涅マユリの悪戯IF







「だから、実験体にふさわしいといっているのだヨ」

「なっ、誰が実験体などになるか」

「一度死しておきながら新たに生を受ける・・・・まるで転生ではないかネ!非常に興味をそそる」

「だからって、はい実験体になりますというと思っているのか!」

浮竹は、涅マユリと言い争いをしていた。

12番隊隊舎からでたがらないマユリは、珍しく一番隊の執務室にきていた。なんでも、新しい受信機を開発したので、まずはその特許をと願いでてきたのだ。

そこで、京楽総隊長の傍にいた浮竹を改めてみて、興味をそそられたらしい。

「あー、ここは神聖なる総隊長執務室だよ。いい争いをしたいなら、外でやっておいで」

京楽は、総隊長として仕事に追われていた。

外でやれと言われているのに、マユリも浮竹も止まらない。

「浮竹隊長の墓には確かに遺骨がある。なのに、君は生きている。並行世界からやってきたのか、果たして神様とやらが奇跡をを起こしたのか・・・・・・」

「それは、俺にもよく分からない。気がづいたら、俺が死んでから・・・十数年が経過している世界で、目が覚めた。生き返ったのが、並行世界からやってきたのか、果ては神様の悪戯かそれは、俺にも分からない」

きっと、答えは誰にも分からない。

でも、浮竹は今を生きている。

総隊長となった京楽の傍で、ただ静かに。


「なら、髪の毛をくれるかね?クローンをつくるから、それで我慢してあげようじゃないか」

「いやだね!髪の毛一本でも渡すものか」

「そうだよ。涅隊長、浮竹は僕のものだ。手を出すことは僕が、いや護廷13隊が許さない」

「権力をそうやってふりかざすのは、どうしたものかとおもうがネ・・・・・・」

マユリは、興味が失せたとばかりに執務室を出て行った。

「浮竹、こっちの書類を任せられるかい?」

「ああ・・・・・」

仕事をする時も一緒な二人は、浮竹が京楽から簡単な仕事を任されることも多い。
副官である伊勢七緒も、ちゃんとできる仕事は自分の部屋にもっていってしてくれる。

昔からそうだ。

七緒は、二人の仲を裂こうとせず、8番隊の執務室を訪れる浮竹がいると、自然と姿を消していた。昔は、京楽が浮竹の執務室と隊首室を兼ねた雨乾堂に訪れていたのだが、その雨乾堂は、今は浮竹の墓地として取り壊されてしまっている。

正直な話、浮竹に居場所はなかった。

雨乾堂を失い、普通の隊士と同じ部屋で寝ようとする浮竹を、京楽が放っておくはずがない。
一番隊の隊首室は、いまや浮竹の部屋であるとも同じだった。

もっとも、京楽の財力で屋敷を与えられてはいるのだが、その場所を浮竹が使うことは稀だった。


京楽は、昼食を食べに出て行っしまった。浮竹は任された書類を片付けるのが楽しくて、夢中になっていたので一緒に昼食を食べることにはならなかった。

「そうだ。君にこれをあげるヨ」

ひょいっと、マユリが、仕事をしている浮竹の元にやってきて、何か薬を渡していった。

「な、帰ったんじゃなかったのか」

「何、ただの気まぐれさ。使うも使わないも、君次第だヨ」



浮竹は、目立つ格好のマユリの後ろ姿が見えなくなるのを確認してから、薬を見てみる。

(ムキムキになれる薬)

「・・・・・・・」

昔、散々な思いをしたその薬を捨てようとしてふと、薬のそこに入っている紙をみる。今度の副作用はなんだろう?

