血と聖水スカイ「オートマティックバトルドールも逃げ出す」







夜が明け、いよいよエゼキアル失敗作の退治に乗り出すことになった。
刹那はリジェネと、ロックオンはティエリアと、ルシフェールはアクラシエルとそれぞれペアになって戦闘することを選んだ。

ブラディカがいる場所は、人間がかつて住んでいた貴族の館だった。
そこまで、全員使い魔に乗って飛行して移動した。
館の前にくると、白骨化した人間の骨がいくつもあった。
古い時代のも紛れていて、ブラディカの餌食になったものがどれだかまでは分からなかった。そもそも、エゼキアルは吸血行為を行わないヴァンパイアとも呼べないような種である。
そのできそこはないはフォールダウンし、吸血を繰り返し、殺戮に快楽を覚えるヴァンパイアとなる。
館からは、正面から乗り込んだ。
「オートマティックバトルドールか・・・」
うじゃうじゃと、奥から湧き上がってくる、自動戦闘人形は、ヴァンパイアの種族魔法、血によって生み出される怪物ともいえるような不死身に近い化け物だ。
メイドの格好をしているが、それがオートマティックバトルドールたちの姿であり、手を斧にしたり剣にしたり、顎を外して牙を伸ばして噛み付いてきたり、霧になったり、手足を6本にして虫のように這い回ったり・・・・とにかく、最初の見た目はただの美しい少女なのだが、戦闘に突入すると見る影もない化け物になる。

「血と聖水の名において、アーメン!!」
ティエリアは、聖水をオートマティックバトルドールたちに浴びせる。
「ひぎゃあああ」
「いぎゃあああああ」
凄まじい悲鳴をあげて、オートマティックバトルドールは灰になっていく。
もとは、主人であるヴァンパイアの血肉から作られているので、ヴァンパイアと同じで銀や聖水に弱い。
死ねば、灰になる。
「血と聖水の名においてアーメン」
刹那は、ビームサーベルを取り出して、次々とオートマティックバトルドールたちの首を刎ねていく。首はすぐに再生する。
その後を、リジェネが続く。
「いっけー、ブッラディイーター!!」
リジェネの血に潜む怪物が、咆哮する。
血の刃となって、刹那が切り倒していくオートマティックバトルドールを噛み砕き、飲み込む。
「グェップ。ぺっ」
「ちょ、下品!!」
リジェネが怒った。
でも、ブラッディイーターは知ったことではないと、口からオートマティックバトルドールの髪やら衣服やら、吸収できないものをぺっぺっぺと吐いていく。
「・・・・・・・・貰いゲロ。おえええ」
「ちょ、アクラ!!」
アクラシエルはそれを見て、ついつい貰いゲロをしてしまった。
といっても、吐いたのはオリハルコンでできた剣だ。
それは吐かれた瞬間に大きくなり、実物サイズになった。
「ロックオン!!」
「ちょ、俺も貰いゲロ!おええええ」
ティエリアはこけた。
ロックオンの頭の上にいたフェンリルも、顔を青ざめた。
「僕も貰いゲロだにゃ。おえええええええええ」
ロックオンの頭にびちゃびちゃと朝食を吐いた」
「ぎゃあああああ!!ゲロかけんなああああ!!」
ロックオンは飛び上がって、あたふたと慌てている。
「じょ、浄化の精霊よ、清めたまえ!」
ティエリアが、とりあえず貰いゲロをしたロックオンとフェンリルのゲロの始末をする羽目になった。
「げ、ゲロだ!撤退しろ!!」
オートマティックバトルドールたちが、慌てて逃げていく。

「ふう。俺のゲロの勝利だぜ!」
「ゲロ吐いて格好つけないでください。かっこ悪いです」
「とほほほほ」
「にゃーっはっはっは、主に怒られてやんの。あ。催したにゃ。イヤン、だにゃ」
「へ?」
ブリ。
最初はおならかと、ロックオンはなんだ、おならかと笑った。
でも、頭の上に何か重量のあるものが乗っかった。
「ちょ、ちょ、フェンリル!!」
ティエリアは青ざめている。
刹那とリジェネも真っ青だ。
「え?俺どうかした?アクラ、俺なんか変?」
「いや、普通だ」
「だよなぁ。みんなおかしな顔してるぜ。俺のかっこよさに、痺れたのかな」
「ちょ、ネイ、ほんまあんた神様?ただのアホちゃうの?頭のうえに、ウンコ乗ってンで」
「えー?そんなはずねーだろ・・・・・ぎゃああああああ」
頭に手をやって、そこにできたてほやほやのフェンリルのうんこを手で掴んで、ロックオンは焦った。
「洗面所どこだー!手と頭あらわねーと!」
「そんなの、ありませんよ」
「ないない」
「ここ、敵地待っただ中だから」
「ちょ、浄化の精霊!!」
浄化の精霊は、また呼び出されてくたびれた顔をしていた。
「こ、このウンコ清めてくれ!!」
ロックオンの言葉通り、浄化の精霊はウンコを清めた。
ウンコをなくして綺麗にするのではなく、ウンコ自体を清めたのだ。綺麗なツヤツヤのウンコができあがった。
「ネイ。く、あははははは。バカだろ、ネイ!バカだ!!」
アクラシエルが、美貌からは考えもつかない大笑いをして、地面を叩いている。
ツボにはまったらしい。
「うんこくさいよ、ネイ。こっちこんといてな。アクラにも近寄らんといて。匂いうつるから。俺が守る約束してん。ネイのくさい匂いからも守らんと!」
ルシフェールは、黒い皮膜翼を広げて風で匂いを向こう側に返す。
「くっせ!近寄るな、ロックオン!」
リジェネも逃げ出す。
「同感」
刹那も逃げ出した。
「なぁ。ティエリアは、どんな俺でも愛してくれる・・・・よな?」
「いや・・・・正直、ウンコ頭に乗せたあなたは・・・・愛せません!!」
涙を浮かべて先に進んでいくティエリアに、ロックオンは叫んだ。
「NO!!カムバーーーック!!!」
みんな先に進む。
ウンコかましたフェンリルは、知らん顔で自分だけ浄化の精霊を呼び出して体を綺麗にしてもらってティエリアの後をとてててと短い足で走っていく。
残されたのは、頭にほやほやのツルツルとした新鮮なウンコを乗せたロックオンと、アクラシエルとルシフェール。
「さて、俺たちもいこか」
「カムバーック!!ちょ、どうにかしてくれ!!アクラ、これなんとかしてくれー!!無の力で!!」
オリハルコンの剣を握って、アクラは空いた右手で呪文を唱えると、その力をロックオンの頭に向ける。
空間が捻じ曲がるほどの力と一緒にウンコと一緒に髪の毛まで消えた。
「これで、問題はない」
「俺の髪がーーー!!NO!ハゲになったー!!!」
「ぎゃっはっはっは、ネイ、ちょ、酸素不足になるやないか!いくで、アクラ!」
ルシフェールはアクラシエルを肩に担ぎあげると、ロックオンを残して皆を追いかけていく。
「はははは・・・・・俺、どうしよう」
頭のてっぺんがはげたロックオンは、一人泣きながら、腰に手を当てて爽快に笑っていた。
精霊であるフェンリルにオシッコを足にかけられたことはあるが、ウンコを頭の上にされたのは流石にはじめてだった。ホームにはちゃんとトイレがある。

「みんな、待ってくれ〜〜〜( ´Д`)」
頭を禿げさせたまま、ロックオンは皆を追って走っていく。


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