「えーと、転校生を紹介いたします。エドワール女学院から転校してきた、ティエリア・アーデさんです」 ざわざわと、クラスがざわめく。 ニールのクラスに、時期外れの転校生がやってきた。 それは誰でもない、ニールの愛しいティエリア。 「ティエリア・アーデと申します。以後、よろしく」 「すっげーエドワール女学院っていったら頭よいお嬢様学校じゃねぇか」 ニールの友人の一人が、ティエリアの美貌に驚く。 「すっげー美人。さっそくアタックだ!」 友人は、授業が終わったあとにアタックして、さっそく砕けた。粉々に。 ティエリアは、すぐに学校の人気者になった。男も女も関係なしに友人ができた。 「びっくりした。転校してくるなんて」 「はい・・・・あなたの、学校に転校したくて。もっと一緒にいたいから」 ピューと、周りから口笛が鳴る。 二人は、すぐに恋人同士であるとされてしまった。 実際は、まだお友達なのだけど。 「嬉しい。すっごく嬉しい・・・・」 「あなたからもらった忘れ名草の鉢植え、今日も綺麗に咲いていましたよ」 「そっかー。他にも花あげようか」 「いいの?」 「あ、うん。俺実家が花屋なんだよ」 「嬉しい。また、なにかちょうだい」 二人は、こうして友人といいながらまるで恋人同士のように、学校の中から、休みの外まで一緒に遊ぶようになっていた。 アレルヤとは何度か会ったけれど、昔のように一緒にいて胸がときめかないようになっていた。 ニールと一緒にいると、いつも胸はドキドキをと高鳴っている。 アレルヤは、本当に婚約解消を言い出したらしい。でも、親が却下した。二人は、まだ婚約者同士だった。 「やぁ、ティエリア・・・」 「いらっしゃい、アレルヤ・・・」 自宅の部屋にアレルヤを招きいれ、ティエリアは今までと変わりない態度で接する。 「ごめんね。僕のわがままだって、両親が納得してくれなくて・・・・君からも、婚約解消を言ってみてくれないかな・・・・」 「それは・・・ごめんなさい、アレルヤ、アレルヤ。あなたをこんなにも傷つけている・・・」 ティエリアはアレルヤの腕の中で泣いた。 「ニールとはうまくいってる?」 「うん」 「これ、かわいいね。ニールにもらったの?」 小さなテディベアを手に持って、アレルヤはティエリアの涙を手で拭い去りながら、呟いた。 「僕も、ティエリアのこと大好きだけど・・・・でもね、ティエリアのことが大切だから。ティエリアの幸せを壊したくない」 「ごめんなさい、ごめんなさい・・・・」 アレルヤが帰ったその日、ティエリアは決心して父に話しかけた。 「お父様」 「どうしたんだい、ティエリア」 「アレルヤとの婚約を解消させてください」 父は、黙ったあと、ティエリアの頬を叩いた。 「お父様!?」 「そんなこと、今更できると思っているのか、お前は!もう財政業界にも発表してしまったんだぞ!会社はすでに合併した!」 「でも・・・・」 「いい子だから、アレルヤと結婚しなさい」 「お父様!!」 父は、それきり何も言わず立ち去ってしまった。 「私が、私が全て悪いの・・・・・」 「いいえ、あなたは悪くない」 12枚の白い翼がふわりと広がり、涙を流し嗚咽し続けるティエリアを包み込んだ。 「ティエリア・・・・」 12枚の純白の翼を持った天使がまた降臨した。石榴の瞳、紫紺の髪。自分そっくりの天使は、ティエリアを翼で優しく包み込んで、そしてティエリアの手を握る。 「契約、しましょう?」 「契約?」 「そう。ニールと必ず幸せになるための契約を」 「私は、何をすればいいの?」 「告白すればいい。ニールに。それだけ」 「それが、契約?」 「そう。それが私とあなたの契約」 「ティエリア」はまた消えてしまった。何枚もの白い羽毛を残して。 **************************** 水面は人間世界を映しながら、ゆるやかに時を刻んでいく。 夢の続きを見ますか? はい いいえ また現れた文章に、足を組んでいたジブリールは白い羽毛で「はい」の選択肢に優しく触れた。 夢の続きはまだ終わらない。 まだ、夢は続いている。 NEXT |