盆栽







「はっくしょん」

「なんじゃ、まだ猫アレルギーなのか、お主は?」

猫姿の夜一が、浮竹の肩にいた。
趣味の盆栽いじりをしていたら「じじい趣味じゃな」とからかわれた。

「はっくしょん!分かってるなら、早く猫から人間の姿になってくれないかい・・はっくしょん」

京楽は実は猫アレルギーだった。くしゃみとせきが出るくらいだが、これがけっこうつらくて、京楽は愛しい浮竹に近寄ることもできない。

「はっくしょん」

夜一は、浮竹の肩から降りると、人の姿をとった。

「服!服を用意してから変身しろ夜一!」

浮竹が、慌てて自分の隊長羽織をすっぽんぽんの夜一に着せる。

「うるさいのう。服はほれ、そこの雨乾堂の影に用意しておるわ」

「だったらそこで変身しろ!」

「うるさいのう」

「下から服を着ろ!」

「夜一、わざわざセクシーな姿を見せてくれるのはいいけど、君を想う一途な子がこっちに殺気むけてるんだけど・・・・・・・」

「砕蜂、やめぬか」

「はっ、すみません夜一様!」

雨乾堂の影で控えていた砕蜂は、夜一様LOVEすぎて、夜一が接触する相手に嫉妬をする。

「砕蜂、お主も変わらぬのう」

「何がですか、夜一様」

「わざわざわしの跡をついてくる癖じゃ」

「それは夜一様をお守りするのが私の役目・・・・・・!」

「そこがかたいのじゃ。もっと自由にせんか」

「しかし夜一様・・・・・・・・・・・・・」



浮竹と京楽は、二人の姿を見ながら縁側で、清音のいれてくれたお茶をすすっていた。

「どう思う、京楽。この盆栽を」

「・・・・・うーん、枝の切りすぎじゃないかい?ほとんど何もないじゃないの」

「じゃあ、こっちの盆栽は?」

「伸ばす過ぎじゃない?もうちょっと、枝に鋏いれたほうがいいよ」

誰も分かってくれない、浮竹の盆栽を育てるという趣味。京楽は、愛しい浮竹のために、適当ではあるが意見を交わす。

「盆栽はいい。心が癒される」

京楽には、理解できなかった。

京楽にとって、酒がそうであるように、浮竹にとってはそれが盆栽なのだろう。

京楽が、一度高い盆栽を浮竹に買い与えたことがあったのだが、すぐに枯らしてしまった。

浮竹の盆栽いじりはあくまで趣味の範囲の素人だ。盆栽を買うのではなく、自分で育てるのが面白いらしく、京楽も浮竹の盆栽いじりにはあまり口を出さない。

「今度の盆栽祭りには、この盆栽を出品しようと思っているんだ」

盆栽祭りってなに・・・・・京楽は思ったけれど、口にしない。

卯ノ花が華道に、山じいが書道に、それぞれ趣を感じているようなものなのだろうか。

「いいんじゃないの」

浮竹がきらきらしていた。

それを見ているだけで、京楽は満足だった。

「今度の盆栽祭りには、京楽も一緒にこい」

「うん、いいよ」

盆栽なんて全然興味ないし、分からないのだけれど、浮竹と一緒に時間を過ごせるならなんでもよかった。

「この盆栽は、仙太郎と名付けよう!」



はっくしょん。

13番隊隊舎で、仙太郎はくしゃみをした。

風邪かな?とか思いつつ。

まさか、自分の敬愛する浮竹隊長が、貧相な盆栽に自分の名をつけているとは露知らず。