ピンポーン。 「はい?」 夜になって、玄関から聞こえたチャイムの音に、ティエリアが対応に出た。 「うわあああああ」 ロックオンは、テーブルの下にさっと隠れた。 「いてえええええ!!」 「怪しいのにゃ!!」 フェンリルが、その頭をかじる。 いつものように血をたらーっと流しながら、ロックオンはテーブルの下で息を潜めた。 「どちら様でしょうか」 「えーっと、今回シェゼル・ディーマの討伐に同行することになりました、リエット・ルシエルドです。どうか、今晩泊めていただけないでしょうか・・・ホテルがどこも満室で」 その言葉に、ティエリアは扉をあけて対応にでる。 「うらあああああ!!ネイ、どこだあああああ!!」 部屋に入ってくるなり、そのハイプリーストは、怒鳴り声をあげる。 見かけはとても美しい清楚な女性だった。聖職者がまとう衣服を着ている。長い銀色の髪に、白い肌、それに紫の瞳。 「えっと・・・・ホワイティーネイ?」 その外見と、彼女から血の匂いを感じ取って、ティエリアはリエット・ルシエルドがヴァンパイアの上位亜種ホワイティーネイであることに気づいた。 今は翼が見えないが、きっとその翼は真っ白なんだろう。 帝国にいるエターナルヴァンパイアの翼も白いのが特徴だが、ホワイティーネイの翼は天使のような翼。普通のエターナルヴァンパイアは皮膜翼、蝙蝠のような翼をもつ。 「ふっふっふっふ、見つけたぞネイ。よくも、よくも俺から・・・・三億リラも借金したまま、とんずらこいてくれたな!三億リラ返せ!!今すぐ返せ!首そろえて返せ!!」 テーブルの下のロックオンを引きずり出して、首を締め上げる。 「ロックオン・・・・三億リラも借金してるんですか!?」 三億リラ・・・・つまりは三億円。 ヴァンパイアハンターを続けているティエリアであるが、今もってそんな大金を拝んだことはない。一回のヴァンパイア退治の報酬は高くて三千万リラ。 口座に貯金してあるが、特殊な洗礼を受けた銀の武器を購入するのには、お金がかかる。 報酬の大半は、ヴァンパイアハンターとしての武器の購入と、維持に消えていく。後は、生活費となる。 何気に、ロックオンは働いてない。ティエリアのヴァンパイアハンター稼業のパートナーをしているが。厳密は働いていない。NEETというやつだ。 ティエリアの脛を齧って生きているのだ、ロックオンは。 「うらあああああ!!返せ!!返せえええええ!!」 「うわあああああ!助けてくれ、ティエリア!!」 「あなたは・・・・このバカー!!」 ティエリアは、ロックオンをひっぱたいた。 三億リラなんて、返せるはずもない。 なんとか貯蓄して、今でやっと四千万リラがたまったところだ。そのお金は、いつか銀の武器の中でも一番高い、ホーリーダガーの複数の購入にあてようとしている。 「借金だなんて!返せないじゃないですか、三億だなんて!」 往復ビンタをするティエリア。 「すみません。月賦でもいいでしょうか?とても、今すぐには無理で・・・・・」 ティエリアが、すまなさそうに頭を下げる。 「あー。いいよ。俺、君から返してもらっても仕方ない。借りたのはこのネイだ。こいつから返してもらわないと」 「でも!ロックオンは僕のパートナーで!職は・・・実は無職なんです!!」 「おい、ネイ。俺が貸した三億リラどうしたんだ?」 「あ・・・・ええと、この家購入する資金と・・・あと、株で消えちゃった」 てへっと、舌を出すロックオン。 「ばかあああああ!!」 ティエリアは泣いて、ロックオンを投げ飛ばした。 「借金まみれのゴミなのにゃ!」 フェンリルが、ロックオンの足に噛み付く。 「仕方ねーな。あと百年待ってやるよ。でも、俺の口座から追加で二億リラ引き出してたよなぁ?」 リエットはゆらりと、ロックオンにつめよると。 「魔よ退け!マグヌールエクソシズム!!」 「もぎゃあああああああああああ!!」 ヴァンパイアにもきく、対魔の魔法を唱える。床に銀色の円陣が描かれ、それはヴァンパイアの身をも焦がす聖なる呪文の一つとなる。 神を信仰することで生まれる、精霊を召還、使役することなく使える魔法。 流石、ハイプリースト、プリーストの上位の職だけある。 ロックオンは、でも流石ヴァンパイアマスター。ネイだけはある。 ブスブスと焦げただけだった。 NEXT |