我慢U







「入るぞ」

ノックもなしに部屋に入ってきたルキアを見て、一護は顔を朱くした。

「な、なんつーかっこしてやがんだ」

「何、雨に打たれただけだ」

1時間ほど前は、晴天だった。

急な土砂降りになって、傘も持たずにでかけたルキアの携帯に、連絡を入れようか迷っていたところだった。

純白のワンピースは、どしゃぶり雨のせいで濡れて、体のラインがくっきりと見える。控えめな胸を飾る、ブラジャーの形や色、レースの細かいところまでわかった。

「ほら、バスタオル!」

ばさりと、バスタオルを渡されて、ルキアはそれで髪と体をふいた。

「新しいワンピースあっただろ。あれでも着とけ」

「別に、ほうっておけばすぐ乾く」

着替えようとしないルキアの無防備さに、一護はため息を零した。

「お前な・・・・見えてるんだよ!下着が!」

「なっ・・・・・・」

真っ赤になって、ルキアは体を隠すが、すでにばっちりと一護に見られていた。

「たわけ!このむっつりスケベめが!」

「お前の不注意だろうが」

「着替えるから、見るなよ!」

「あほ、俺がいるところで着替えるな!部屋出るから、着替え終わったらいえよ」

一護は、ルキアを残して廊下にでた。

3分くらい経って、遅いなとイライラしだす。

5分経って、まだかと頭をかきむしった。

10分経って、いい加減しろこのやろうと、ドアをノックしてから中に入った。

「----------!なんで着替えてないんだ!」

「いやな、この格好意外と涼しくてだな・・・・・」

ルキアは天然だけど、ここまでくると煽っているとしか思えない。

「風邪ひくだろうが!」

ルキアのワンピースの上から薄め自分のトレーナーを着せる。

トレーナーはぶかぶかだった。

「貴様の匂いがする・・・・・・」

その言葉に、心拍数が上がる。

人間と死神。

死神代行と死神。


結ばれているようで結ばれていない線は、きっと延長したずっと先で、交わっている。


「ルキア」

「なんだ」

「アホ」

ぺしっと、額を指ではじくと、ルキアはぷんぷんと怒った。

「たわけ、何をする!」

「お前な。恋次にも多分言われてるだろうけど、自分が女だってこと、忘れてないか?」

「男尊女卑か!」

「違う、このアホが」

「アホというほうがアホなのだ!このウルトラアホ!」

ルキアはまくしたてるが、その細い体を抱き寄せた。

「一護?」

「俺も、これでも一応男なんだぜ。この前言ったよな、お前のことが好きだって」

「覚えておるわ、たわけ!」

「あのな。仲間だから、好きとかそういうんじゃないんだぞ。恋愛感情で好きんなんだ」

改めて言われて、ルキアの頬に朱がさした。

「ずるいぞ、一護」

「何がだよ」

「お前ばかり、いい思いをしているのであろう?私にも、少しよこせ!」

押し倒されて、一護はルキアを見上げた。

触れるだけの、口づけが降ってくる。

一護は、ぎゅっと目を閉じてるいるルキアの顎を掴んで、舌をいれた。

「んんっ!」

ぬるりと舌が入ってきて、目をあけた。

紫紺の瞳が、与えられる熱で潤んでいく。

「あ・・・・・」

背中のラインを、服越しからたどられて、ルキアは真っ赤になった。

「こういうこと、俺はしたいと思ってるから。お前も、それをちゃんと意識して、俺に接しろ」

「どうすればいいというのだ!」

「俺の部屋に入る時は、ちゃんとノックすること。無防備な姿にならないこと。俺を煽るような行動はとらないこと」

「3つめが、分からぬ。どうすればいいのだ・・・・」

一護は、頭をがりがりとかいた。

「とにかくだ」

ルキアを押し倒して、その桜色の唇に指をはわす。

「こうやって、近い距離にいることとか・・・いろいろ、俺もつらいんだよ!」

ルキアを解放して、一護はベッドに寝転がった。

「同じ屋根の下だもんな・・・・難しいけど、俺が我慢するしかねーか」

「何をぶつぶついっておるのだ、たわけ!」

のぞきこんでくる、顔の距離が近い。

肩より少し伸びた黒髪が、さらりと一護の頬にふれた。

「そういう行動が無防備で、煽ってるっていうんだよ!」

ルキアの頭をはたいた。

「おのれ、何をする!」

「あーもううるせー。お前は押入れで寝ろ」

「何故だ!妹たちの部屋が嫌だと言ったら、一緒のベッドでいいとぬかしたではないか!」

「今日は押入れだ」

「ぐぬぬぬ・・・」

うなるルキアを押入れに放り込んで、一護はベッドに寝転がった。

「っとに、人がどれだけ我慢してると思ってるんだ・・・・・・・」




翌日目覚めると、腕の中にルキアがいた。

「また勝手にでてきやがって・・・・・」

スースーと、眠りについているルキアを見る。睫毛が思ったより長いなと思いながら、一護はルキアの額に口づけた。

「んーむにゃむにゃ。兄様、わかめ大使が泳いできます・・・・・・・」

「なんの夢みてやがんだ」

今日もまた、一護の我慢する過酷な日の幕開けだ。

いつまで我慢できるだろうと思いつつ、一護はルキアを起こしてお互い制服に着替え、学校にいくのであった。