「じゃあ、みんなで初詣にいくか〜」 ロックオンの提案で、せっかく着物をきたので、皆で神社に初詣にいくことになった。 人が行き交う神社。 「大丈夫か?下駄履きなれないだろう。足痛くないか?」 「あ・・・・ちょっと、痛いです・・・・」 振袖をきたティエリアを振り返って、ロックオンはティエリアと手をしっかり繋いだ。 「迷うなよ」 「あ、はい・・・」 ティエリアは、少しだけ白い頬を染めて俯きながら、着物というものが似合っているロックオンをちらりと横目で見てから、ため息をついた。 どうして、彼はこんなに優しいのだろうか。 恋人であるから、というのもあるけれど。 誰にでも優しいロックオン。でも、ティエリアには特別に甘く優しくなる。 女扱いされるのが、最初は嫌いだった。中性という、あやふやな性別に生まれてきたけれど、自我は確かに男性として根付いたはずだった。そう思っていた。 でも、彼に恋をしてしまった。人を愛するということを知ってしまった。 ヴェーダは、人を愛すれば不幸が訪れると言っていた。 でも、いいんだ。 僕は、彼を愛しているから。こんなにも。 チャリンチャリンと、ロックオン、アレルヤ、刹那が財布から小銭を賽銭箱に投げ入れる。 ティエリアは、自分の財布をあけて・・・一万円札を何枚か取り出すと、それをハラリと賽銭箱にいれた。 隣にいたアレルヤも刹那も、そしてロックオンまでぎょっとした顔になって、見れば周囲も驚いてティエリアを注目しているではないか。 ティエリアは恥ずかしくなって、ロックオンの背中に隠れて、彼の着物をぎゅっと握った。 「ぼ、僕は、な、何かミスでもしましたか・・・・」 小声で呟く。 何か大きなミスでもおかしたのだろうか。 確か、賽銭箱とはお金を投げ入れ、願いをかけるもののはず。 何がいけなかったのだろうか。 「なんでもねーよ。ちょっと、投げ入れたお金が大きかっただけだから」 ひょいっと、ロックオンがティエリアを肩に乗せて、歩きだす。 「あ、あの!!」 「足痛いんだろ?無理すんな。タクシーで帰ろうぜ・・・」 「あ・・・・大丈夫、自分で歩けますから!!」 ティエリアは、慌ててロックオンの肩から降りた。 七五三の子供ではあるまいに。親に肩に乗せられている気分で、何より注目されるのが恥ずかしくて、ティエリアはロックオンを置いてかけ出した。 「おい、ティエリア!!」 「なんでも・・ありません!!」 ティエリアは、神社の裏の境内によりかかり、ため息を零す。 いつも、彼の足手まといになる。そんな自分がうっとうしい。 もっと、彼に相応しい人間になりたい。 「あなたに相応しい人間になりたい・・・そう願ったのに」 ぽつりと呟いて、下駄で靴擦れした踵を見る。 「いつも、あなたの足手まといになってる。はぁ・・・・」 「そんなことねーって」 ふわりと後ろから抱きかかえられて、ティエリアはバランスを崩した。 「ロックオン!?・・・・んあっ」 顔を持ち上げられて、そのまま後ろからきたロックオンに深く唇を塞がれた。 「あっ」 かりっと耳をかじられて、ぴくんと体が一瞬痙攣する。 「足手まといなんかじゃねーよ。一緒にいたい。そう俺は願った。お前は?」 「ぼ、僕は・・・」 抱きすくめられて、その暖かい体温に眩暈がしそうだった。 「わ、私も、一緒にいたいとも、願い、ました・・・・」 「上出来」 ロックオンは、ティエリアを抱き上げると、そのまま神社の階段を降り始める。 「あの」 「甘えとけ。足、あとでみてやるから」 「はい・・・」 ティエリアは甘いため息をこぼして、自分を抱きかかえるロックオンに上半身をなんとか起き上がらせ、耳元で囁いた。 「愛してます・・・・愛して・・・だめ、あなたのせいで体が疼くの・・・・」 ロックオンはヒニルに笑って、真っ赤になってしまったティエリアを抱き上げてタクシーをよぶと、一緒に乗って、刹那の家には向かわずに、高級ホテル街へとタクシーを向けるのであった。 NEXT |