星の砂「星の砂を集める物語」







「あー。ティエリア。残念ながら、宇宙フグは絶滅してしまったんだ」
「なんだって!!」
「グランジェ3に生息していたんだがなぁ。密猟が絶えずに・・・・ついには絶滅を」
ドクター・モレノの首を、ティエリアは思い切り締め上げた。
「絶滅だなんてそんな!宇宙フグを捕まえて、飼育する僕の夢をどうしてくれる!!」
ガクガクと揺さぶられながら、ドクター・モレノは父と母の顔を脳裏でみた。走馬灯だ。ああ、ここで死ぬのか。
「ティエリア、ドクター・モレノは嘘いってるんだよ。今でも、宇宙フグはグランジェ3に住んでいる。だけど、みんんな恥ずかしがりやで、ティエリアの元に現れてくれないだけだ」
ロックオンが、ティエリアの頭を撫でると、ティエリアはにこりと笑って、ぺってドクター・モレノを放り出した。

本当に、この恋人二人、どうしてくれよう。
一度、熱いお灸でもすえてやろうか。

ティエリアはジャボテンダーを抱き直して、ロックオンの腕の中でキスを受けていた。
ロックオン、本当に大物だ。マイスターの年長者、リーダー格であることを取り除いて、ティエリアと恋人としてケンカもせずに交際できているのだからすごい。
「ティエリア、今日は何して遊ぶ?ジャボテンダーの光合成か?それとも北斗の拳ごっこか、それとも・・・」
「ドクター・モレノで遊ぶ!」
嬉しそうに、ティエリアはドクター・モレノを指名した。
いや、すでに十分ドクター・モレノはティエリアによって弄ばれている。
よろりと起き上がりながら、ドクター・モレノは乱れた白衣ととれたスクリーングラスをかけなおして、白衣のポッケットからチョコレートを取り出すと、それをティエリアに与えた。
「ありがとう」
にこり。
本当に、花が咲いたような微笑を浮かべる。いや、その花さえ霞んでしまうだろうか。
こうして自然にしてれば、綺麗でかわいいいい子なんだが。

「お父さんは、悲しいぞ」
ついに、ドクター・モレノはお父さんの心境に達してしまった。
「あ、あ、ロックオン、だめぇ・・・」
与えられたチョコレートを、ロックオンが舌で奪って、ティエリアの衣服の下に手を入れていた。
スッパーン。
「そこになおれ、ロックオン」
診察室のスリッパでロックオンをはたいた。
「お前らな、お父さんをからかってそんなに楽しいか!!」
答えは。
「楽しい」
「楽しいな」
ガクリと、ドクター・モレノは涙を流した。でも、こんなことで負けるものか。

「ジャボテンダーを見習え!」
その言葉に、ティエリアは痺れた。ロックオンも、なんだか分からないが感動した。脳みそがティエリアと付き合っているうちに、ティエリア用になっているせいだ。
二人は正座して、ドクター・モレノの説教を2時間受けるはめになった。
「で、人間とは本来・・・・・お前らなぁ」
ティエリアは、興味を失って、小型ゲーム機でゲームをして遊んでいた。ロックオンは居眠りをしていた。
「ロックオン、ダンジョンBのボスを突破した」
「おー、すごいな」
こっくりこっくりと眠っていたロックオンはすぐに覚醒して、ティエリアと二人だけで、説教を受けていることも忘れてゲーム画面を見つめている。
美しいデモムービーが流れていた。星の砂が流れ、一つの砂漠となって登場人物たちが次々と現れ、ポーズと台詞を決めたあと、星の砂と一緒に流れていく。
ゲームは、世界に散った星の砂を巡るアクションRPGだった。ありがちな王道展開のストーリーであるが、ヒロインが星の砂を世界に散らばせてしまって壊れ、それを助けるために主人公が立ち上がって、仲間たちと共に星の砂を集めて、最後にヒロインを元に戻すというものだった。

「勘当だ!こんな娘と息子は勘当だ!!!」
ついにはドクター・モレノもお手上げになった。
「ええ!!」
「そんな!!」
二人は凄いショックを受けた。でも次の言葉は。
「僕はドクター・モレノの子供じゃない」
「俺も、おやっさんの子供に生まれた覚えないし。勘当でもなんでも・・・それよりティエリア、そのゲーム面白いか?」
「うん」
「そっか。今度続編かってきてやるな」
「ありがとう」
いつも二人はあつあつラブラブ。
ティエリアを甘やかしすぎる部分のあるロックオンだが、ティエリアはそんなロックオンが大好きなのだ。二人の関係はそんなものでちょうどいいのだ。



NEXT