紅茶をどうぞ(魔女と魔王シリーズ特別編)







「紅茶をどうぞ、お母様」
ルルーシュは、メイド姿で母であるC.C.の持っているカップに紅茶を注ぐ。
C.C.はニマニマしている。
その後ろではナナリーがルルーシュの写真をとりまくっていた。
「小さなお兄様、笑顔笑顔」
「ああ、ナナリー」
ルルーシュの笑顔は引き攣りまくっていた。頬の筋肉が痙攣しそうだ。
屈辱で、今すぐ逃げ出したい。
スキを見て逃げ出そうと、踵を返したルルーシュの小さな体を、シュナイゼルが抱きとめた。
「だめじゃないかルルーシュ。逃げたりしては。賭けチェスに負けたのは君だろう。そのメイド服とても似合っているよ。どんな女の子よりも可愛い。将来、私のお嫁さんになるかい?」
ルルーシュを抱きかかえて、その頬にキスをした。
「嫌だ!俺はナナリーとC.C.のお嫁さんになるんだ!!」
すでに、婿という選択肢が頭に残っていなかった。

昨日、シュナイゼルと賭けチェスをして、また負けた。
ルルーシュも懲りない。どうしても、シュナイゼルの負けた悔しがる顔を見たいのだ。そして、シュナイゼルにも女装させてやると、心に決めていた。
勝敗はまたもやあっさりと決まる。
そして、シュナイゼルの代わりに自分がまた女装する羽目になったルルーシュは、逃げ出したのだが、C.C.に掴まって、無理やり少女用のメイド服に着替えさせられて今に至る。
「小さなお兄様、笑顔笑顔」
「あ、ああナナリー。こうかな?」
その笑顔は、やっぱり引き攣っていた。
「そうですわ。とても愛らしいですわ。かわいい」
ナナリーはうっとりとしている。
妹がいれば、きっとこんな感じなのだろうと思っている。
「小さなお兄様、レディでも十分通用しますね。もともと美しいんですもの。化粧もなにもしなくてもこんなに綺麗で可愛い。お兄様はもともと、女装はお得意でしたからね」
「なんの話だい、ナナリー」
「あ、シュナイゼルお兄様。いいえ、ちょっとした昔話ですわ」
シュナイゼルには、今のルルーシュにかつての少年皇帝であったルルーシュの精神が宿っているということは話していないので、適当にごまかした。
「ああ・・・・そういえば、いなくなってしまったルルーシュも、よく賭けチェスで負けて女装させられていたね。そんなところまでそっくりだね。流石はルルーシュの子か。容姿まで瓜二つだし。幼い頃のルルーシュを見ているようで、今のルルーシュを見ていると心が和むよ。ルルーシュは本当によく出来た子だった。本当にそっくりだね。まるで、昔のルルーシュが帰ってきたようだ」
その言葉に、ナナリーはちょっとギクリとしたが、シュナイゼルの笑顔はなんの疑いも持たぬ晴れやかなものだった。
「それはシュナイゼルお兄様。ルルーシュお兄様の血を引いているのですもの。似ていて当たり前ですわ」
「そうだね、ナナリー。ルルーシュ、私にも紅茶のおかわりを」
「はい・・・シュナイゼルお兄様」
引き攣った笑みのまま、ルルーシュはティーポットを手に、シュナイゼルのカップに紅茶を注ぐ。
次に、ナナリーのカップに。

「本当によく似合っているな。生まれてくる性別を間違えたか?いっそ、女の子になったらどうだ」
「C.C.!!」
ルルーシュが怒ってメイド服をしわくちゃにしながら、ティーポットをテーブルの上において、C.C.のスカートを、なんとめくった。
「うわ!」
「はははは、ざまぁみろ!」
「このバカ息子!バカルルーシュ!!」
C.C.は真っ赤になって、スカートをすぐに元に戻すと、メイド姿のルルーシュを捕まえていつものようにデコピン。
「私を怒らせたな。今日はその姿で一日中いてもらうぞ」
「嘘」
「あら、C.C.さんそれはよい案ですわ」
「かわいいルルーシュが見放題か。違うドレスも用意しよう」
シュナイゼルはのりのりだ。ルルーシュの体型にあうドレスは、コーネリアの娘のユーフェミア皇女のドレスがあまるほどにある。これもユーフェミアの服だった。
コーネリアは、最愛の妹に瓜二つの娘に妹の名をつけ、こうやってメイド服とかコスプレさせては悦に浸っている。皇族は、みんな平和ボケしすぎてみんな頭のネジが緩んでいるようだった。

「掴まるものか!」
ルルーシュは逃げ出した。
「待て!!」
C.C.が追いかける。すぐに掴まって、言葉通り、フリフリのドレスに着替えさせられて、ルルーシュはその日一日中かわいい女の子姿で仏頂面だったという。