許されたい「石榴の瞳」







時計のアラームがなり、朝をつげる。
ライルは苛立たしげにそれをとめて、制服に着替えた。
ティエリアも着替える。
「朝食、一緒にいくだろ?」
「はい・・・・」
ティエリアの顔は憔悴しきっていた。同じようにライルも。
このままでは、二人して破滅してしまうだけだ。
ティエリアも、逃げ出せばいいのに。なら、監禁することもできないし、刹那に助けを求めれば刹那は必ず助けてくれるだろう。

ティエリアは、時折体をふらつかせていた。
そのうち倒れるかもな。
そんなことを、他人のように考える。実際他人なんだから。

食堂にいくと、刹那がティエリアを待っていた。
「ティエリア。大丈夫か?俺のところに来い」
「大丈夫だよ、刹那。僕は、大丈夫」
三人は、固まって朝食をとった。
刹那の視線はライルに注がれ、それから心配そうにティエリアに注がれる。
「いっとくけど、俺の部屋で生活するの決めたのはティエリアだから。俺のせいじゃねーよ」
「・・・・・・・・」
刹那は無言だった。
ライルと争いたくないのだ。
まだ、アニューを殺したことで二人はには超えられない壁が存在する。もしくは、奈落へと続く崖か。

トレイを片付けるために立ち上がった刹那。それに続くティエリア。
ティエリアのトレイの中身はたくさん残されていた。
いつもは残すなとうるさい刹那も、最近は何も言わない。
刹那は、ティエリアの腕を掴んでライルを置いてかけだした。
「なんだよ。そういしたいなら、最初からしてろよ」
舌打ちして、自分もトレイを片付ける。

「傷が・・・」
刹那によって衣服を脱がされ、鬱血したなまなましい情交のあとに、刹那は目をそらしたが、背中にできた傷跡に、眉をよせて、消毒すると、ガーゼをあてた。
傷は思ったよりも深かった。そのまま包帯を巻く。
「なぁ。なんで、ライルの側にいるんだ。帰ってこい。ライルは、お前を傷つけるだけだ」
「いいんだ。それでも、僕はライルの側にいる」
「贖罪、なのか?彼女への」
「それもある。でも・・・本当の理由は、僕にも分からない」
「こんな酷いことをされても、側にいたいのか?」
「いなければ、いけないと思った。僕にしかできないから」
「ティエリア。これ以上酷くなったら、無理やりでも引き離すからな」
「承知した」
ティエリアは、刹那の部屋を出て、ライルの部屋に戻った。
「なんだ。戻ってきたのか、教官殿」
「戻ってくるのに、理由が必要ですか?」
「さぁな」
ライルはまた煙草を吸っていた。
ティエリアは、ライルから新しい煙草を受け取ると、顔を近づけて煙草から直接火をもらい、煙草を吸った。
「こんな荒れた教官殿の姿知ってるの、俺だけだろうなぁ」
「知ることができて、満足ですか」
「少しはね」
ライルは煙草をもみ消すと、ティエリアをベッドに押し倒した。
「やめて。まだ、昨日の傷が」
「うるせーよ」
制服を脱がせていくと、包帯が目に入った。
「これは?」
「刹那に、してもらった」
「昨日の傷、そんなに深かった?」
少しだけ、チクリとライルの胸が痛んだ。
「少し、だけ」

「でも、やることはできるだろう?」
ライルは、また獣みたいにティエリアを犯した。

いつまで、こんな関係が続くのだろう。
ティエリアは、押し殺した声で、でも甘く啼いた。
「無理やりされても、あんた感じるの?」
「あああ・・・・・」

ライルは、包帯ごしに天使の紋章にキスをする。
「ごめんな」
はじめて、ライルが謝った。
ティエリアは、眠っていた。
ここ最近、眠ることが多くなったと思う。食事もまともにとっていない。
まるで、生きることを否定するかのように眠り続ける天使。
ライルは、石榴の瞳が見たいと思った。
でも、ティエリアは眠ったままだった。
 



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