血と聖水外伝「フェンリルの大冒険」4







屋敷中を探し回って、一番豪華な部屋の寝台の側の机に、鍵が置いてあるのを見つけた。
それを口に咥えて、地下室に戻ると、屋敷の主が待っていた。
「屋敷中を子猫が走り回っていると聞いたが・・・なんだ、あの美しいヴァンパイアハンターの精霊ではないか」
「その子解放するのにゃ!」
「はてさて。無理な申し出だねぇ。これは剥製にするんだよ。ああ、幻の種族を剥製にできるなんて」
バルワーズの当主は、うっとりと呟く。
「ファイアブレス!!」
フェンリルは、鍵を地面に置いて、炎のブレスを吐いた。
「サラマンダー、反射せよ」
召還されたサラマンダーが、炎のブレスをフェンリルに反射し、しかも威力を数倍に高めて、フェンリルは炎に包まれながら、氷の魔法を唱える。
「アイスエッジ!!」
サラマンダーの体が真っ二つにされた。サラマンダーは悲鳴をあげて、傷ついた体を修復するために精霊界に戻った。
バルワーズの当主は、レベルは低いが魔法士でもあった。
「こんな魔法、通用しないよ、ぼうや。君も毛並みが美しいねぇ。剥製にしてあげよう」
炎は、フェンリルが吸収した。炎の属性をもっているので、炎で焼かれることはない。

フェンリルは、叫んだ。
「お前なんて、地獄におちろだにゃ!」
アイスブレスを吐く。
今までにないほど怒っていた。
「アイシクル、反射を・・・・」
呼び出されたアイシクルは、ティエリアとも契約をしているアイシクルだった。戦乙女のヴァルキリーは、手を叩いてフェンリルとの思いがけない再開を喜ぶ。
「あら、ゼイクシオン君。違う召還であうなんて、なんて偶然なのかしら」
「アイシクル!命令に従え!」
「うるさいですわ!」
アイシクルは、もともとこの召還主が嫌いだった。いくら魔力が高くても、信頼がないとそこに契約は成り立たない。中途半端な形でつかえていたが、悪趣味な剥製のために呼び出されたりうんざりしていたのだ。
「契約を、破棄します」
「何!何をいうアイシクル!精霊が契約を破棄できるはずがない!」
「あなたは何も精霊のことをわかっていないのですね。精霊は確かに契約に従い、召還されます。でも、その契約は、召還主を信頼していなければ、契約は徐々に薄れて無効になるのですよ」
アイシクルは氷のランスを振り回して、バルワーズ当主の首元につきつける。
「ひい・・・・・」
バルワーズは、腰をぬかして、その場に尻餅をつく。
「この子の心の痛み、思い知れだにゃ!アイスブレス!!!」
怒ったフェンリルは、バルワーズを氷づけにした。
生きたまま、氷の炎で焼かれるようなもの。身を切るような痛みがたえずつきまとう。
「ひいいい、痛い、痛い!!」
「ファイアブレス!!」
フェンリルは、剥製にされた者たちに炎のブレスを吐いていく。
「うわあああ、私のコレクションがあああ」
「灰に、戻してやるのにゃ!こんな残酷なこと許さないのにゃ!!!」

しばらくして、ティエリアがやってきた。
「バルワーズ当主。種族協定違法による、剥製の所持、及び売買などで、あなたは貴族連盟から追放されるそうです」
氷づけになったままのバルワーズに、ティエリアは冷たく告げる。
「エドワード・バルワーズ。種族協定違反、剥製の所持、密売、墓からの遺体盗難・・・・さまざまな件で、亜種族から逮捕状の推奨が出ている。貴族連盟にいる限り、逮捕はでなかったが、貴族連盟から追放されたお前にもう庇護はない。逮捕するであります!」
巡査は、バルワーズに手錠をかけ、そのままバルワーズは本国の警察署に送られて、種族との協和の点から、終身刑が下されることになる。

フェンリルは、口で器用に檻の扉をあけた。
「ほら、もう自由だにゃ!」
「ありがとう!!」
フェザーキャッティは、マロンと名乗った。
すぐに、保護監察官がきて、保護され、住まう森に返されることになった。

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