「右目・・・・再生させないのですね」 「ああ。俺がお前を愛した報いだ。お前が愛で壊れるなら、俺はこの傷をこのまま残す」 二人は、ベッドでお互いの体温を共有しながら、悲しげに目を伏せる。 「愛はカルマ・・・・・」 「カルマ?」 「そう。業」 「カルマ・・・・か」 ティエリアは、白い手でロックオンの頬を包み込んだ。 「約束してください。先に、僕を置いていくことはないと」 「約束する。お前を置いてはいかない」 「ありがとう」 「ティエリア、お前も約束してくれ。俺を置いていかないと」 「約束します」 矛盾の言葉。 また、いつ愛で壊れるかも分からない。またいつロックオンを置いていくかも分からない。 でも、またティエリアは壊れても壊れてもロックオンを愛し続ける。 真っ白になっても、ロックオンに恋をして恋人同士になって愛し合い続ける。 二人の愛は、純粋なのになんて危険を孕んでいるのか。 はぁと、ティエリアが深い吐息を零した。 「このまま、時間が止まってしまえばいいのに」 「この時間が永遠ならいいのにな」 そんなこと、ありえないのに。 本当の永遠なんて、この世界の何処にも存在しないのだ。 永遠に似たものはある。 永遠は瞬間の連続。永遠は瞬間を内包する。 永遠は、確かにそこにある。二人を包み込んで。 その瞬間がまるで永遠であるかのように、二人はずっと離れず、傍にいてお互いを抱きしめあっていた。 「いつか、またアイルランドにいこうか」 「そうですね。今度は、春に」 冬は嫌いではない。雪はとても綺麗。雪はきっと、天使の翼の破片。 天使が泣いている。泣いて、翼の破片を散らしている。 「雪・・・・綺麗だった。はじめてみた」 「じゃあ、また雪が降る季節に行こうか」 「春にも行きたい」 「じゃあ、両方の季節にいこう」 二人は、クスリと笑いあう。 激しくなる戦闘。消耗戦。 もう地球には、しばらく降りることはできない。 歴史が、二人を引き裂く。いつ戦闘の召集されるかも分からない中、二人は静かに寄り添いあう。 「僕は・・・・人間」 「そうだぜ」 天井に向かって、ティエリアは手を伸ばした。 その手を、ロックオンが掴んで手を繋ぎあう。 「絶対に、この戦い生き延びような」 「はい。生き延びます」 宇宙で散ることがないように、祈る。 二人は、確かにその時、未来を描いていた。 生きて、この戦いを切り抜けるのだと。 生きて。 生き抜いて。 カルマの愛は、二人に更なる報いを与える。 愛し合う二人は、それも知らず穏かな、限られた時間を過ごす。 永遠は瞬間の連続。永遠は瞬間を内包する。 永遠は、確かにそこにある。二人を包み込んで。 絶対なる永遠は存在しない。擬似永遠。その瞬間が、永遠なのだ、二人には。 二人が寄り添い合うその時間が、二人にとっては絶対永遠。 > NEXT |