永遠の絆「家族」







「ほら・・・あいつが、ライルだ」
「ほんとに・・・ロックオンそっくりだ」
車の中で、ロックオンがライルのよく入り浸る酒場に車を停めて、その中から自分の弟を探し出して見つけ、懐かしそうにしていた。

駐車場には、ロックオンがライルに贈った車が停めてあった。
ちゃんと使ってくれてるんだなって思うと、凄く嬉しかった。
昔は、暗殺を行って闇の世界で生きてスナイパーとして腕を磨き、金をためてその金をライルに仕送り、ライルが無事に大学を卒業できるまで仕送りを続けた。
汚い金だが、金は金であった。

ティエリアは、ドアを開けてロックオンを外に引っ張り出した。
「おい、ティエリア!?」
「こんな、ただ眺めるだけじゃ、時間は過ぎ去ってしまう!せっかく生き残った弟さんなのでしょう!こんなに気にかけているのなら、会うべきだ!!」
「いや、俺は」
「会うべきだ!!」
ティエリアに無理やり引っ張られ、ロックオンはその酒場に連れ込まれた。

「おー、かわいいね、君」
酒場の入り口で立ち止まったロックオンを置いて、ライルのほうを連れてこようとしたティエリアに、酔っ払った男数人が声をかける。
「でも、君みたいなかわいこちゃんが出入りするには、ちょっとはやいかもよ。まぁ、せっかくきたんだし、どう、今日一杯。んで、そのままホテルに・・・」
下衆な言葉を、ティエリアは無視したが、ロックオンが黙っちゃいなかった。
「こいつは、俺の連れだ。俺の恋人。手出すなよ」
「ち、男連れか」
あちがちな台詞を吐いて、酔っ払いは散り散りになっていく。

「・・・・・・・兄さん!?」
「よお、ライル。元気にしてたか?」
「兄さん、本当に兄さんなのか?」
べろべろに酔っ払ったライルは、足元も覚束無い様子だった。
「飲みすぎだぞ、ライル」
「あー。兄さんの幻が、俺に説教してる。兄さんがこんなとこに、俺の前にくるはずなのにな。ははは」
「ライル・・・・愛してるから」
「兄さんが、俺に愛してるだってさ。はー。飲みすぎた」
ガンガンと壁に頭を打ちつけるライルに、ロックオンは懐かしい弟の声を聞けて、そして顔を見れただけで満足だった。
「マスター、あのライルは・・・まさか、つけてるとか、そんなんないよな?」
「あんた・・・双子の兄か弟か。大分つけがたまってるんだが」
「あちゃー」
ロックオンは頭に手をあてて、ライルのためた未支払いの分をカードで清算をすます。
「毎度あり。今度は兄弟水入らずでのみにきたらどうだい」
「はははは、兄さん、今度一緒に飲みにいこう。飲みに。そっちの兄さんの恋人っていうかわいい子も」
ライルは椅子に座って、そのまま眠りこけてしまった。

「いつか・・・・お前と、一緒に酒を飲める日がきたらいいな」
ロックオンは、上着を脱いでライルの肩にかける。
「もういいのですか?」
「ああ。もう十分だ。俺は、ライルの前にいるべき人間じゃない。一度戻ろうか家に」
「はい」
家に戻ろうと言われて、まるでそこが自分が生まれ育った家であるような錯覚をティエリアは味わっていた。ロックオンの生まれた生家。人の生活の匂いがしない空間。でも、ティエリアがそこが大好きだった。ロックオンが生まれ、育った家。
かけがえのない、ロックオンの思い出が溢れた場所。

ティエリアの作り物の心臓が、悲鳴をあげていた。
この感情は危険すぎるのだと。

この、人を愛するという感情は、とても危険なのだ、ティエリアにとって。そう、己を壊すくらいに複雑すぎて、自分をコントロールできなくなる。それでも、ティエリアはロックオンを愛したかった。

二人はロックオンの家に戻ると、また同じベッドで眠りについた。
眠ったロックオンを見つめていた。
外はまた雪が降っている。
「雪みたいに・・・この心も、あなたの中に溶けていけばいいのに」
からくり仕掛けの心臓に手を当てる。
ドクンドクンと、確かに脈打っている。
人間ではないけれど、限りなく人間に近いティエリア。

「いつか・・・僕は報いを受けるのかもしれない。人工アンドロイドでありながら、あなたを愛した罰を受ける時が」
それは、ただの予感。
まさか本当のものになるなんて、思ってもいなかった。



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