/にゃんにゃんキャンディ







「ほら、これが頼まれていたものダヨ」

「ああ、すまないねぇ、涅隊長」

涅マユリが、京楽に渡したのは小さな箱だった。

「まったく、これっきりにしてほしいね。わたしは実験と研究に忙しいのダヨ。まぁ、稼がせてもらったけれど、二度目はないからね」

「はいはい」

京楽は、渡された白い箱をもってにんまりと笑んだ。

大金をつんで、涅マユリにあるものを作らせた。上級貴族出身である京楽は、遊ぶ金がたくさんある。隊長になっての給料も大分あるのに、現世でいう銀行に、たくさんの貯金があった。その一部をつかって、涅マユリに作らせたものは、小さな箱に入るようなものだった

「これで浮竹は・・・・・・・むふふふ」

これから現実にする野望を胸に、京楽は瞬歩で12番隊の退舎を去って行った。


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「浮竹ー!」

雨乾堂を夕刻に訪れた京楽は、いつものようにずかずかと中に入っていく。

京楽を咎める者はいない。

京楽と浮竹の関係を知っている13番隊の3席である二人は、京楽がくると退舎まで下がっていった。

「浮竹ぇ〜?」

「なんだ騒々しい」

京楽の永遠の想い人である浮竹が、何かの書類にハンコを押していた。

「いやぁ、浮竹。今日もかわいいねぇ」

「脳に水虫でもわいたか」

浮竹は、にまにました京楽のほうをむいた。

「飴、食べる?」

京楽は、先ほど涅マユリからもらった白い箱を懐から取り出すと、中身を浮竹の口元にもっていった。

「ん」

小粒のキャンディーだった。浮竹はなんの疑いももたずに、京楽の指ごとキャンディーを口に含んだ。

「ん?なんの味だこれは」

「抹茶すぺしゃるチョコレートうるとらいちご味」

「なんか分からんが、うまいな。甘い」

甘いものに目がない浮竹は、キャンディーを舌で転がしていた。

「何しているんだお前は」

京楽は、勝手に押入れから布団を取り出すと、それを畳の上に広げた。

「ここで寝ていくのか?」

別にそれでも構わないと、浮竹は思った。京楽が、雨乾堂にまできて眠りにくることも珍しくない。特に、浮竹が臥せっているときは、お見舞いにきてそのまま泊まっていくことも多い。
浮竹が元気な時も泊まっていくが。

