それは、イカだった。 絵にかいたような、ちんまりとしたイカは、砂浜に着地すると見る見る巨大になって、海のほうへ向かっていく。 「うわあああ、巨大イカの襲来だああ!!」 「きゃーーー!!」 「助けてーーー!!」 浜辺にいた人間たちは、我先にと逃げ出す。 イカは、海の中に入るとさらに巨大になった。 「おい・・・アクラ、胃の中であんなの飼ってたのかよ!あれデスクラーケンじゃねーか!!」 「え?イカ?昔・・・・3千年ほど前にイカ焼きが食べたくて・・・・」 心臓を見つけたアクラシエルは、焦るリエットの横で、きょとんとしていた。 「どういう神経してんだお前は!って、まったりか。そうだよな、お前元神様だもんな。常識なんて通じないよな・・・・うっしゃああ、俺様の出番だぜ!」 リエットは、聖書を取り出すと、それで・・・デスクラーケンに向かって突進した。 「うおおおお、聖書で殴り殺す!!」 おお、何か凄まじい神聖魔法を唱えるのだろうと期待して、わくわくしていた刹那とリジェネはこけた。 「聖書で殴り殺せるのか、デスクラーケンって」 「知らないよ・・・でも、リエットならできるかも?」 「ぬおおおおお、うなれ、我が聖書よ!」 リエットは、円陣を空中で描き、ふわりと背中の白い翼を羽ばたかせると、聖書を掴んで暴れるデスクラーケンに向かって特攻した。 「100コンボ!」 巨大化する聖書。 それを操るのは、天から現れた巨大な手。 「神よ我に祝福あれ!聖書で殴り殺すべし。ディア・バイブルフェッサー!」 本当に、聖書でデスクラーケンを殴った。 リエットの手の代わりとなった巨大な手は、魔法によって巨大化した聖書を掴んで、デスクラーケンの頭の部分をきっちり100回分殴って消えた。 「キシャアア!!」 デスクラーケンは、ますます暴れる。 「おい、あれ怒らせただけじゃないのか」 「怒ってるねぇ、あれ・・・イカだけど、いかりマークが」 「それ、ギャグか?」 刹那が、リジェネを振り返るが、リジェネは首を振った。 「いや、イカに怒りマーク・・・ギャグじゃないよ!ロックオンじゃあるまいし!」 「おいしそうなのにゃ・・・・」 フェンリルは、デスクラーケンを見て、涎を垂らしている。 「イカ焼きにしたいにゃ・・・・」 「なぁ、美味そうに見えるか、あれ?」 「全然」 刹那とリジェネは、暴れるデスクラーケンを見ても、気持ち悪いとしか感じなかった。 精霊って、感性が少し変なのかもしれない。 「おいしいよ、あれ・・・・」 アクラシエルが、ざっと、手を前に突き出す。 「無よ、放たれよ!」 海を割って、放たれた無の力がデスクラーケンを捕らえ、デスクラーケンは足を何本か失う。 ますます暴れるデスクラーケンの頭の上に、ロックオンが現れた。 「ふはははは、俺は海を征服するのだーー!!」 みんな、こけた。 「ロックオン!ばかなことしてないで!」 ティエリアが叫ぶが、どこからとったのか、誰かの海パンを頭にかぶったロックオンはげらげら笑う。 「ふははは、俺は海の男、サンビノッチ!!」 ロックオンは、ティエリアにKOされたあげく、頭を打ってアホになっていた。 「ロックオン、元に戻って!!」 「ボンジュール!イカイカ、イカイカダンス、イカダンス〜〜!」 イカダンスを踊り出すロックオン。 「完全にイカれてるぞ!」 刹那の言葉に、次はリジェネがつっこんだ。 「ねぇ、それってギャグ?」 「ち、違う・・・」 こうして、夏のバカンスを楽しむバカが集まる南の島は、あっという間に地獄となった。 NEXT |