停電







がらがらがっしゃーん。

凄い音を立てて、近くに雷が落ちた。雨つぶが大地を叩く音がする。

「停電だー!エアコンと扇風機が!」

一護の部屋で、アイスをかじりっていたルキアは、停電で視界が急に暗くなったのに驚いた。現世ならではの夏の快適グッズが雷で止まってしまって、ルキアは叫んだ。

「一護、なんとかせんか!暑くなるだろう、たわけが!」

「んなこと俺に言われてもしらねーよ。時間たてばすぐ復旧するだろ」

一護は、階下におりて、懐中電灯をもってきた。

「一人にするな!怖いではないか!」

がらがらがっしゃーん。

また雷が落ちた。

その細い体で一護に抱き着いて、ルキアぎゅっと目を閉じていた。

「もしかして、雷が怖いのか?」

「そそそそそ、そんなたわけたことがあるはずがなかろう!」

意外なルキアの弱点に、一護はかわいいとこあるじゃねぇかと、心の中で呟いた。

「それにしても、電気復旧しねぇな」

もう、かれこれ15分はたっただろうか。

室内の温度が、じわりと上がってきた。

「あちぃ」

「熱いぞ、たわけ・・・・・・」

懐中電灯で、時計を照らすと、午後9時を回っていた。

寝るには、まだ早すぎる。

でもまぁいいかと、ルキアを抱き上げて、ベッドの上で横になった。

「なんなのだ、一護」

「いや、暇だしさ。電気復旧するまで、こうしてようぜ」

暗闇が、全部を隠してくれる。

別に、いちゃいちゃしてるわけではないが。ルキアと一緒に、ベッドに体を横たえながら、一護はルキアの少し高い体温を感じていた。

「今日はあちぃからなぁ。早く、電気復旧すればいいんだけどな」

「早く復旧させろ、このたわけが!」

「無理いうなよ」

「たわけたわけたわけ!ひゃっ、どこを触っておる!」

ルキアの背中にあたった手を、ルキアがつまみあげた。

日番谷と同じ、氷の斬魄刀をもつルキアは、暑さに弱い。

「いててて、わざとじゃねぇから!」

「いいや、わざとだ!そうに決まっておろう」

「触るなら、もっと胸とか尻とか触るぜ」

「このエロ魔人が・・・・・!」

意思をもった手で、ルキアの頬に手をあてると、ルキアは一護の手に手を重ねた。

触れるだけのキスをすると、ルキアは一護の腕の中で体を震わせた。

「あちぃな」

「暑い」

くっついていると、余計に暑くなって、二人は離れた。

ほどなくして、電気が復旧する。

エアコンをかけ直して、扇風機の電源を入れると、ルキアは嬉しそうに紫の瞳を瞬かせた。

「一護、アイスもってこい」

「自分でとりにいけよ」

「キスしただろう!代金を払うかわりに、もってこい!」

「キスくらいで金とる気かよ」

「四大貴族の一人だぞ、私は!」

そのわりには、身分でどうのこうのいうことは少ない。

「へいへい、全く、我儘な生き物だな」

本当なら、姫と呼ばれる身分なのだ、ルキアは。

一護は、文句を零しながらもアイスをとりにいく。

「雷は、嫌いだ・・・・・・」

昔、流魂街にいた頃、雷に打たれかかって、死ぬような思いをしたことがある。

その時の恐怖を思い出して、ルキアは戻ってきた一護に抱き着いた。

「おい、アイス溶けるぞ?どうしたんだよ、ルキア・・・・・」

「うるさい。しばらく、動くな」

溶け始めたアイスを、一護は食べた。

「ああっ、私のアイス!」

「食べないお前が悪い」

「くっ・・・」

がらがらぴっしゃーん。

「ひゃあっ!」

また雷がなって、ルキアは飛び上がった。それから一護にまた抱き着いた。

「雷そんなに怖いのか?」

「そそそそそそ、そんなわけがなかろう!」

そういうルキアは半分涙目になっていた。

強く抱きしめると、ルキアは一護を見あげた。

「一護?」

「今は、俺がついてるだろ。雷なんかで、おびえるな」

「たわけが・・・・・・・・」

ルキアの白い頬に、キスして、一護はルキアを抱きしめる腕に力をこめる。

ルキアは、紫の瞳でを閉じた。

自然と、唇と唇が、重なり合う。

「んっ・・・・・」

甘いルキアの声が、耳に心地よかった。

「たわけめ・・・・・」

頬を朱くして、ルキアは一護から離れた。それから、いつものように押入れに入る。

妹たちの部屋を寝室にと宛がわれているが、ルキアは一護の部屋の押し入れがすきだった。

狭くて小汚いけど。


「ねぇさーーん!」

抱き着いてくるコンを、一護のほうに投げ捨てて、ルキアは押入れの戸をしめた。

真っ赤に火照った顔を、隠すように。