血と聖水フレイム「セレニアの魂」







「俺を惑わすな!」
「フレイム・・・」
ティエリアは泣いていた。セレニアの魂を宿したまま。
それはフレイムにも分かった。
ネイの血族には、不思議な力が宿るという。きっと、その力でセレニアの魂を宿したのだろう。
でも、もう後には戻れない。
「死ね、ネイの血族」
セレニアの魂を引き剥がすように、フレイムはティエリアの胸を炎の剣で貫いた。
「フレイム・・・・私は」
がくりと、ティエリアが地面に倒れる。じわじわと、血が草原を染め上げていく。
その血はティエリアに吸い込まれることなく、血の海となってティエリアを鮮血色に染め上げていく。真紅に。
「セレニア・・・・・違う、俺は・・・・」
倒れたティエリアの隣に、透けたセレニアが佇んでいた。
セレニアは哀しそうに涙をいくつも零す。
「セレニア!」
フレイムが手を伸ばすと、セレニアの姿は掻き消えた。
「全て・・・・お前たちが」
ティエリアにとどめを与えようとした時、血でできたランスがフレイムの炎の剣を弾き飛ばした。

「ネイ・・・・来たか」
「ティエリア!てめぇ、ぶっ殺す!!」
「お前を殺す!!」
遅れてやってきた刹那とリジェネは、草原に倒れて血を流すティエリアを見て、刹那が命の精霊リーブを呼び出してティエリアに回復を促した。
そして、リジェネはビームサーベルを取り出すと、自分の血に潜むブラッディイーターを召還する。
「ブラッディイーター、食いつくせ!」
ビームサーベルに纏いついた蒼のブラッディイーターは意思をもち、フレイムに切りかかる。リジェネのビームサーベルから離れてフレイムに刃となって襲いかかり、流れる血を啜った。蒼のリジェネと呼ばれる由来になった、蒼いブラッディイーターは炎に負けることなくフレイムを切り裂く。
「この、こんなもの!」
ごうっと、フレイムは自分を包む炎の密度を高めて、ブラッディイーターを撃退する。
刹那は鷹を召還し、金色の鷹をフレイムに向けている間に精霊を召還する。
「エンシェントフェニックスの精霊王よ、飲み込め!」
刹那が契約しているのは炎と風の精霊のみ。
エンシェントフェニックスの精霊王は、鳳凰となってフレイムを抱擁する。
「あああああああ」
フレイムはその炎に身を焦がされながらも、自分が操る炎よりも数千度高いエンシェントフェニックスの炎を自分のものにした。
「エンシェントフェニックス、戻れ!ジルフェ、出でよ!切り裂け!!」
炎に炎は無効と判断した刹那が、風の精霊ジルフェを召還し、真空の刃でフレイムを切り裂く。
フレイムは、炎に包まれたまま無数の真空の刃に切り裂かれ、血を流すが、それでも止まらない。
「ネイと、その仲間たちに死を!!」

怒りで、ロックオンのエメラルドの瞳の色が真紅に変わっていた。
「だめ・・・・みんな、戦ってはだめ」
傷をゆっくりと再生させながら、ティエリアは泣いていた。
「覚悟はできてるんだろうな」
「ネイ、お前に死を」
「上等だ!」
ロックオンは、血でできた刃をいくつもフレイムに放つ。そして両手で血でできたランスを振り回す。
血の刃を、フレイムは炎の剣で打ち落とすが、エンシェントフェニックスの炎を無理に吸収し、そしてジルフェの真空の刃に切り裂かれた傷口は再生しながらも、確実にフレイムの動きを鈍らせていた。
「血と聖水の名においてアーメン!」
刹那のビームサーベルが、まず肩を貫いた。
「血と聖水の名においてアーメン!!」
ブラッディイーターを再び纏わせた、リジェネの蒼いビームサーベルが胸を貫く。
そして、空気をさいて、ロックオンが振り回す血のランスが、フレイムの心臓を貫いた。
3対1だ。いくらブラッディイフリールのフレイムロード、王族であろうともこの三人と戦うのは無謀である。勝敗は初めから見えていた。

それでも、フレイムは望んだ。
ネイを殺すことを。たとえ、殺されても。
せめて、傷一つだけでもつけることを。
ティエリアを傷つけたことにより、ネイは確実に傷ついた。
これでいい。
これで。

「だめえええ!!!」
トドメを刺そうとする三人の前に、ティエリアが泣き叫んで地面に倒れたフレイムを庇った。
「ティエリア?」
「どけ、ティエリア!」
「ティエリア、庇うな、殺すしかない。アサシンの道を選んだ者は、どのみち皇帝に処刑される運命だ。民衆の前で処刑されるよりも、ここで殺したほうがこの男のためだ」
「やめて、お願いだからもうやめてええええ!!」
ティエリアの中に、再びセレニアが宿る。
「お願いです。ネイ様。どうか、フレイムを許してください。私を、教皇となった私を殺されたとフレイムは仇討ちを・・・・どうか、お願いです。ネイ様」

セレニアと名乗る、ティエリアに宿った者は、全ての真相を話してくれた。

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