昔は、子供になることだった。

今度は・・・・・・15歳くらい、若返ると書いてあった。

「15歳くらいというと・・・・・院生時代か」

それもいいなと思い、どうせムキムキになるのは数秒のことだろうからと、服用してみる。

ムキムキになった。

筋肉むっきむきになったが、やはり1分として効果は続かなかった。

ポン。

音をたて姿が変わる。

全身の血が沸騰していくのがわかる。全てが収まると、隊長時代の浮竹はそこにいなかった。

「髪が短い!」

しかも、衣服まで院生時代のものになっていた。院生1年目ぐらいの時の、浮竹の姿があった。

院生の服では目立つだろうからと、いつもの死覇装に違う色の羽織を着て、浮竹は外に出かけた。

誰も、浮竹がその人であると気づかない。

それが嬉しくて、いろいろんな店に入ったりして、結局夕方まで遊び歩いてしまった。

「京楽、怒ってるかな?」

勝手に執務室を抜け出して、仕事を放り出して遊び歩いたりしたのだから、きっと怒っている。そう決めつけて、浮竹は一番隊の執務室まで戻った。

京楽の姿を見つける。

「京楽、すまない!」

「え、誰?」

「え?」

「え?・・・・・浮竹ェ?」

院生時代の姿とはいえ、かなり違うかんじの衣服になっていたので、京楽にも一瞬浮竹が誰なのか分からなかった。

「浮竹?本当に浮竹なのかい?」

「俺だが・・・・・・その、涅隊長の薬で若返ったんだが・・・・・変か?」

もはや、マユリの作る薬は若返りの薬と同等とみなされていた。

「かわいい」

「え?」

抱き上げられて、何かを言う前に隊首室まで連れていかれて、どさりとベッドに降ろされる。

「え?」

伸し掛かってくる体重に、浮竹は戸惑うばかり。

「君、わざとかい?僕が、最近あまり抱いてこないから、わざとそうやって誘っているのかい?そう思っていいんだね?」

ぽいぽいと衣服を脱いでいく京楽。

「やぁっ」

手首を帯で戒められて、浮竹は後悔する。薬を飲んだことを。

「やぁっ、そんなつもりじゃない、やだ、京楽、やだっ」

ちゅっと音をたててキスされて、浮竹は体を強張らせた。

あまりにも早急に、膝を膝で割られ、内部をえぐる指に、涙を零す。

「やぁっ」

中途半端に解され、京楽の雄が入ってきた。

「痛い!」

いつものように、潤滑油を使っていなかったので、浮竹のそこは切れてしまい、血をにじませていた。

力でねじ伏せられる。

「痛い、痛い、京楽、こんなのやだっ」

京楽を見る。

正気の目をしていなかった。

「京楽?」

ふわりと、地獄蝶が飛んでくる。

「君の愛する男にも、薬を飲ませてあげておいたから、好きなだけいちゃつくといいヨ」

「!」

涅マユリの仕業だった。

「正気に戻れ、京楽」

「かわいいね、浮竹は」

「あ、あ、あ、やだ、痛いっ」

身体が軋む。

ろくに解されもしなかった場所は、血を潤滑油がわりにして、挿入が繰り返される。

「やっ」

内部を侵す熱は熱い。

この前、京楽と交わったのは何週間前だろう?