よく副官の伊勢七緒に怒られているが、雨乾堂に京楽が2週間以上来ない時は、浮竹が8番隊の退舎に顔をだした。

「寝てもいいが、俺はまだ仕事が残っているから・・・・・・あれ?」

ぐらりと、浮竹の視界が揺れた。

「なんか・・・・体が熱い?」

「ふふーん」

布団に肘をついて寝転がっていた京楽は、浮竹の様子にご満悦の様子だった。

「京楽・・・・・お前、まさか飴の中に何か盛ったか?」

「正解」

今までも、酒の中に媚薬を入れられたりした経験があるので、浮竹は京楽のところまでなんとか移動すると、彼の首元の襟を締めあげた。

「このばか京楽!」

細い体躯では、京楽の首を締めあげることはできない。正常時なら、投げ飛ばすことはできるが、今かそんな力もでない。

「媚薬いりの、その名もにゃんにゃんキャンディ。気に入ってくれた?」

「なんだ・・・そのふざけた名前は」

「だから、猫になるんだよ、君は」

「猫?」

「そう。耳と尻尾が生えてくるんだ」

「そんなばかなことが・・・・・ふあっ」

手首をつかまれて、押し倒され、深く口づけされる。にゃんにゃんキャンディーとやらを飲み込んでしまい、浮竹は京楽の大きな体の下で逃れようと必死になる。

「やめろ。まだ、仕事が・・・・」

「そんなの明日にすればいいよ」

「はっ・・・」

呼吸が荒くなる。媚薬がきいてきて、熱をもった体をもてあました浮竹は、京楽を翡翠の瞳で睨みつけた。

「なんか・・・へん」

ぼふん。

音をたてて、浮竹の頭には猫耳が、臀部には尻尾が生えていた。

「いやぁ、いやぁ。かわいいねぇ、浮竹。とっても似合っているよ」

京楽は、拍手した。

浮竹は、死にたくなった。

この男は。また、ろくでもないことをしてくれた。溜息さえでそうだ。

でも、熱をもってしまった体はいうことをちゃんときいてくれない。

「猫耳だ〜。ふわっふわっ」

「んっ」

猫耳を手でゆるゆると愛撫されて、浮竹は翡翠の瞳を潤ませた。

「こっちはどうかな?」

「やっ」

ゆらりと揺れた猫の尻尾に、京楽の手が伸びる。全体を撫でて、そしてくるくると器用に指に巻き付けていく。

「京楽っ」

柔らかく全身の輪郭を、手で撫でていく京楽の手のひらに、熱をもってしまった浮竹の体はあっけなく墜ちていく。

「耳、かわいいね?」

もふもふ。

京楽の唇が、浮竹の猫耳を食んだ。京楽の手は、慣れた手つきで浮竹の隊長羽織も黒装束もぬがしていく。

「京楽・・・・・・」

「ん?いい子だね、どうしてほしいの?いってごらん」

「このばか京楽っ・・・」

そんな恥ずかしいこと言えるか。

口にしない浮竹を焦らすように、薄い胸をなでて、先端をつまみあげた。

「あっ」

その感覚に、熱に苛まれた体は正直に反応した。

「京楽・・・・・」

「尻尾が揺れてるよ?気持ちいいのかな?」

浮竹の尻尾は、ゆらゆらと揺れて、京楽の手首にまきついた。

「ちゃんと気持ちよくしてあげるからね。責任をもって」

耳に息をふきかけられて、耳朶をかまれた。浮竹の白い髪をかきあげて、首筋にキスをする。

せめてもの仕返しだとばかりに、浮竹は全身を愛撫する京楽の右手を噛んだ。

「いててて。牙も生えてるなぁ」

口の中に乱暴に指をつっこまれて、そのまま指で咥内をぐちゃぐちゃにされる。唇が重なった。

かちりと、浮竹の牙が京楽の歯とあたって硬質な音をたてる。

「う・・・ん・・・」

息を継ぐことを忘れそうな、乱暴でしつこい口づけに、浮竹の猫耳がへたりと折れた。

「耳、感じるかい?」

猫耳をもふもふされて、そこが性感帯になっていたせいで、浮竹は布団の上で京楽の大きな体に尻尾をからみつけた。

「かわいいね、十四郎は。猫になった部分も、感じるんだね?」

「あっ、春水!」

すでに熱をもっていた花茎をなであげられて、浮竹は悲鳴に似た声をあげた。

いつの間にか閉じていた翡翠の瞳を開くと、京楽と視線が絡み合った。熱にうなされている浮竹の花茎に自分の雄をすりつけて、京楽は息を乱した。

「その表情、最高だよ。エロいねぇ」

「あっ」

花茎をしごかれ、あっけなく性を放つ浮竹。白濁した液体を京楽は手のひらで受けとめて、用意していた潤滑油をまぜて、浮竹の蕾に塗り込んでいく。

「っ」

京楽は、いつも潤滑油を使ってくれる。少しでも浮竹の負担を軽くするためだ。女ではない浮竹の秘部は、濡れることがない。

「んっ」

指が侵入してくる感覚に、生理的な涙が零れた。

はじめは入口をほぐすように動き、次に内部でばらばらに動く。2本だった指が、3本まで増やされると、浮竹の猫耳がぴんととがった。

「猫耳が反応してる。かわいいね」

いい年をした男を捕まえて、かわいいを連呼する京楽の気が知れないと、浮竹は思った。

病のせいで、軽くなった体重と細い体躯の浮竹は、その秀麗な容姿もあって、かっこいいというより綺麗だと言われることが多い。

でも、かわいいというのは京楽くらいのものだろう。

「ああっ」

指が、前立腺を刺激した。熱をもった体は、その喜びに尻尾をゆらりとゆらした。

「ここがいいんだね?」

「いやあっ」

何度もしつこく指でぐりぐりと刺激されて、浮竹は涙をこぼした。京楽の行為に慣らされてしまった体は、後ろだけでオーガズムで達することを覚えてしまった。

酷く淫乱になってしまった。

真っ白の髪のように、純白だった浮竹は、京楽のせいでにごり、墜ちていく。

「やあっ」

ぐちゅりと、音をたてて、去って行った指の代わりに京楽の雄々しい雄が侵入してくる。内部を侵す熱は、とてつもない重量だ。

体の大きな京楽の雄は、体に見合っただけあって大きい。それで犯される浮竹の体には、大きな負担がかかる。

だから、絶対潤滑油は欠かせなかった。

「あうっ」

内部をすりあげていく熱に、浮竹の白い髪が乱れる。布団の上のシーツを握りしめて、熱にうなされた体に与えられる刺激に敏感に反応する猫耳が、かわいいと京楽は喉をならした。

