日番谷の受難X







「は〜」

浮竹は、松本がいれたお茶をのんで、ほっこりしていた。

凝りもせずに、またやってきた浮竹を見て、もはや諦めかけていた日番谷がそれでも声を出す。

「くつろぐんなら雨乾堂でくつろいだらどうだ」

「いや、日番谷隊長が好きだから」

ぶーーーー!

日番谷は、お茶を吹き出した。

「お、お前何言ってやがる。お前には京楽がいるだろうが!」

「いや、ただ単に好きだなーと思って。ちなみに、白哉も同じくらい好きだぞ」

「ああ、そういうことか」

松本は目を輝かせていたけれど、残念ながら恋慕の類の感情ではない。

ただ、友人としてというか、ただの付き合いのある人間の好き嫌いの意味だ。

「朽木だって好きだし、一護君も好きだ」

浮竹のいう朽木は、義妹のルキアのほうだ。

「仙太郎と清音も好きだ」

「他には?」

「おはぎも好きだし、わかめ大使も好きだし・・・・・好きなものはいっぱいある」

「まぁ、分からないでもない」

日番谷は、氷輪丸の手入れをはじめた。

「普通の「好き」なんですか?つまんなーい」

「松本、うるさい」

「だって隊長〜。浮竹隊長は女性死神協会でも根強い人気のある、京楽隊長とできてることで生まれる「萌え」の発祥地なんですよ」

もはや何をいっているのか、日番谷には理解できなかった。

「浮竹隊長と隊長って、どっちも受ですよね」

ブーーーー!

日番谷はまたお茶を吹き出した。

「てめぇ、何いってやがる!」

「えー。だって隊長かわいいし、絶対受ですよ」

「浮竹もなんか言ってやれ」

「いや、俺は受なのは本当だから」

お茶をのんでまったりしている浮竹の頭を殴った。

「痛いじゃないか」

「お前がそんなだから、松本とか女性死神協会の恰好の的になるんだ!」

「別に、隠してないんだし、構わない」

「そういえば、浮竹隊長って、シャンプー何使ってるんですかー」

松本が、白い浮竹の髪を触った。

「いい匂い・・・・甘い花の香がしますね。それにサラサラ」

「京楽がかってきたやつだ。品名は覚えないが、雪国ってメーカーだったと思う」

「雪国!?あの伝説の雪国のシャンプー!」

「いいやつなのか?」

「去年の売り上げNO1のやつですよ!売り切れ続出で、滅多に手に入らない高級品です」

「そうか。あたらしい試供品のやつもらったから、今度松本副隊長にあげよう」

「ほんとですか!うれしいー!」

日番谷は、京楽は、そういえば上流貴族だったなと思いだす。

松本と浮竹は、石鹸はボディーソープだの、リンスはなんだのと会話に花を咲かせていた。

見知った霊圧を感知して、浮竹がびくりと身を強張らせた。

「浮竹ぇ〜」

ゆらりと、幽霊のように京楽が現れた。

浮竹は、その顔を見て日番谷の背中に隠れた。

「京楽、なんだぞの顔!」

額には肉とかかれていたし、目のまわりとかいろいろ黒で塗られてパンダ模様になっていた。

思わず、日番谷は吹き出していた。

「あははははは、京楽隊長の顔おっかしー」

松本は、遠慮なくげらげらと笑っていた。

「浮竹のせいだよ。寝ている間に落書きして・・・・しかも、油性マジックで!」

中々色が落ちないのだと、怒っていた。

「浮竹、素直に謝るなら許してあげるから。ね?こっちへおいで」

浮竹は、ぶんぶんと首を振って、日番谷の影に隠れていた。

「日番谷隊長、ごめんね」

日番谷を突き飛ばして、京楽は浮竹の腕をとる。

「お前が約束を守らないから!」

「それは悪かったよ。だから、謝っただろう?それなのに、こんな真似はないんじゃないかい」

「だって、昨日はしないっていった!なのに3回も!」


「・・・・・・・・・・・」

日番谷は、抜刀した。

「でも、気持ちよかったでしょう?」

「それは・・・・・んっ」


「蒼天に座せ、氷輪丸!」


執務室中を氷漬けにして、日番谷は外にでた。
瞬歩で屋根の上に移動した浮竹と京楽をみて、また氷の龍をとばした。

「あははは、またね、日番谷隊長」

浮竹を抱き上げて、屋根伝いに走っていく京楽に叫ぶ、

「もう二度とくんなーーーーー!」

でも、懲りずにまた浮竹は現れる。

日番谷隊長の受難は続くのであった。