのれえええ!!泳げなくて何が悪い!!」
ルルーシュは、ナナリーに褒められながらも、C.C.に抱かれながら、プンプン怒っていたそうな。