血と聖水ウィンド「勝敗を決する時」







「ミーと決着するザマス!」
「うざいのにゃお前!!」
フェンリルがたたたたっと走り出して、がぶりと偽ネイ(仮)の頭にかじりついた。
「ヒーヒーヒーヒー!!大怪我したザマス!!不意打ちとは卑怯ザマス!!」
偽ネイ(仮)は血の噴き出す頭を抱えてもがいている。
なんとか傷を再生させて、血でできた剣を取り出すと、ガタガタいいながら剣を構える。あまりのへっぴり腰に、騎士団の騎士たちが同情した。
「け、剣を構えると、武者震いが、起きるのザマス。決して、怖いから震えているわけじゃないザマス!!」

ティエリアとロックオンは、もはや偽ネイ(仮)は無視して二人の世界に入っていた。
「だめだって、ここじゃ」
「いいじゃんか」
「あ、あ」
「もっと啼いて?」

それを見て、また鼻血を垂らす偽ネイ(仮)
「頑張ってーリエット様!」
「リエット頑張れー・・・・・」
ムーンリラ皇女と女装したウエマはポンポンを持って応援の踊りをずっと続けていた。ちなみに帝国騎士なだけあって、体がごついウエマは脛毛もびっちり生えており、女装が気持ち悪いことこの上ない。
「あっははは、ウエマ最高。だっせー。ムーンリラ、応援なんて適当でいいからな」

「陛下、お茶をおもちしました」
「うむ」
ムーンリル皇帝は、もうどうでもよくなって、テーブルと椅子を女官にセットさせると、グリーンティーを飲んで、せんべいをかじりだした。
騎士たちも同じように皇帝と同じテーブルについて、雑談を交わしながらせんべいを食べている。
「陛下、このせんべい美味いですね」
「陛下、この後、宰相殿下との鶏小屋掃除、あれはなんの意味があるのでしょう。何ゆえ、皇帝陛下が自ら鶏小屋の掃除など・・・」
「ああ。ポッポちゃんは宰相のムーンリーザと一緒に、夏祭りのひよこすくいですくったから。ペットの世話は自分でしないと」
「はぁ。ポッポちゃんの役職が、右大臣であるのはなぜでしょう」
「ああ。ポッポちゃんをないがしろにする連中がおおいのを防ぐためだ」
「左大臣はちなみに誰ですか?」
「金魚のブルーハワイちゃん。これも、ムーンリーザと夏祭りで金魚すくいですくった金魚。ペットだ」
「はぁ。陛下のペットとされているあのフェザーキャッティのフェルティアは?」
「ああ。私の恋人だ」
「陛下、従姉妹で婚約者であられるムーンマリー姫の存在は!」
「うーん。ムーンマリーはなぁ。コケコッコーって泣かないしニャーともいわないし。ポッポちゃんとブルーハワイちゃん以下かなぁ」
騎士たちは耳打ちをはじめる。
「陛下は大変お美しいが・・・・趣味が、なぁ」
「ペットの趣味もなぁ・・・・・」
ムーンリル皇帝は、騎士たちの言葉が聞こえているが、気にせずせんべいを食べ続ける。

「エーテルイーター起動、ザマス、起動中ザマス、発電中ザマス」
血でできた自転車を再び出して必死で漕ぎ出す偽ネイ(仮)
もうみんな、自分勝手になっている。
リエットは、唇を吊り上げた。
「お前、ネイと名乗ったからには責任とって・・・・3億リラ返せええ!!!」
そこかよ!
ロックオンとティエリアは、内心で激しくつっこんでいた。
「返せ、返せ!!!」
がくがくと偽ネイ(仮)を揺さぶるリエット。
「そ、そんな大金を借りた覚えはないザマス!!ミーの全財産は自慢ザマスが、15リラザマス!!」
うわー、大貧乏〜。
その場にいた誰もがおもった。
15リラ、15円しか所持していないらしい。
「働く場所がなくって、鶏のエサを食べる日々・・・・ああ、ネイなのになんて寒い状態なんザマショ!」
「お前かー!お前が、コッコちゃんのエサを盗んで食べていたのか!ええい、手打ちにしてくれる!!」
宝石で飾られた皇帝の剣を抜いたムーンリルに、偽ネイ(仮)は慌てて逃げ出した。追い掛け回す少年皇帝として名高い美しいムーンリル皇帝は、頭に血が上っているようだった。この皇帝、美しくとても儚く見えるが、実はかなりのアホで有名である。だが、皇帝の手腕は確かで、この200年ずっと在位してその地位が傾いたことは一度としてなかった。

「キャアアア!鶏のエサ盗んでごめんなさいい!!!ミーも、ミーもひもじいのザマス!!」
偽ネイ(仮)は、全員が油断しきっているのを見て、心の中でほくそえんだ。
「地獄のダンスをくらえザマス!右に(_´Д`) アイーン 左に(´Д`_) アイーン 」
みんな、油断していた。
「右に(_´Д`) アイーン 左に(´Д`_) アイーン 」
「右に(_´Д`) アイーン 左に(´Д`_) アイーン 」
「右に(_´Д`) アイーン 左に(´Д`_) アイーン 」
「右に(_´Д`) アイーン 左に(´Д`_) アイーン 」
ロックオンもティエリアも、リエットもウエマも、ムーンリル皇帝からムーンリラ皇女それに騎士団の騎士たちまでアホになって踊り出す。
偽ネイ(仮)は笑った。
「はーっはっはは。ミーの勝利ザマス!!!」


NEXT