「にゃあって、いってみて?」

「いやだっ・・・・・・ああっ!」

前立腺を突き上げられて、浮竹は京楽の体にしがみつくと、肩に牙をたてる。

「かわいいねぇ、必死な抵抗して。でも無駄だよ」

ぐいっと、足首を持ち上げられる。人工灯に、繋がっている個所が晒される。ぐちゃぐちゃに犯される。水音をたてては、出入りする雄は、少しも萎える様子はなく、浮竹は追い上げられていく。

「にゃあっていってくれなきゃ、いかせてあげない」

「春水っ」

前を京楽の手で戒められた。

イきたいのに、イけない。内部を犯されることで、性を放たないまま頭が真っ白になり、オーガズムで達してしまった。

「ほら、十四郎」

「にゃあっ!」

ゆらりと、尻尾が揺れた。

猫の声を出すと、前を戒めていた手が離れ、浮竹の花茎はすぐ限界を迎えて性を放った。

「やっ、イってるのに、イってるのに、犯さないでぇっ」

精液を吐き出す浮竹の花茎をしごきながら、京楽は浮竹の前立腺をこすりあげ、突き上げていく。

「も、やぁっ!」

また性を放った。普段は淡泊な浮竹は、媚薬をもられたせいでいつもより乱れて性を放つ回数も多い。

オーガズムでも、もう何度も達してしまっていた。

「あ、あ、あ、春水、春水、にゃああ・・・・!」

自分でももう何をいっているのか浮竹は理解していなかった。

媚薬に侵された体は、京楽が与える刺激に敏感に反応した。

ゆらゆら揺れる尻尾と、ぴくぴくと痙攣する猫耳。

体位を変えられ、後ろから犯され始めた。本当なら、何度ももう浮竹の内部に熱を放っているところだが、今日は特別に京楽も薬を使っていた。

長く、犯せるように。

「にゃあって、いったのにぃぃ」

まだ解放されなくて、浮竹は布団のシーツを、猫化したことで長くなってしまった爪でひっかいた。

すでに京楽の背中はひっかき傷だらけだ。

「あ、あ、あ、も、や・・・・・」

ずちゅずちゅ。ぐちゃり。

結合部は激しい交わりに、泡立ち、ピストン運動を繰り返す京楽も限界が近づいてきていた。

「愛してるよ、十四郎・・・・っ!」

じんわりと、熱い熱が、浮竹の体の最奥に放たれた。ドクドクと、飲み込んでいく内部はとろけそうに熱い。

「も、終わりにしてくれっ・・・・変になる・・・愛してるから・・・・にゃあああ」

一度性を放っただけで、京楽は満足しなかった。

「にゃあ!」

思考まで、もうほとんど猫化が進んでいる浮竹。、

媚薬の量は、少なかったが、浮竹には十分すぎる量だった。

浮竹の最奥を突き上げながら、体を揺らすと、浮竹の翡翠の瞳が涙を零した。

「は・・・・・・・・も、無理・・・・・・・・・」

二度目の性を、浮竹にぶつける頃には、浮竹はすでに意識を手放し、真っ白な闇に墜ちていた。

「あー最高。愛してるよ、十四郎」

満足して、結合部から雄をぬきとると、とぷんと白濁した液体が布団のシーツに零れ落ちた。



にゃんにゃんプレイ。楽しませてもらいました。

涅マユリに感謝。

手で拝んで、慣れた手つきで意識を手放した浮竹の体を蒸したタオルで綺麗にふき、中に放った性をかきだす。

黒装束と、隊長羽織は洗わないといけない。

体液がこびりついている。

まぁ、変えはあるのでよしとしよう。

浮竹を味わった京楽は、猫耳と尻尾が消えるまでそれらをいじっていた。

薬の効果は5時間ほど。

長く浮竹を犯していたので、3時間はにゃんにゃんキャンディで交わっていたことになる。

「最近短かったからなぁ。久しぶりだったし、浮竹が起きたら謝らなきゃ」


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「最悪だ。起きたら体中が痛いし、腰は重いし、何より・・・・内容をあんまり覚えていないが、最悪だった」

