血と聖水\−U「ネイの最期の願い」







「愛しているんです・・・・」
血の涙を零して、エーテルイーターに食われていく12枚の翼で自分を包み込むんだティエリア。
ほんの僅か、砂が零れる落ちた時、我に戻ったティエリアは、ただそれだけ囁くと。
次の瞬間には、エーテールイーターに自ら身を投じた。
エーテルイーター、新人類を食らう闇の力。
新人類を食らう使徒。
使徒は、神の使徒を食らう。

「うわああああああああ!!」
ネイの、ロックオンの絶叫が木霊した。
エーテルイーターは止まらない。
ネイの力は止まらない。

愛しいティエリア。
俺だけのティエリア。

壊れていく。
食べていく。

「エーテルイーター、止まれ!!」
暴走し続ける力に、ティエリアが飲まれていく。
エーテルイーターは、ティエリアをこの世界からなくしてしまった。
「おおおおおおおおおおお」
ネイは血の涙を流して叫ぶ。

神は自嘲気味に微笑んだ。
そう、これが予言された未来。
ネイは、愛する永遠の血族を永久に失う。

「お前のせいで!!」
ドシュ。
神は、血を吐いた。
「な・・・ぜ」
刹那が、背後から神の心臓を貫いていた。
リジェネのブラッディイーターが、刹那のビームサーベルにまといついていた。
「・・・・この世界は、あくまで間違っていると?受け入れないと?」
「誰が!!」
「神よ、間違っている。この代償、お前の命で償え!!」
エーテルイーターの暴走が止まる。

「ティエリア・・・・」
血の涙を流して、白い翼を元に戻して地上に降りると、地面に両膝をつくネイ。
「あああああああああーーーーーー!!」
魂の絶叫。
それで、終わりかと思われた。ティエリアの死が、二人の命をかけた戦いの最後だと。
だが、ネイは。
自分のコアを取り出した。
エメラルド色に耀く、美しいネイのコア。血の神の力をもつコア。
「ティエリア。俺は、こんな終わりは嫌だ。俺の命・・・やるよ。お前だけには、生きて欲しいんだ」
ふわふわと漂うティエリアの魂を両手で包み込むと、コア、神の魂を移植した。
エメラルド色に、ティエリアの魂が包み込まれる。
魂の移植。ネイのコアは、なくなった。
コアのなくなったヴァンパイアは、たとえ神であれ生きていられない。

サラサラと。
命の限界をこえたネイが、灰になっていく。
ヴァンパイアは、神であれ死する時灰となる。
サラサラと。
灰になっていく。

世界にクリアになって、血の神の力で、コアを移植されてこの世界にもう一度再生されたティエリアは、灰となっていくロックオンを抱きしめて泣き叫んだ。
「いやだ、こんなのいやああああああああああ!!」
自分の命なんていくらでもあなたに捧げれるのに。
いくらでも、あなたのために死ねるのに。
崩れていくロックオンを腕の中に抱き寄せる。でも、ロックオンはサラサラと、手の隙間からも腕の隙間からも灰となって世界に還っていく。
灰を掴んで、ティエリアは絶叫する。
「ロックオン、いやああああああああ!!」
「あいして・・・る・・・よ」

ネイの最期の言葉が、ティエリアを抱擁する。
「うわああああああああああ!!」

刹那もリジェネも、動けない。

神は、血を流しながら・・・。
「愚かなネイ。使徒に命を与え、自ら滅びるというのか・・・」
「貴様、ロックオンを侮辱するな!」
「お前のせいで!」
刹那とリジェネが、血の刃を神に向ける。

「この世界は・・・・変革を」
神は、二人の刃に切り刻まれながら、泣き続けるティエリアを見下ろした。
たかが使徒の一人。なのに、ネイはこの使徒を愛していた。
愛して。
愛。
愛は永遠。愛は無限。愛は刹那。

「アクラ」
そう呼ばれた気がした。
ネイの、懐かしい笑顔を思い出す。もう七千年も前のネイの笑顔。
その頃はアクラと呼ばれていた。永遠の愛の血族であった。神は、未来を視た。
だが、こんな未来は視ていなった。


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