「待ってくれ〜( ´Д`)」 「うわ、きたぞウンコ男が!」 「きたか」 リジェネと刹那はビームサーベルを構えて、ティエリアを背後に匿い、ロックオンを見た瞬間吹きだした。 「・・・・・・・ぎゃはははははは」 「あはははははは、ハゲだ、あははははは!!」 「ロック・・・オン?ブッ!!」 ティエリアは、笑うのを我慢しようとして・・・顔が赤くなって、酸素を吸い込んだ瞬間、笑い出した。 「あ、あははははは、ハゲてる!はげてるううう!!!! 「ティエリア。約束してくれたよな?どんな俺でも愛してくれるって」 「いや・・・はげたロックオンは、愛せません」 「NOOOO!!」 ムンクの叫びのように、ぐにゃぐにゃになるロックオン。 イノベイター三人は、みんな笑って、笑い死にしそうだった。 アクラシエルをおろしたルシフェールは、アクラシエルが吐いた鬘をロックオンの頭にかぶせた。 「まぁ、この鬘で我慢しとき」 「なんで鬘なんてもってんの!?」 「私の胃には、大抵なんでもある」 「どんな胃!?」 「四次元ポケットの胃」 みんな、それ以上つっこむことをやめた。 「つかさ、再生させれば?髪の毛」 「この前それして失敗したんだよなぁ。わさわさはえて、増えるワカメみたいになった」 「それはそれで怖いな」 想像して、刹那は身震いした。 「とりあえず、再生・・・・・」 髪の毛は、いきなりぶわーっと再生した。 ズルズルと伸び続けるそれは化け物のようだ。 ロックオンの髪の毛は、刹那、リジェネ、ティエリア、アクラシエル、ルシフェールをぐるぐる巻きにして、生き物のようにうねる。 「ちょ、どうにかならんの、これ!?」 「ディル・アー・デラス。消えよ」 アクラシエルが簡単な詠唱をして、右手を向けると、その場所にあった髪の毛が消えた。完全に消滅したのだ。それが、無の力。 ドサリと、皆がおろされる。 「ちょ、剣で!?」 アクラシエルはオリハルコンの剣を右手で構えると、目にも止まらぬ速さでシュンシュンと高速の音だけを残して、鞘に戻す。 バサリと、ロックオンのお化け髪の毛は、適当な長さに綺麗に切り揃えられていた。 「お見事」 「おー凄い凄い」 刹那とリジェネが拍手する。 ティエリアも凄いと拍手した。 「アクラは、剣士でもいけるかもね」 「この子、俺より強いんちゃう?もしかして」 「そりゃ、元神様だし、無の精霊だもの。そこらのヴァンパイアよりはよほど強いよ」 「あらぁ。守るつもりが守られたりしてな。洒落にならんて」 「ネイ、ティエリアに髪を揃えてもらうといい」 アクラシエルは散髪にいる道具全てを吐いた。 それは実物大の大きさになって、ロックオンは長くなった髪をブラシでとかれ、鋏でティエリアの手によって髪を切られていく。 姿見の鏡まで用意されている丁寧さ。 霧吹きの水まである。 チョキンチョキンときっていって、ティエリアは固まった。 頭のてっぺんに、十円ハゲを見つけたからだ。 「どうした、ティエリア?」 「ううん、なんでもありません」 長いウェーブのかかった栗色の髪をぶらしでといて、見えないようにしてごまかした。 うん、きっとそのうち生えてくる。 多分。 だから、内緒にしておこう。 「まだなのにゃー?おなかすいたのにゃー?」 かしかしと頭を足でかいているフェンリルは暇そうだった。 「お前ら・・・いい度胸だな。散髪か!よりによって散髪か!!」 ブラディカは怒っていた。 オートマティックバトルドールたちが、ゲロだゲロだとうるさく逃げ帰ってきたと思ったら、侵入者たちは散髪をしていた。 そりゃ怒るだろう。 排除しようと、冷酷な表情でポーズも台詞も決めようと思っていたのに。 「あ、また催したにゃ」 フェンリルは、目の前の知らないおばさん(フェンリルから見たらおばさん)の頭にたたたたとのぼると、またウンコをした。 美女として名声を欲しいままにしていたブラディカは、何が起きたのか分からなかった。 頭が、ほやほやとあったかい。 「ブラディカさま!」 「ブラディカ様、頭が!!」 「頭がなによ!」 頭に手をやると、ほっかほっかのうんこが手にくっついた。 「きゃあああああああああああ!!!」 ブラディカは、地面に蹲ってわなわなと全身を怒りに震わせる。 「死よ!侵入者全員に死を与えよ!!」 ブラディカは浄化の精霊を呼び出し、うんこを綺麗さっぱりなくして頭も綺麗にしてもらうと、怒りに顔を真っ赤にさせて、頭の上にいたフェンリルの足を掴み、壁に叩きつける。 だが、フェンリルも身軽に壁に向かってくるりと回転して、短い足で華麗に地面に着地すると、ブラディカにあっかんべーをした。 「バーカバーカ、厚化粧のおばさーんだ、にゃ」 「おのれええ!!全員、かかれ!!」 次々と、オートマティックバトルドールたちが襲いかかってくる。 それを、ティエリアは二丁の銀の銃で、両手で撃ち落し、刹那とリジェネはビームサーベルで切り伏せ、ルシフェールは血の渦でばらばらにして、アクラシエルはオリハルコンの剣で華麗に粉々に駿足で細切れにきっていく。 「あれ?俺・・・・ええと、何すれば・・・・」 「ブラッディイーター、いっけえええ!!」 刹那のビームサーベルのまといついたブラッディイーターは吼えた。 そのまま、刹那はビームサーベルで次々とオートマティックバトルドールたちをきっていく。再生しようとする側から、ルシフェールが血の渦で飲み込み、飲み込みきれなかった部分はアクラシエルが細切れに剣でしてしまう。 「あれ?俺の華麗な出番・・・・あれ?」 ロックオンが自分の出番を探している間に、オートマティックバトルドールたちは片付いていた。 視界が暗転した気がした。 「ルシエード!待って、私はまだ負けていないわ!!」 奥から出てきたのは、創造の神ルシエード。 ルシエードは、ユグドラシルの聖剣と対になるワールドエンドの魔剣を手にしていた。 世界を終わらせるという、神のみが扱える魔剣。 「ゼロエリダ。迎えにきた。還ろう」 真っ直ぐに、自分に向かってさし伸ばされる手。 アクラシエルは、昔ならその手を逡巡しながらもとっただろう。そうしなければ、周囲に被害が及ぶかもしれないと恐れて。 「私は、アクラシエル。ゼロエリダでは、ありません」 「ゼロエリダ。贈ったペンダントは・・・その月は、なんだ?」 「私が私である証です」 キュイイイン。 甲高い音が、ルシエードの背中から聞こえる。エーテルイーターだ。 月に作り変えられたペンダントは、ルシエードのエーテルイーターに飲み込まれ、粉々になって消えた。 「もう、あなたを、父とは呼びません」 「ゼロエリダ・・・・」 沈黙の後。 ブラディカが、血の剣を取り出し、皆に襲い掛かった。 NEXT |