院生時代のように体を重ねることが少なくなったのは、いつからだろう。

「痛い、やだっ、京楽っ!」

涙が流れる。

痛いだけで、気持ちよくない。

ただ、力任せに犯されている。

そんなのがいやで、浮竹は悲鳴をあげた。

「京楽、戻ってこい!!」

手首を戒められているが、足はなんとか動かせる。京楽の鳩尾を蹴ると、彼はうっとなって何かを吐き出した。

「京楽・・・・・?」

「あれ?浮竹・・・・?僕は・・・・・・僕は何を!」

ぼろぼろと涙を流す浮竹を解放して、京楽ははっとなる。

口から吐き出した何かは、煙となって消えてしまった。

「僕は・・・・涅マユリに何かを飲まされて・・・、そこから覚えていない・・・・」

「京楽っ」

京楽は、浮竹の姿に、ショックを受けた。

「これ全部・・・・僕がしたことなのかい?」

戒められて血の滲んだ手首。暴力的に犯されて、血を流す場所。力任せに引きちぎられてぼろぼろになった服。

泣き続ける浮竹にキスを何度もして、安心させる。

「ごめんね、浮竹」

浮竹は、翡翠色の瞳を開ける。

「元に戻ったのか、京楽?」

「ごめんね。せっかく若返ってくれたのに、こんな真似して・・・・・・・」

「正気に戻ったのなら、それでいい。あんな薬を飲んだ俺にも責任はある」

院生姿の浮竹は、いつもの優しい京楽をみて、安堵する。

「手、痛い・・・・・」

手首を戒める帯を外された。血の滲んだ箇所に、京楽はキスをする。

「その・・・・・・君を、ちゃんと抱いてもいいかい?」

零した涙を、京楽の舌がなめとっていく。

「ちゃんと気持ちよくしてくれるなら、抱いてもいい」

「ありがとう、浮竹」


京楽は、何度もキスの雨を降らせた。

前輪の輪郭をたどるように口づける。


潤滑油を使い、傷ついた内部を労わりながら、挿入していく。縮こまっていた浮竹の舌を誘いだして絡めあう。

わずかに反応していた花茎に手をかけて、いじりなが前立腺ばかりを突き上げていると、浮竹が啼いた。

「あっ・・・・・・・」

少しずつ、動きは大胆に、リズミカルになっていく。ぐちゃぐちゃと音をたてて、浮竹の腰を掴んで挿入し、前立腺ばかりを突き上げる。

「やああ、変になるっ・・・・・・・・」

いつもの交わりは、確かに浮竹を気持ちよくさせてくれるが、今回は浮竹の気持ちいいところだけを責め続けられる。

「ああっ」

白い性を放って、浮竹は力尽きた。

同時に、京楽も浮竹の中で果てた。

「・・・・・・痛くない?」

そっと中からでていくと、血の混じった体液がどろりと零れ落ちた。

「もう、痛くない・・・・・・・」

浮竹の姿は、いつの間にか元に戻っていた。

長い白髪をすいて、頬に口づける。

「大好きだよ、十四郎」

「俺も好きだ、春水・・・・・・・・」

涅マユリからもらった薬は、結局一粒使用しただけで、後は処分した。

京楽も、涅マユリには気をつけると言ってくれた。



「んー」

襦袢を着ただけの危うい姿で、浮竹はベッドの上でごろごろしていた。体をふいて、後始末もしたのだが、京楽は浮竹を力ずくで犯してしまったことがかなりショックなのか、浮竹をいつも以上に優しく、繊細に扱ってくる。

「もっと、べたべたしていいぞ。そのほうが安心する」

「でもね、君を傷つけた」

「お前のせいじゃないだろう」

「それでも僕は僕を許せない」

「じゃあ、俺が許す。だから、もっと・・・・・・キスして?」

甘えてくる恋人に、かなわないとばかりに、口づける。

長い白髪を乱して、互いの体温を共有しあう。


平和な時が十数年も続いて。

浮竹を失った京楽は、淡泊になった。

でも、また浮竹を取り戻して、8番隊隊長だった時代の性欲は取り戻した。でも、可愛い恋人は。もっともっととねだってくる。


本当に、浮竹にはかなわいな。


チチチチチ

睦みあう二人を祝福するかのように、シロと名付けられた小鳥が窓から入ってきた。

「シロ、久しぶりだね」

京楽が手をさしだすとちょこんとその手にのる。

チチチチ

小さく鳴いて、また自由な空へと飛び立ってしまった。

「君に似て、自由な子だね」

「確かに俺は自由だが・・・・・でもな、京楽。俺は、もう院生時代からずっとお前という鎖でに繋がれているんだ」

ふわりと微笑まれて、京楽は言葉をなくすのだった。


花の神は、まどろんだままだった。

静かにまどろみながら、時をまつ--------------------------