海(イチルキ)







「わーいい天気!」

井上が、ギラギラと照る太陽を見上げる。

「朽木さん、黒崎君、茶虎君、石田君、早く早く!」

急かされて、少し走った。

真夏の猛暑のうだる暑さの中、海水浴にきていた。

織姫はというと、もう海に入ってしまった。

「井上さん、ちゃんと準備体操してから海に入らないと!」

石田は、茶虎がビーチパラソルを立てるのを手伝っていた。

「きもちいい!」

水しぶきをあげる井上。その豊満すぎる胸に、男子どもの視線がいってしまう。

ルキアは、それを見ても何も感じないのか、海の家にいってかき氷を自分の分だけ頼むと、ビーチパラソルの下でしゃりしゃりと食べていた。

「ルキア、お前は泳がねーのかよ」

「あいにくだが、私は金づちなのだ。泳げない」

「俺が、泳ぎ方教えてやるよ。せっかく海にきたのに、泳がないなんて勿体ないぜ」

「だから!たわけ、この手を離さぬか!」

水着の上からパーカーを羽織り、首元までチャックをあげていた。

「暑いだろ、こんな日差しの中。ぬいじまえ」

パーカーを奪われた。

「その・・・・・・・あまり、見るな」

細いルキアの体は、井上の健康的ではちきれんばかりの胸と対照的に、控えめな膨らみがあるだけで、それが恥ずかしくて隠していたのだ。

ビキニタイプの水着で、こんな水着着てくるんじゃなかったと、ルキアは後悔した。

「すっげー似合ってる」

「え?」

海の方をみると、石田と茶虎はもう泳ぎにいってしまった。

浜辺にいるのは、ルキアと一護だけだ。

「ルキア、けっこう大胆な水着きるんだな」

ビキニタイプだが、露出度が普通より少しあった。

「な、これは別に井上に負けじと着たわけではないのだぞ!」

「俺は、井上の水着姿よりお前の水着姿のほうがいい」

「えっ・・・・・・・・」

急に、体温が熱くなるのをかんじた。

一護の視線が気になって、ルキアは水着を隠そうとする。

「隠すなよ」

「こんな貧弱な体・・・・・・・井上の、巨乳を見てればいいだろう」

「確かに井上の胸がすげーが、何も感じない。お前の水着姿のほうが何倍も魅力的だ」

また、体温があがるのを感じた。

一護は、何を言っているのだろうが。井上の豊満な胸を包む水着より、細い体の貧弱な私の水着のほうがいいといいう。

「泳ごうぜ」

「あ、待たぬか!」

手をとられて、ルキアは走り出す一護のあとをついていく。

ざばぁっと、波がルキアを飲み込んだ。

泳げないというのは嘘だ。一護に水着姿を見られたくなくて、嘘をついていたのだ。

「ルキア大丈夫か?泳げねーんじゃないのか?」

浜辺なので、海の水は腰当たりまでしかなかった。

「たわけ。泳げるわ」

「でもさっき泳げないって・・・・・・」

「貴様に水着姿を見られるのがいやで、嘘をついていたのだ」

「だから、すげー似合ってるって。井上もそう思うだろう?」

「うん!朽木さんの水着姿、すごくいいよ。儚いかんじがして、守ってあげたくなる」

「ななななな。たわけ!」

ルキアは、逃げるように海の中へ入り、潜ってしまった。

「まてよ、ルキア!」

そのあとを一護がおって、一護も海の中に消えてしまう。

「あーあ。黒崎君を、悩殺しようと思ってたのにな・・・・・・」

織姫はため息をついた。この日のために、勝負下着ならぬ勝負水着できたのだが。

肝心の一護は、ルキアばかりを見ていた。

少し悔しいけど、朽木さんと黒崎君の仲を裂くなんてできないと、井上が海からあがった。


ルキアは、海の底にへともぐっていく。それを、一護がおう。

手をとられて、ルキアは紫紺の瞳を見開いた。

海の中で口づけされる。

たわけ!と叫びたがったが、海の中だ。呼吸が苦しくなってきて、海面に顔をだすと、一護も海面から顔をだした。

「このたわけ」

「海の中のルキアって、人魚姫みたいだな」

また、体温が上昇するのを感じた。

「知るか!」

また海に潜った。一護と、水面下で戯れあう。

ひとしきり泳いで、海からあがった。

石田と茶虎と井上は、海の家から大量の食糧を買い込んできて、それをルキアと一護に渡していく。

「たまには海もいいな」

一護の感想に、ルキアも頷く。


その後、ビーチバレーをしたり西瓜割りをしたり。

ひとしきり海を楽しんで、その年の夏は終わった。