このお話は、「神に見捨てられた天使」の続編にくるお話です。
まず先にそちらをお読みになってからご覧下さい。
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夢を続けようか。
天使たちはまた夢をみる。夢の続きが知りたいと、天使たちは望んだ。
数百年先の未来にたった一人孤独に取り残されたティエリアは、ニールを再生させた。でも、それは天使たちの夢だった。ティエリアの願いは叶わなかったのだ。天使たちが、かわりに夢をみてニールを、その想いと魂を形にしていた。
地上の天使と歌われるティエリアは、ニールの再生に失敗した。その続きを、天使が夢を見た。夢は現実となり、幻影の幻を真実にした。
ニールは世界にこうして再生された。そして再びティエリアと愛し合った。
でも、運命はどこまでも哀しいもの。幸せになる二人を引き裂くかのように、ティエリアの寿命は迫っていた。
だから、再びニールを作ろうとティエリアは思い立ったのだ。
でも、それは失敗した。
残されたティエリアは、天使たちが見る夢で作られた、ニールと出会い、結婚式まであげてそしてウェディング
ドレス姿のまま、この世を去った。
天使たちの夢はそれでも続いていた。ニールが望むなら、そのまま生き続けることもできただろう。
でも、ニールはその選択をしなかった。
二人でみたグランジェ3の流星を見て、そしてティエリアの棺を自分が眠る宇宙に流した。それはティエリアの
たった一つの遺言でもあった。
そして、ニールは宇宙へとダブルオーライザーのコックピットをあけてあてもなく漂う。
やがて、地球が見える場所まで流れ着いて、ニールはいつかのように、地球に向かって手を伸ばして、そして
光となって消えていく。
エメラルドの蝶がいつもニールの周りを舞っていた。それは、天使たちの夢の証。
エメラルドの光となって、ぽっぽっと、宇宙に溶けていくニールは光に支配された空間で、翼が羽ばたく音を聞いた。
「ああ、地上の天使ってそういう意味だったんだな。なぁ、その翼俺にもくれよ。その翼があれば、いつでもお前の側に飛んでいける、そんな気がするんだ」
ニールは腕を伸ばした。地球に向かって伸ばしていた腕を、光に向かって。
天使の白い羽毛が舞い落ちる。
静寂の中、しっかりとニールはその腕を握り、そして世界から完全に消えた。
天使たちはそこで夢見ることをやめた。ニールの存在が消えたから、もう夢を見る必要がなくなったのだ。でも、天使たちは望んだ。この夢の続きを見たいと。
二人の結末は、一度は終わった。
再び死という形で、今度はティエリアが先立ち、それを追う形でニールもまた天使の夢でできた体を宇宙に溶かして消えてしまった。
それが二人が描いた再会の結末。
わずか1週間にも満たなかった、天使たちの夢。
あまりにも儚すぎて、涙が零れそうだった。
ティエリアの見た心の愛が描いた幻想、幻、天使たちの夢という名のニールは、ティエリアを愛し、そしてティエリアと共にこの世界から消えた。
それからまた、数百年の静かなる時間が流れた。
人々は変わらず争いを繰り返し、そして宇宙へと進出していく。もう母なる惑星であった地球に生きる人間は少ない。皆、未来を求めて宇宙の開拓されたコロニーへと進出していった。
人類は宇宙で生きる。
夢の続きを見ようか。
ニールは目をあけた。
「ああ、まだいてくれるのか。ありがとな、ティエリア」
自分を攫っていった、光の中翼を広げ、腕を伸ばしてくれたティエリア。
ティエリアはニールの魂に寄り添いそしてこういった。
「また、いつか会いましょう。それまで、ずっとこうしていたい」
世界に溶けてしまった二人は、ずっと一緒だった。眠り続けながらも、寄り添い合っていた。
それが二人の選んだ結末。
天使たちが見た夢の終わり。
でも、天使たちが望んだ夢の結末はこんな哀しい終わりじゃない。
二人は結ばれ、そして愛しあいながら生きるはずだった。
死に別れるはずではなかった。ましてや、今度は置いていったほうが先立ちされるなんて。
こんなの望んではいなかった。
たくさんの天使が嘆いた。
じゃあ、夢の続きを見ますか?
はい いいえ
その選択肢が天使たちの前に与えられた。ティエリアとニールはただ眠り、そしてまた転生の輪に入ることで引き裂かれてしまった。
夢の続きを見ますか?
はい いいえ
貴婦人のように美しい、天使の中でも四大天使、公爵の地位をもつ彼女は、「はい」を選んだ。
「夢の続きをみましょう。夢ではなく、世界で」
まどろむ天使たちは歌を歌う。
また、あの夢の続きが見られるのだと。
嬉しくて、喜んでいるのだ。
さぁ、夢の続きをはじめよう。
答えは選ばれた。
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