朝日が、全てを照らしていく。 サラサラと灰となり、砂時計の砂のように崩れたネイ。 花畑が、さわさわと緩やかな風で揺れる。 「アクラ」 思い出す。 ネイの笑顔、ネイの体温、ネイの愛。 それを失うことが、どれほど痛いのか、アクラシエルには分かっていた。 自分から血族を放棄しておきながら、身を切られるような孤独と虚しさを味わった。 ただのネイの血族であれば、この傷みを乗り越えることなどできないだろう。 現に、ティエリアは灰を掴んで、泣き喚き、そしてソウルイーターを取り出した。 「止めろ、ティエリア」 「ティエリア!!」 「離して!僕も死なせて!!」 刹那とリジェネにとめられながら、自分のコアをソウルイーターで破壊しようとするティエリア。 「お前の命は、ロックオンが命をかけて守ったんだぞ!」 「ティエリア!!」 ティエリアは、灰を手に、首を振った。 「そんなの・・・・・そんなのいらない!守られたくなかった!こんな結末になるなら、僕だけが死ぬほうが良かった!!」 「ティエリア!」 「僕は逝くよ。ロックオンの元に。あの人のいない世界で生きている意味なんてない」 それは、覚悟した者の瞳。 止めても無駄と分かっていても、刹那とリジェネは必死でティエリアをとめる。 精霊界に戻ろうとしていたダークエルとライフエルを、リジェネがとめる。 「ライフエル!ロックオンを生き返らせることはできないの!?」 ライフエルはゆっくりと首を振る。 「コアがなければ・・・・」 「あるよ!僕の中に、ロックオンのコアがある!これで!!」 「無理じゃ。すでに、それはお主のコアとなった。ネイは・・・七千年も生きていた。こんなところで終わるとはのう」 ダークエルとライフエルは精霊界に戻った。 ティエリアは、灰を握り締めたまま泣き続けていた。 その傷みが、アクラシエルにも伝わってきた。 「私は、今になってはっきりと分かった。私が間違っていた」 刹那とリジェネに切り刻まれた傷をそのままに、アクラシエルはゆっくりとティエリアに歩み寄ると、ティエリアを背後から抱き寄せた。 「アクラ・・・・」 「ネイも、よくアクラと呼んでくれた」 ふわりと、光が満ちる。 「砂時計の砂が落ちきった砂時計を逆さにする。それをさらに逆さにすれば・・・・時は、逆流から更に動き出す」 「アクラ?」 「私は無と・・・・そして有の神。創造神ルシエードの子。無をつくれ、有、命もつくる」 アクラシエルは、自分の神格を有する魂を取り出す。 「お前にやるよ、ネイ。私は、確かにお前を愛していた、ネイ。この血族の姫王と、共に生きるがいい」 「アクラ!?」 アクラシエルの姿が、世界に溶けていく。 存在を維持できなくなって、世界に還っていく。 まるで、ロックオンのように。 「アクラ!!」 ティエリアは、アクラシエルに向かって手を伸ばす。 「お前でよかったよ。ネイの血族がお前で・・・・幸せになれ。二人で。そして、いつかくる未来を変えてみせろ。神の名にかけて誓おう。もう、この世界にバランスの調整だと介入することはない。・・・・・・・・ネイ」 満足げに空に抱かれて、アクラシエルは消えていく。 消えた場所に、ネイが、ロックオンが立っていた。 「・・・・・・・・ロックオン?」 ロックオンは首を振る。 「我は6代目ネイ」 NEXT |