血と聖水フレイム「フレイムロードの業火」







今はもう、教皇は3年ほど空位であったが、皇帝メザーリアが新しい教皇をたてた。
教皇の名は「セレニア」
先代教皇アルテイジアの実の名をとって、つけられた。皇帝メザーリアは、教皇アルテイジアに隠されていた哀しい秘密に涙を流し、セレニアという名を忘れさせないように、教皇についた者はセレニアと名を改めさせるようにした。
そこに世襲制はなく、教皇庁に属する聖職者の中から選ばれるようになった。
世襲制であったアルテイジアは、こうして滅びた。アルテイジアの人格と記憶を持った巨大な魔石は破壊された。元教皇の一族からも、教皇に再びなれる可能性だって十分にある。みなエリート揃いで、聖職者ばかりの一族だ。

「すまない、フレイムロードの王よ。アルテイジアにセレニアという秘密があったなんて。まして、お腹に恋人の子を宿していたなんて・・・・私は知らなかった。知らないことは罪だ」
「皇帝よ。どうか、顔をあげてください。あれは不幸な事故だったのです」
「フレイムロードの王よ」
王子としてフレイムロードの王と共に新しい教皇が就任する祝いと、アルテイジアの墓碑を立てるという言葉に同行したのだが、王と皇帝の言葉にフレイムは叫びたくなった。
(不幸な事故なんかじゃない。ちゃんと観察していれば防げたはずなのに。皇帝も、教皇だからと最初から否定してばかりで・・・・セレニア)
セレニアの墓碑は大理石で作られ、いつも花束が供えられていた。

「うおおおおおおおおおおおおお」
真夜中、フレイムはセレニアの墓碑の前で涙を流しながら吼えた。
もう、この世界に愛しいセレニアもお腹の子もいない。
皇帝メザーリアを殺せば、フレイムロードの一族は処刑。
ならば、セレニアを殺したものたちを殺せばいい。
ネイを、その仲間を、そしてネイが一番大切にしているという正妃、姫王であるティエリアを。
セレニアのお腹の子の親は、結局名乗りでることはなかった。

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「ロックオン!朝ですよ!いい加減おきてください!」
「うー」
ティエリアは、ロックオンの足を引っ張ると、そのまま2Fから1Fにひきずっていった。
ゴンガンと頭がいろんなところにぶつけて、ロックオンは星を回している。
「おはようにゃ、ロックオン。そして、がぶりだにゃ!」
「いてええええ!!」
やっと目が覚めたロックオンは、テーブルの上に並べられた朝食を見てお腹をならしてしまった。
「うは、俺よだれたれてた」
「ぎにゃあああああ!汚いのにゃ!!」
ベッドのシーツの上にはよだれのあとがあることだろう。

フェンリルは、ティエリアが作ってくれた食事をたべると、尻尾をふりふり揺らしてロックオンのとろこにくると、ベーコンエッグを一口で食べてしまった。
「あああてめぇ、俺の食い物!!」
「ベーコンエッグが悪いんだにゃ!!」
「このおおお。お前のキャットフード食ってやる!」
本気で食べたロックオン。
「もう、二人ともいい加減仲良くしてしださい」
ティエリアは椅子に座ると、食事をはじめる。
ロックオンだけでなく、リエット、アクラシエルからもアサシンに気をつけるようにといわれている。どこにいくときもロックオンが傍にいて、守ってくれる。
アサシンに狙われているからといって、別に恐怖は感じなかった。
お昼になって、ロックオンが苦しみだした。
「どうしたのですか!?」
「うおおおおお腹いてぇ!!キャットフードあたった!」
トイレにかけこんでいくロックオンを、ティエリアは自業自得だと思った。
「ざまーみろなのにゃ」
ティエリアの頭の上で、ぽふぽふ前足を動かしていたフェンリルは、腹痛でのたうちまわるロックオンを見てとても幸福そうだった。
ロックオンとフェンリルは仲が悪い。ティエリアを巡ってのライバルなのだ。でも、本当は仲がいいんだけどね。

「いた・・・・ネイの姫王・・・ティエリア」
扉の鍵の部分を溶かして室内に入ってきたフレイムは、ぼっと体中から炎を発生させて威嚇する。
「あれ・・・この前であった、神父様・・・・アサシン!!」
ティエリアが、腰のホルダーから2丁の拳銃を取り出して、発砲する。
「うーん、うーん」
その頃ロックオンはトイレに篭っていた。
「血と聖水の名においてアーメン!!」
「ヴァンパイアハンターか。フレイムロードの王族には銀などきかぬ」
ティエリアが投げた銀のダガーは、フレイムが放った高熱の炎でぐにゃりと溶けてしまった。
「離せ!」
「時間をかけていたぶって殺してやる」
暴れるティエリアの鳩尾に拳をいれて気絶させると、ティエリアを肩に抱きかかえ、空をとんでいく。
「大変にゃ、ロックオン、びちびちうんこしてないで、主が攫われたにゃ!」
トイレから出てきたロックオンは涙を零すフェンリルの頭を撫でる。
「心配すんな。俺の結界で常に守ってある。ティエリアを取り戻しにいくぞ!!」
「オオオーーーーン!!」
ロックオンの魔力で巨大化したフェンリルの背中に乗って、ロックオンはティエリアの血の匂いを辿りに空を走る。

誰にも傷つけさせない。
ティエリアは、俺の大切な人なのだから。



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