「それ一護」

「ぶべっ!」

ルキアが投げた雪の塊が、一護の顔に当たった。

いつものような、学校の帰り道。

というか、今日は学校は休校だった。雪が積もったことで、都会の電車やバスなどの通行手段は麻痺して、教師や生徒が学校にこれないような状況になってしまったのだ。

歩いていける距離だったので、一護は学校にいったのだが、すぐに休校だと知らされて、むだ骨だったと、ルキアと一緒に帰宅

学校には数人の教師が校門のところにいて、やってきた生徒に休校だということを触れ回っていた。

中には喜ぶ生徒もいたが、交通機関が麻痺しているせいで、帰宅が昼になってしまう生徒もいた。

連絡網で回そうにも、すでに学校へくるために家を出た生徒ばかりで、連絡網で休校ということは回ってこないせいで、ちらちらと苦労しながら登校する生徒が見える。

こんなに雪が積もるなんて、久しぶりだ。

一護は、真っ白に覆われた道路を見続ける。

ルキアはマフラーをまいてコートまできて、すっかり防寒対策はばっちりのようで。元々氷系統の斬魄刀をもつルキアは寒さには強い。

ルキアはららら〜と適当な歌を歌って、地面にしゃがみこんだ。
そして、雪を手袋をはめた手で固めて、それを一護に投げた。

「もう一度だ!」

「ぶべっ!」

一護は、寒さのせいで動きが鈍っていて、顔で見事に受け止める。

「お前は〜〜〜!!」

一護が、しゃがみこんで雪をかき集めると、手袋をしていない指がかじかむのもかわまず、雪玉をつくるとそれをルキアに向けて投げた。

「くらえ!」

「あまい!」

もきゅ。

変な音がした。
ルキアがバックから出したコンを、盾にしたのだ。

「姉さん、酷いっす」

ポテリと雪の上に落ちるコン。コンはルキアのスカートの下に落ちた。

「ナイスアングル!」

「しね!しね!!!」

ルキアが靴でコンを踏みにじる。

「出る!綿出る!あああああ!!! (>'A`)>ア゙-ッッ!!」

「雪でもくってろ」

ルキアは、コンの口を無理矢理あけると、そこに雪玉をつっこんだ。

「つめたいいいいい」

そんなコンをかばんに詰め込みなおして、ルキアはまた雪玉をつくると、それを一護に投げる。

その雪玉を、一護は自分が投げた雪玉で相殺する。

「ふふふ、やるではないか一護」

「こんなことで褒められても嬉しくねぇ」

「それっ」

勢いをつけたルキアが、足元を滑らせる。

「あぶねぇ!」

とっさに一護がルキアの体と受け止めた。

「あいたた」

ルキアは一護の体から離れると、コートについた雪を払う。

その隙をついて、一護はニィと笑むと、右手にもったままの雪玉をルキアの背中に放り込んだ。

「わきゃああああああ!!冷たい!!!」

「仕返しだ」

「貴様、不意をつくなどとは卑怯な!」

「はいはい」

「はっくしょん」

ルキアが盛大にくしゃみをした。

「おい、風邪ひくなよ。帰るぞ」

ルキアが、背中にいれられた雪をなんとか自分で取り出す。マフラーが、はしゃぎまわったせいで雪まみれになって地面に落ちていた。

それを一護は拾うと、自分のマフラーを外した。

「ほらよ」

一護が、自分のマフラーを、ルキアの首に巻きつけていく。
そのほんのりとした温かさに、ルキアは一護の優しさを感じた。

ルキアは少し紅くなって地面を見た。白い雪に、足跡はいくつもついている。自分でつけた足跡だ。

「・・・・・すまぬ」

「かまわねーよ。いくぞ」

「う、うむ」

さしだされる一護の手。雪で冷えた冷たい指に、ルキアは暖かいはずの自分の指を絡めた。

冷たい一護の手が、少しでも暖かくなるように、ルキアは絡めあった指を外さない。

冷たい吐息にまじる、二人の息。

雪は冷たい。でも、嫌いではないと、二人は思う。

雪は溶けて消えてしまうけれど、二人の絆は溶けて消えたりはしない。

半歩遅れてルキアが歩きだす。一護の家に向かって、二人手をつないで。

「寒くないか?」

一護が、ルキアを見る。

「貴様こそ、寒くないか?」

ルキアが一護を見る。

二人は顔を見合わせてクスクスと笑った。

雪の積もった日も、悪くない。そう思う二人であった。