夕焼け小焼け







季節はもう、夏を過ぎ去り秋。
夏休みなんてとっくの昔に終わった。
夏休みは、ルキアを取り戻すためにソウル・ソサエティにいって潰れてしまったけれど、後悔はない。また、笑顔をみることができる。不遜な態度なツンデレのルキアと話すことができて、一緒にいれる。
現世に再びやってきた彼女。
それは、平和になったからではない。
藍染の手から、全てを守り、そしていずれは倒すための序章にすぎない。

「らららら〜〜〜」
音が外れまくった最近よく流れているCMのソングを歌いながら、ルキアは両手を広げて夕暮れに染まりながら軽やかに走る。
「おい、待てよ!!」
ルキアの鞄を持たされた一護は追いかけるのに必死だ。
「らららら〜〜〜」
「待てってば!!」
「一護、遅いぞ!たわけもの!!」
「ぬあああああああ、壮絶にはりたおしてぇ!!」
「できるものならやってみろ!」
「できるかよ!」

二人は帰宅する道を走っていく。
夕日は長い。でも、少し短くなった気がする。夕暮れが少し早まった気がする。
夏も終わりだ。季節は冬へ冬へと歩いていく。ゆっくりと。

「あほ!」
一護はルキアのスカートをべろんと捲った。
せめてもの仕返し。
ルキアは赤くなることもなく、堂々としていた。
「なんだ、パンツが見たいのか。見たいなら勝手に見ていろ」
色気の欠片もない。
「お前な・・・・」

プルルルルル。
ルキアの携帯が鳴って、ルキアはスカートのポケットから死神専用の携帯を取り出す。
「はい、ルキアです」
「げ、まさか・・・・」
「兄様、今どこにいらっしゃるのですか!え、すぐ近く?」
ルキアはきょろきょろと周りを見回すが、白哉の姿はない。
霊圧も消しているのだろう、感じ取れない。
「兄様?」
「白哉は・・・ほんとに隊長なのか。学校にまできたり・・・昨日、保健室いくと保健室の先生やってたぞ。恐ろしいな、シスコンは」
「ほう。兄は、ルキアの下着を見てただですめると、そう思っているのか」
「ああ、あんなのいつでもみて・・・・・」
「ほう。兄は、ルキアのあのような姿を・・・・・」
「もぎゃああああああああ!!!!」
一護は走りだす。
猛烈ダッシュで。
「兄様!!」
ルキアを置いて、白哉は瞬走で一護を追いかける。

このシスコン、妹命の白哉はこうして現世に用もないのに現れる。
ルキア会いたさと、そして隣にいつも蔓延っているカビのような一護からルキアを守るために。

「バンカイするぞ、兄!待たぬか!」
「斬魄刀抜いて、追いかけられて止まれるか!!」

夕日は、だんだん短くなってくる。
季節は進む。

「夕焼け小焼け〜♪」
ルキアはのんびりと夕焼け色に染まりながら、また音痴なまま歌を歌い出す。
「夕焼け小焼け〜〜」
「夕焼け小焼け〜〜〜〜〜ぇえええええ!!!」
白哉まで歌うので、一護まで歌ってしまった。間延びして最後は悲鳴になっている。

夕暮れの色は、こんなにも美しい。
ソウル・ソサエティも現世も、それは変わらない。

「また夕焼けを見れて、私は嬉しい」
ルキアの声は、沈んでいく太陽と一緒に沈んでいった。