それから数日がたった。 南の島は平和だった。 ルージュ夫人も侯爵も、子供たちにまじって、真剣に遊ぶ。 「あらら、いけない、あなた、まってえええ」 「あははは、ルージュ、捕まえてごらーん」 二人でパシャパシャ波際の砂浜をかけていく二人を邪魔する者はいなかった。 「人魚姫が、ここじゃ出るらしいぜ」 「ジュゴンでしょう?」 「本物の人魚」 「ニールの嘘つき。でも、ここらの伝説ではジュゴンではなく人魚姫が出るって伝説は確かにあるね」 ニールが言い出した言葉に、最初ティエリアはジュゴンを思い出したのだが、リジェネが確かにここらの地方ではジュゴンではない本物の人魚姫が出る伝説があると話した。 「へー。あってみてぇ」 「アニューに殺されるぞ、ライル」 「うわ、兄さん痛いとこつくね」 刹那はハム仮面を退治してから、晴れやかだった。 「人魚か」 「ちょうど、この島の向こう側に洞窟があるんだ。どうだ、そこまでいってみない?」 「でも・・・・大丈夫?母上から、あそこには近づくなって」 「大丈夫だって。母さん、父さんといちゃついてるし。ばれても、そんなに怒られないよ」 「そうだね。確か、去年そこでリジェネ天然の真珠拾ってきて僕にくれたんだよね。あれは嬉しかったなぁ」 キランと、ニールの目が耀く。もういくきばりばりだ。 「いくぞ!競争だ!」 一番最初についたのは、なんと刹那だった。 パシャン。 まだ誰もついていないはずなのに、人の声がした。 「誰だ!」 「わ、私は・・・・・」 それは、運命の出会いだった。 金色の長い髪の乙女。 刹那がたどり着いたその洞窟は、ティエリアとリジェネが言ってた洞窟とは違った。 なので、いつまでたっても刹那は帰ってこなかった。 心配したみんなで探しまわると、帰ってきた刹那は、なんと人魚を連れて帰ってきたのだ。 人魚とは揶揄で、現地の女性だった。洞窟に天然真珠をとりにきて、足をくじいたらしい。 刹那は、どこかフェルトににたその女性に何処までも優しく接していた。 「あれかな。刹那、南の海で思いがけない恋ってやつか」 手当てをされ、どの女性は家が遠いこともあり、今日一日は別荘で世話になりことになった。両親も承諾してくれた。 「刹那さん・・・・ありがとう・・・・」 金色の髪に蒼い瞳の美しい女性は、ラハムと名乗った。 どこかで聞き覚えのある韻だが、刹那には分からなかった。気づいていたら、その場で銃で撃ち殺していたのに。 真夜中になり、刹那は寝苦しさを覚えた。 ラハムという現地の女性が、部屋を抜け出して刹那の部屋のベッドで、刹那を押し倒していたのだ。 「!?」 「少年・・・・・はぁはぁ。気づかれないなんて・・・・はぁはぁ」 ズルリとマスクをはぎとり、全身の皮をはいだハム仮面は、こうして夜に刹那をベッドに押し倒すという念願の思いをなしとげることができた。 「き、貴様はそれでも人間か!皮をかぶって、どうして胸ができる!腰がくびれる!身長も違ったぞ!完全に、女性だった!!」 「はぁはぁ。ブシ仮面の秘儀女人化けの術。はぁはぁはぁはぁ・・・・・うう、呼吸が胸のトキメキで止まりそうだ!」 「どけーーー!!」 「いやだーーー!!!」 「このド変態ーー!!!」 「そうだ私は変態だーーー!!」 認めやがった、こいつ。いや、前からか。 刹那は股間を蹴り上げたが、もうそこはぎったぎったに硬くなっていた。 ゴンと額をぶつけてやったが、ハム仮面は涙を流しながらも耐える。 「俺は・・・・ここで、終わるのか」 俺の貞操が。ここで終わるのか。俺の人生が。 マリナ先生の歌声が聞こえてきた。 「変われなかった俺のかわりに、お前がかわれ、刹那」 脳裏で、ロックオンがそう寂しげに呟いて、消えた。 「俺は、こんなところで終わらない!!まだ、終われない!!」 NEXT |