星の砂「壊れていくオルゴール」







捕虜となったものが辿る末路は、拷問と死。
「よくも、よくも、貴様らのせいで仲間は!」
殴る蹴るのリンチを受けたティエリアは、決して吐けといわれても仲間のことを話すことはなかった。
ああ、このまま僕は死ぬのか。こんなところで。せめて、最後にロックオンに会いたい。
「ロックオ・・・」
敵の上層幹部の命令で、リンチは止まった。ティエリアは右肩から酷い出血をしながら、一命を取り留めた。
「こんな方法で口を割るはずがない。拷問にかけろ。とりあえず、死なないように手当てだけはしておけ」
その命令によって、ティエリアは応急処置を医師から受ける。
生き長らえれば、仲間が助けにきてくれるだろうか。
傷と出血と、そして衰弱した体力のせいで酷い高熱を出して、死の境を数日間さまよった。普通なら、このまま放置して死なせるだろうに、何故かその敵の幹部はティエリアを助けた。
回復すれば、また拷問を受けるのだろうか。耐えてみせる。どんな屈辱を受けようとも。
「回復したか?」
目をあけたティエリアは、男の顔を見た。
エメラルドの瞳をしていた。ティエリアは・・・不覚にも泣き出してしまった。
「怖い怖い。いや、助けて・・・・」
その幹部が、顔だけは綺麗なままのティエリアの顎に手をかけて上を向かせる。
ティエリアは、その男に唾をはきかけた。
「ち・・・・」
バシっと頬を殴られた。
「殺せ。殺すなら、早く」
蚊がなくような声で、反抗するティエリアを、男はじろじろ見ていた。
「お前、女だろう?」
その声に、ぎくりと体が強張った。
男の捕虜なら、受けるのは暴力だけ。でも、女の捕虜は。
「違う!僕は男だ!」
上のシャツを引き裂かれた。
「胸はない・・・・男か」
女性化が進んでいるが、胸は平らに近い。でも、下半身を見られたら終わりだ。男にあるはずのものがなくて、女の器官に似たものがティエリアの体にはある。
それを見られたら、終わりだ。
「まぁ、男でも、皆たまっている。リンチの時も、皆お前の顔だけは殴らなかった。これだけ綺麗な顔だ・・・その気にもなるだろう」
着ていたボロボロのズボンをはぎとられ、寒気に身をガタガタと振るわせた。
「いや!助けて、助けてロックオン!!」
足を掴まれて、押し倒された。
そして、男が息を呑むのが分かった。
「お前・・・男じゃないな。それに、男の名を呼ぶということは・・・・男を知っているな?」
「違う、違う!!」
膝を割られ、ロックオンにしか見せたことのない場所を、他人に見られた。
「女、だな。胸はないが。まぁ、そういう女もいるだろう。色からまだ未発達。男は知らないか?」
ティエリアは絶叫していた。
死にたい。今すぐ、死にたい。でも、死んだらロックオンともう二度と会えなくなる。

ティエリアは男に髪をひっぱられて乱暴に引きずられると、鬱憤が溜まって殺気だっている兵士たちの前にひきたてられた。
「喜べ。拷問は中止だ。こいつ、女だ!」
「女!!」
「おんなー!!」
「女か!!」
中央に転がされ、身を隠す場所もなくて、ティエリアは涙を流しながらガチガチと歯を鳴らす。
女の捕虜が辿る末路。それが、男として生きている自分に訪れようとしている。
でも、死は選べない。自害できないように、脳にストッパーがかかっている。
死にたい。でも死ねない。
「助け・・・て・・・・」
涙を浮かべて、自分を裸にした男を見る。
縋りつくような瞳に、男は笑った。
「せいぜい、その身で殺していったものたちの痛みを知るといい」

「ひゃっほう!俺が一番のりだぜ!」
「俺だ俺だ」
「いやだ、おいていかないで、お願い、お願い!!」
男は少し止まり、ティエリアを抱き上げた。
「おい、ロック。今更、それはないだろう。自分だけのものにしようなんて、それはねーだろ」
「そうだぜロック。自分のものにするなら、壊れた後にしろよ」
ロックと呼ばれた男は、アイリッシュ系の白人だった。柔らかな茶色の髪にエメラルドの瞳。ロックオンを連想される。
「置いていか・・・ないで、ロックオン。捨てないで・・・・ロックオン。なんでもするから・・・・」
極限の状態で、ロックという男が、ティエリアの中ではロックオンになっていた。
ロックは哀しそうに目を伏せて、ティエリアの頭を撫でて。
「まぁ、そういうことだ」

「いやあああああああああああ!!!」
一言でいうなら、地獄。
何十人もの男の前に、女として与えられたティエリア。

「おら、もっとしゃぶれよ」
何日間にもわたって、輪姦され続けて、すでにティエリアの自我は崩壊していた。
もともと、こういった扱いをされると壊れやすくできているのだ。たった一日で壊れた。
それでも、男たちは執拗にティエリアを求める。幼いその体をまさぐり、獣のように犯して、蔑んで笑う。



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