血と聖水外伝「みんなで海水浴」4







それは、イカだった。
絵にかいたような、ちんまりとしたイカは、砂浜に着地すると見る見る巨大になって、海のほうへ向かっていく。
「うわあああ、巨大イカの襲来だああ!!」
「きゃーーー!!」
「助けてーーー!!」
浜辺にいた人間たちは、我先にと逃げ出す。
イカは、海の中に入るとさらに巨大になった。

「おい・・・アクラ、胃の中であんなの飼ってたのかよ!あれデスクラーケンじゃねーか!!」
「え?イカ?昔・・・・3千年ほど前にイカ焼きが食べたくて・・・・」
心臓を見つけたアクラシエルは、焦るリエットの横で、きょとんとしていた。
「どういう神経してんだお前は!って、まったりか。そうだよな、お前元神様だもんな。常識なんて通じないよな・・・・うっしゃああ、俺様の出番だぜ!」
リエットは、聖書を取り出すと、それで・・・デスクラーケンに向かって突進した。
「うおおおお、聖書で殴り殺す!!」
おお、何か凄まじい神聖魔法を唱えるのだろうと期待して、わくわくしていた刹那とリジェネはこけた。

「聖書で殴り殺せるのか、デスクラーケンって」
「知らないよ・・・でも、リエットならできるかも?」
「ぬおおおおお、うなれ、我が聖書よ!」
リエットは、円陣を空中で描き、ふわりと背中の白い翼を羽ばたかせると、聖書を掴んで暴れるデスクラーケンに向かって特攻した。
「100コンボ!」
巨大化する聖書。
それを操るのは、天から現れた巨大な手。
「神よ我に祝福あれ!聖書で殴り殺すべし。ディア・バイブルフェッサー!」
本当に、聖書でデスクラーケンを殴った。
リエットの手の代わりとなった巨大な手は、魔法によって巨大化した聖書を掴んで、デスクラーケンの頭の部分をきっちり100回分殴って消えた。
「キシャアア!!」
デスクラーケンは、ますます暴れる。

「おい、あれ怒らせただけじゃないのか」
「怒ってるねぇ、あれ・・・イカだけど、いかりマークが」
「それ、ギャグか?」
刹那が、リジェネを振り返るが、リジェネは首を振った。
「いや、イカに怒りマーク・・・ギャグじゃないよ!ロックオンじゃあるまいし!」
「おいしそうなのにゃ・・・・」
フェンリルは、デスクラーケンを見て、涎を垂らしている。
「イカ焼きにしたいにゃ・・・・」
「なぁ、美味そうに見えるか、あれ?」
「全然」
刹那とリジェネは、暴れるデスクラーケンを見ても、気持ち悪いとしか感じなかった。
精霊って、感性が少し変なのかもしれない。
「おいしいよ、あれ・・・・」
アクラシエルが、ざっと、手を前に突き出す。
「無よ、放たれよ!」
海を割って、放たれた無の力がデスクラーケンを捕らえ、デスクラーケンは足を何本か失う。
ますます暴れるデスクラーケンの頭の上に、ロックオンが現れた。
「ふはははは、俺は海を征服するのだーー!!」
みんな、こけた。

「ロックオン!ばかなことしてないで!」
ティエリアが叫ぶが、どこからとったのか、誰かの海パンを頭にかぶったロックオンはげらげら笑う。
「ふははは、俺は海の男、サンビノッチ!!」
ロックオンは、ティエリアにKOされたあげく、頭を打ってアホになっていた。
「ロックオン、元に戻って!!」
「ボンジュール!イカイカ、イカイカダンス、イカダンス〜〜!」
イカダンスを踊り出すロックオン。
「完全にイカれてるぞ!」
刹那の言葉に、次はリジェネがつっこんだ。
「ねぇ、それってギャグ?」
「ち、違う・・・」
こうして、夏のバカンスを楽しむバカが集まる南の島は、あっという間に地獄となった。


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