「またまたぁ。浮竹も、にゃんにゃん鳴いて、かわいかったよ?」

後ろから抱きしめられて、ぶすっとむくれた白い美貌の浮竹は、うなじに口づけしてくる京楽に体重を委ねた。

「あほ京楽」

「ははははは。でも、きもちよかっただろ?」

「知るか!」

顔を真っ赤にして、やはり少しは記憶が残っているらしい浮竹。

はじめて媚薬を酒に盛られた時は記憶がふっとんでいたが、今回は量としては少なったので記憶が残ったのだろう。


「愛してるよ、浮竹」

「ん」

さも当たり前だとばかりに、京楽に甘える浮竹。

院生時代から肉体関係をもって、数百年。マンネリ化するのを防ぐために、京楽は手練手管を使って浮竹を翻弄する。

「愛しているって、いって?」

「いやだ」

「まだ、犯され足りないのかな、君は」

うなじをなめられて、浮竹は身震いした。

「愛している京楽、もうけっこうだ」

しばらくは、えっちは禁止だろうな。京楽は思った。

院生時代は、それこそ若く盛っていたが、大人になり、護廷13隊の隊長になり、数百年。
齢を重ねたせいもあり、体を求めあうのは少なくなったが、内容は濃くなっているかもしれない。

浮竹の意識を飛ばすまで、求めることが多くなった。もともと淡泊な浮竹は、病のこともあり、肉体関係を求める京楽に、仕方なしに応じていることがある。

京楽の浮竹への執念は、狂気じみたところがある。

下手をすれば、浮竹を壊してしまいそうだ。

分かっていながら、浮竹を求めてしまう。

「本当に、愛しているんだよ・・・・・・」

浮竹の髪に顔を埋めて、京楽は病で細くなったその肢体を抱きしめて、お互いに体温を共有しあった。

浮竹は、行為の後に微熱を出すことが多い。本当は、交わるべきではないのだと、分かっていても、自分だけのものにして、閉じ込めておきたい。

あの翡翠の瞳に、僕だけを映すようにしたい。

いっそ、二人きりで逃げ出そうか。

でも、どこへ?

「愛してる」

「ん」

浮竹は、小さく相槌をして、伸ばされた京楽の大きな手に頬を摺り寄せる。

まるで、子猫だね。

言葉を、京楽は飲み込んだ。

「とにかく、今回だけだからな。今度媚薬やら変な薬とか使ったら、半年はエッチしないからな」

「えー。そりゃないよ。せめて、半月にしてよ」

「半年だ。1年でもいい。俺は別に、お前と違って交わらなくても生きていけるからな」

純白で純粋な浮竹を、どす黒く汚して墜としていくのは京楽にとって愉悦に近かった。

黒く汚しても汚しても、純白を失わない浮竹が好きだった。肉体関係なしでやっていくことはできるだろうが、できれば浮竹を自分のものとして染めていきたい。

真っ白な浮竹。

何も知らなかった。

自慰さえ、知らなかったに近い。

全部、京楽が教えた。男なのに、男に抱かれて喜ぶことも教えた。鳴かせることを覚えさせた。

おっと。

いけないいけない。

謝っておかねば。

「ごめんねぇ、浮竹」

「もう、別にいい」

京楽の膝の上に座って、浮竹は怒ってはいないようだった。

にゃんにゃんキャンディはまだあるが、もう使えないだろうな。一度使って満足したので、まぁそれでいいのかもしれない。

浮竹は、薬とか道具とかを嫌がるから。

大切にしようとすればするほどに、傷つけてしまっている気がする。

「今度、温泉にいこうか。うまいもの、食いにいこう」

「ん」

浮竹は、短く答えて、京楽に抱き着いた。

「どうしたの」

「なんでも、ない・・・・・・・」

浮竹の体温が熱い。微熱より高い体温になっている浮竹を抱きあげて、京楽は新しくだした布団の上に浮竹を寝かせた。

「まだ、朝早いから。無理させてしまったね。熱の下がる薬を飲んで、寝なさい」

「京楽、お前はいくな」

「薬をとりにいくだけだよ」

「目の届くところにいろ」

「無茶いいなさんな。ちゃんと側に戻って、目覚めるまで一緒にいるから」

「本当に?約束できるか?」

「ああ、本当だとも」

甘えてくる浮竹の、白い髪を手ですいてから、京楽は浮竹の少し熱を持つ額に口づけた。

「いつまでも、そばにいるよ、浮竹」

「信じてやる。約束だ」

恋人になって数百年。

時をいくら刻んでも、お互いの想いは変わらない。

きっと、終焉を迎える時まで。