ニールは玄関に鍵をかけて、車で近くのスーパまで出かけると、メロンとあとプリンを買って戻ってきた。
「ティエリア?」
玄関の鍵が開いていた。
まさか、あの状態で外出したのかと焦ったが、ティエリアは玄関に蹲っていた。
「ひっく、ひっく。ニールいないのー。ひっく、ひっく」
涙をボロボロ流して泣いているティエリアを発見して、ニールは頭を撫でて抱きしめる。高熱のせいで、大分年齢が逆行しているようだ。
ティエリアを抱き上げて、ニールは寝室に向かうと、もう何度目かも分からないがベッドに寝かせた。
「ニール、や!僕の傍からいなくなっちゃや!」
「大丈夫、傍にいるから。メロン切ってくるから、待ってられる?」
「うん」
ニールは台所で買ってきたばかりのメロンを食べやすい大きさにカットして、ティエリアのところに持っていった。
「食べさせてー」
「あーもう。仕方ないなぁ。ほれ、あーん」
「あーん」
口をあけるティエリアに、カットしたメロンを食べさせる。
まるで雛鳥にエサをやっている親鳥の気分だ。
「おいしいのー」
「そうか。一人で食べれるか?」
「いやー。ニールが食べさせて」
「はいはい」
ニールは切ったメロンを、ティエリアに食べさせた。それから、プリンを持ってきて、それもスプーンですくってティエリアに食べさせる。
「おいしいにゃあー」
「薬のめるか?」
薬という言葉に、ティエリアが過剰に反応する。
「薬苦いから嫌いなの」
「だけど飲まなきゃ熱下がらないぞ」
「苦いのきらーい」
そういうティエリアに、ニールはシロップづけにした薬を飲ませ、解熱剤も飲ませる。
解熱剤なんて、口移しで飲ませた。
それからペットボトルの水を口に含んで、脱水症状を防ぐためにティエリアに水を飲ませる。口移しで。
あーあー、これは俺もインフルエンザにかかったかなと思いながらも、ティエリアのためなら仕方ないかと思うニール。
ニールの服の裾を引っ張るティエリア。
「ああ、もう分かったよ。傍にいるから」
ベッドに横になったティエリアの傍にベッドソファーを移動させて、そこにニールも横になる。
「傍にいてね?」
「ああ、ちゃんといるから。安心して眠りなさい」
薬の効果か、ティエリアは眠りに落ちていく。
ニールは仕事部屋には戻らずに、ティエリアの傍でその寝顔を見つめ、じっと横になっていた。それから、湿ったタオルをもってきて、汗をかいたティエリアの体を綺麗にふいてやった。
「んー?ニール?」
「あ、ごめんな。汗きもちわるいだろう。体ふくから、ちょっと半身起き上がれるか?」
「うんー」
タオルで背中、腕、足とふいていく。汗をすいとったパジャマを脱がして、下着も脱がせる。
「僕を食べちゃうの?」
「いやいやいや。いくらなんでも病気のティエリア襲うほど落ちぶれてないから」
新しい下着をはかせて・・・というか女の子用のパンティーをずっとティエリアははくようになった。昔はボクサーパンツタイプの下着だったのに。
新しいパジャマを出して、着替えさせて、ニールはボタンをとめていく。
「ふにゃああ」
パジャマに着替えさせる途中で、ティエリアが力尽きた。ベッドに寝かせて、ボタンを全部とめると、そのまま毛布と布団をかける。
「傍にいて?」
熱でいつもより潤んだ石榴の瞳で見上げられる。
ニールはついに陥落した。
ティエリアのベッドに入り、抱きしめてやる。
ティエリアは、しきりに擦り寄ってくる。
「一緒に寝ような?」
「うん」
そのまま、ティエリアは薬のせいでまた眠ってしまった。
ニールは眠くなかったが、ティエリアの高めの体温を感じながら目を瞑って、時間が過ぎていくのを待った。
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