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「ふ、ふふふふ・・・・・できた」
なぜかフラスコとビーカを手に、ティエリアは真っ黒な笑いを浮かべた。いや、見た目はとても爽やかに笑っているのだけど、なぜか白衣だったし、まるで怪しい科学者が新しい薬品を開発したときの「ぐふふふ・・」って、定番の怪しさだ。
くるりと背中をむける。
するとそこにはジャボテンダーをいつものようにかわいくしょっていた。紐でくくりつけて、これは全部アレルヤがしてくれた。
前髪と横髪は邪魔にならなうように花模様のヘアピンで右サイド側に固定してある。
それもアレルヤがしてくれた。
アレルヤはけっこう器用だ。
たまに前髪が邪魔なので、こんな風にヘアピンで固定しているときがある。
花模様なのは、何気にかわいいもの好きなアレルヤらしいといえばそうかもしれない。マルチーズのヘアピンを勧められたが流石に断った。
「できました!」
背中のジャボテンダーは喜色満面のティエリアの言葉にも無言。
まぁ生きていないんだから仕方ない。
「ジャボテンダーさん、できましたよ!」
ジャボテンダーはやっぱり無言だった。
「いやぁ、そんなに褒められると照れます!」
いや、誰も褒めてないから。
そもそもジャボテンダーの言葉が分かるらしい。ジャボテンダー、いきてないんだけどな。
おまけに煤でちょっと黒くなってる。
白衣も汚れているが、ティエリアは気にしない。
刹那の家のキッチンを貸切状態にしたティエリア。
手は包丁で切ったりして、絆創膏がいくつもはられてある。
料理が大の苦手のティエリアは、それでもがんばった。
好きな人に、日本の正月の定番メニューである「おせち」というものを食べてもらいたい、ただその一心で。
「刹那、できたぞ」
「了解した。片付ける」
キッチンに入ってきた刹那に報告するティエリア。刹那は、できあがった物体も、そしてティエリアの姿にも驚かず、黙々と汚れたまるで爆発がおこった後のようなキッチンを片付けた。
「がんばったね。大丈夫、きっとうまくいくよ」
リビングルームでファッション雑誌を読んでいたアレルヤが、ティエリアの隣に立った。
そして、コツンとティエリアと額をあわせて。
「がんばってね!」
「うっす!!!」
ティエリアは、人格が変わってしまったような体育会系のノリの返事を返す。
おかしくておかして、片付けていた刹那はテーブルを布巾で磨き上げながら、ドンドンと片手でテーブルを叩いて、目に半分涙を浮かべて笑い死にしそうだ。あくまで冷静を装っているのだが、ティエリアがジャボテンダーに語りかけていたり面白おかしく調理している場面を一人で見守っていた刹那。何度酸素が足りないと思ったことか・・・・・。
「できは万全だジャボ!」
ジャボテンダーが降臨した。ハイテンションのあまり、ジャボテンダー語になったティエリア。
アレルヤは、にこりと微笑む。
ティエリアとお揃いの花のヘアピンで前髪を留めているアレルヤは、珍しく両目を出している。
そして、アレルヤは昨日遅くまでバカ騒ぎして、深酒をしてしまい寝過ごしてしまっているロックオンを起こしにいった。
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「ロックオン、起きてください、起きてください」
そっとまだ寝ているロックオンを揺さぶる。
「うーー、ティエリア、ラブいぜ〜〜〜」
「ぎゃああああ!!!」
ロックオンにはぐされて、アレルヤは思い切り投げ飛ばした。
「もぎゃああああああ!!」
力は一番あるアレルヤに思い切り投げ飛ばされて、ロックオンの首はグキっと変な音をたてた。
「あ、すみません、大丈夫ですかロックオン」
「おう。大丈夫だ・・・。寝ぼけてた・・・・なんだ、かわいいじゃんかアレルヤ。かわいーかわいー」
首をグキグキ鳴らして、頭を撫でてくるロックオン。
「あ、えと・・・」
なでなでと、頭を撫でられ続ける。
ロックオンの過度のスキンシップにあまり慣れていないアレルヤは紅くなって、ブンブンと頭を振って、ロックオンに着替えを促して、それから部屋の外から再び声をかけた。
「おせちできましたよ。みんなで食べましょう。ティエリアがあなたのためにがんばって作りましたよ。ただし、僕と刹那とティエリアの分は、刹那が作ってくれましたけど」
その言葉に、ロックオンは凍りついた。
ピキーンと。
ちちちちっと、窓の外か小鳥の鳴き声が聞こえた。
柔らかな日差しがフローリングの床を照らす。
氷の彫刻となったロックオンは、すぐに自己解凍して着替えをすますと、アレルヤと一緒にキッチンに降りてきた。
「あははは・・・・今年も俺は・・・・これで終わりか」
すでに遠い目になっていた。
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