もう一度出会うために「もう一人のティエリア」







ロックオンは、無断でケルヴィムを発進させた。
そして、リボンズのいる邸宅の近くの森にとめた。
そのまま、銃を片手に、リボンズの邸宅へと走っていく。
ミス・スメラギには無断でガンダムを動かした。刹那とアレルヤは止めなかった。
このまま、ロックオンがガンダムマイスターを辞めてしまうのも、ロックオンの自由だった。

ただ、生きることを放棄したわけではないと、二人とも安堵した。
久しぶりにあいたロックオンの部屋から出てきたロックオンは、その瞳に生きるという意志を漲らせていた。
部屋の中にあった、非常食のゼリーも口にしていた。
ガンダムを発進させる前に、食堂でちゃんとした食事もとった。

ロックオンは走る。
もう一度出会うために。

リボンズの邸宅の前までやってきた。
そこは、普段なら厳重なガードがされているはずだったのに、無人だった。
屋敷の中に入る。
リボンズが座っているはずのソファに、リボンズの姿はなかった。
「ようこそ、イノベーターの集う場所へ」
ティエリアとそっくりの声がして、声がしたほうを向く。
そこは、緩やかな螺旋状になった階段だった。一歩一歩、ゆっくりリジェネが降りてくる。
ティエリア瓜二つの容姿。
だが、ロックオンは迷いもなく銃口をつきつけた。

「ティエリアはどこだ!」
「おかしなことを言うね?君のティエリアはもう死んでしまったはずだよ」
クスクスという笑い声に、冗談ではないのだと、銃弾を放った。
銃弾は、リジェネの髪を一房地面に落とした。
ハラハラと、散っていく髪の毛。
自然のウェーブに任せながらも、綺麗に整えられていたリジェネの髪が不自然なバランスになる。
それに、またリジェネがクスクス笑った。
「残念だけど、一歩遅かったね。君のお姫様から、記憶は消し去ったよ」
その言葉に、エメラルドの瞳が悔しそうにリジェネを睨みあげる。

「ついておいでよ。君のお姫様に会わせてあげる」
リジェネは、見たところ武器をもっていないようであった。
リジェネの頭に銃口を突きつける。
リジェネは、降参のポーズをしてロックオンに銃を突きつけられながら長い廊下を歩いた。
「ティエリアはもう真っ白だよ。僕が記憶を消してしまったからね」
「黙れ!」
「そもそも、こちら側のティエリアは僕たちイノベーターのものなのに。どうして君は、自分だけのティエリアだけで我慢できないのかな?ティエリアが可哀想だよ。あんなにも、君を愛していたのに」
「黙れ!!」
「自分のティエリアが死んでしまったからって、君はもう一人のティエリアまでその毒牙にかけるのかい?」
ロックオンが、黙り込んだ。
「おや、図星かな?」
ジャキリと、リジェネに銃口がまた突きつけられた。

「おお怖い怖い。君は欲張りだね。自分のティエリアが死んでしまったからって、僕らのティエリアにまで手を出すなんて。でも、僕らのティエリアはイノベーターだよ?完全なイノベーターだ。人間が大嫌いなんだ。ティエリア曰く、人間は下等な猿だそうだよ。そこらへんは、僕らイノベーターの中で一番きつい性格をしている」
ロックオンは、もうリジェネの好きに語るようにさせていた。
「僕たちのティエリアは本当に天使なんだ。僕と同じDNAで、僕の兄弟なのに、僕よりも美しいんだ。リボンズがティエリアを自分のものにしてしまったのは知ってる?」
「そんなこと、信じねぇ」
「純粋でいいねぇ。僕たちの天使は、君のものになるまえにリボンズのものになってしまったんだよ。君のものとなるティエリアは穢れている」
「うるさい」
「穢れていても、君は構わないか。そうだね、人間は俗物的だから。すぐに、自分の色に染め上げてしまうかな。ああ、ティエリア、かわいそうに。せっかくイノベーターとして目覚めたのに、人間に汚されてしまうのか・・・・っと、この部屋だよ」
「扉を開けろ」
「それくらい自分でしなよ。人使いが荒いね」
「開けろ」
「分かったよ」

扉が開け放たれる。
無機質な部屋。
何もない。
空っぽだった。

ハメられた!

リジェネが、見た目の華奢な体からは想像もつかない力で、ロックオンの銃口を握り締めると、銃を奪い取った。
「形勢逆転だね」
ロックオンは、降参のポーズをとらない。
ここで命尽きるのも、運命か。

パァン!
銃声が鳴り響いた。
ロックオンは目を瞑っていた。
襲ってくるはずの痛みが、ない。

リジェネの銃は、天井に向かって発砲されていた。
そして、リジェネは急いで大き目のクローゼットを開ける。
そこには、気絶したままのティエリアが隠されるように存在した。

「君の眠り姫はここだ。さぁ、ティエリアを抱えて早くこっちに!!」
「ティエリア?リジェネ?」
「いいから、早く!!」
リジェネの必死の声に、ロックオンはもう一人のティエリアと感動的な対面も果たすことなく、ティエリアを抱えてバルコニーに出た。そして、バルコニーから隣の部屋にうつる。

隣の部屋には、隠し扉があった。
「さぁ、早く中へ!」
せかされるままに、隠し扉の階段をかけおりていく。



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