血と聖水\「リエット・ルシエルド」







「本当にすみません。なんと申し開きしていいのか」
謝るティエリアに、リエットはひらひらと手を振った。
「いいって。悪いのはネイだから。君が悪いんじゃない。とりあえず、泊めてくれる?ホテルに泊まる金使うのもったいねー」
「はぁ・・・・」
「ティエリア!!こいつは、極度の守銭奴なんだ!全財産五百億リラは持ってるんだぞ!たかが五億くらい・・・」
「いいわけねーだろ、うるぁ!!」
聖書を取り出して、それでボコボコロックオンを殴る。
聖書は、読むものです。
殴るものではありません。でも、彼女の聖書は殴るためにできている。
分厚さも、殴るために。

床に伸びたロックオンを放置して、ティエリアは料理を作るとそれをリエットに夕飯として振舞った。
「ありがとね。君いい子だねー」
「どうも・・・でも、ホワイティーネイの方が、帝国騎士もつれず、フリーで人間世界を?」
「ああ、俺強いから。対魔の魔法の他に神聖魔法の攻撃呪文もいくつか持ってるから平気。襲ってきたヴァンパイアは返り討ち・・・・今回のシェゼル・ディーマは、旧友のシェキアの頼みとあって、油断した。血を吸われたけど、ヴァンピールになることもないし。死ぬこともない。俺はくそったれの神に祝福を受けてるからな。くそったれの神をこんなに信仰してるからハイプリーストにもなれたし」
くそったれとか。神を信仰している聖職者の台詞ではない。
聖職者はもっと清く、神を信じて、その祝福を受け、魔法として力を現すのだが。
ティエリアは、聖職者のことには疎いので、そんなものなのだろうと思った。

「同じ聖職者の方でも・・・聖女マリナ姫と随分違うんですね」
「あー。聖女マリナはなぁ。生まれつきの聖女だし。俺なんかは、ただの平民だしな。帝国騎士になりたかったんだが・・・・ホワイティーネイは聖職者になるしか道がないから、どうせなら極めてやろうってハイプリーストになってやった。今の皇帝メザーリア様も、俺が自由に人間世界で聖職者として生きることを応援してくれているし。あーあ、俺皇帝の帝国騎士になって皇帝守りたかったなぁ。ハイプリーストなんて柄じゃねーよ俺。第一、なんで俺女に生まれてきたんだろ。ちんこ欲しいよ。金玉も。ちんこも金玉もついてねーんだからなぁ」
「下品なのにゃ!」
フェンリルが、ティエリアの頭の上でもっともな発言をする。
「いいんだよ。俺は下品だから。こういう性格なんだよ」

ティエリアは、伸びたロックオンを寝室に運んだ。
そして客室をリエットにかすと、そのまま就寝する。

翌朝、荷物をまとめたティエリアは、パートナーであるロックオンと協会から命令されたヴァンパイア退治に出かけることになった。
ハイプリーストの彼女は、聖書を何冊かリュックから出して、中に銀のホーリーダガーを仕込んでいる。
神の祝福を受けたヴァンパイアは、銀も平気になる。
「俺とティエリアはナイトメアに乗って、空を飛翔するけど、お前はどうすんの?」
「あー。空ね。神よ迷える子羊たちに祝福あれ。ホーリーウィンド」
リエットは、神聖呪文を唱えて風をまとうと、ふわりを体を浮かせた。
「これでいくぜ」
「器用だなぁ、お前。ハイプリーストがお似合いだぜ」
「うっせ!」
聖書がひゅるるると飛んできて、願い違わずロックオンの頭にあたった。
「いってええええええ!!」
「ついでに、ガブリ、だにゃ」
「もぎゃああああ!!」
いつもより深く噛み付いたフェンリルの牙は、頭蓋骨に罅をいれた。
「ぎゃあああああ、痛すぎ!!」
ロックオンは、生命の精霊リーブを呼び出すまでもなく、その驚異的な回復力で傷を再生させた。

「いっくぜえええ!ぶっとばせ、ナイトメア!!」
「了解」
ナイトメアはそれだけ答えると、空をぱからぱからと、非常識に蹄の音をたてて走っていく。
ロックオンの前に乗ったティエリアは、ナイトメアにしがみつく。
風が大気をきっていく。



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