血と聖水外伝「みんなで海水浴」5







「はぁぁああ!」
「いっけえええ!」
刹那とリジェネは、それぞれ炎の精霊フェニックスとイフリートを放った。
デスクラーケンは、ロックオンと一緒に炎獄に包まれる。

「ちい、水のバリアか!」
「火がきかない!?」
「あのイカは、三千年前、私がイカ焼きにしようと思って、じっくりことこと煮込んだスープと一緒に・・・」
アクラシエルが、説明をするが、誰も聞いてはいなかった。
「ならば、直接攻撃あるのみ!」
「いけぇ、ブラッディイーター!」
刹那は巨大な金の鷹を召還し、それにリジェネと一緒に飛び移る。
刹那はビームサーベルを取り出し、デスクラーケンに切りかかる。
ティエリアは自分の血に飼っているブラッディイーターを召還して、巨大な牙を作り出すと、デスクラーケンに噛み付いた。
「虚無よ、放て。我は無となる。グラビティ・ゼロ!!」
アクラシエルの放った凄まじい重力が、デスクラーケンを中心に天から落ちてくる。
「神は聖なる言葉を放った。我は聖なる言葉を射る。ホーリーアロー!!」
リエットは、聖書を読むと、魔法を唱える。漆黒の弓が現れ、何本の漆黒の矢を放った。それはデスクラーケンの両目をつぶし、頭に突き刺さる。
足を切り離した刹那は、鷹の足に肩を掴まれて飛翔し、リジェネの放ったブラッディーイーターが咆哮する。巨大な牙でデスクラーケンに噛み付いたあと、アクラシエルのグラビティ・ゼロの魔法がデスクラーケンに襲い掛かる。

「血と聖水の名においてアーメン!いけ、フェンリル!」
「はいにゃ!!!」
巨大化し、3メートルの白銀の狼となったフェンリルは、落ちてくる巨大な隕石を避けて、デスクラーケンに絶対零度のブレスを浴びせる。
「ホワイトブレス!!」
かちこちに固まったそこへ、グラビティ・ゼロの魔法、巨大な隕石が叩き込まれる。
「へ、口ほどにもねぇぜ!」
リエットが格好つけるが、刹那とリジェネはつっこんだ。
「イカが口をきくはずないだろ」
「イカの口は、足のある頭の・・・」
「うっせ!細かいことつっこむな!」

「んー。イカ焼きにしよう。無は解き放たれる。炎の嵐の中を踊る翼よ。フレアウンィング・ゼロ!」
アクラシエルは、倒されて死んだデスクラーケンを見て、炎の翼を放つ。
デスクラーケンは、浜辺にあげられ、見事なまでに巨大なイカ焼きにされた。

「なぁ。なんか忘れてねーか?」
「うーん、なんだろう?」
「なんだ?」
「さぁ?」
みんなで首をひねるが、さっぱり思い浮かばない。
「なんか、大切なこと忘れてるような気がしますね」
ティエリアが首を傾げる。
「なんだろうにゃ?」
フェンリルは、よじよじとティエリアの頭の上にのぼって、欠伸をかみ殺した。
元の子猫姿に持っている。ティエリアの頭の上にいるのが、いつものフェンリルの定位置だ。そこで寝そべって、尻尾をパタパタふって寝るのが好きだ。絶妙なバランスで、ティエリアが走っても落ちない。

「「「「「あ!」」」」」
ティエリア、刹那、リジェネ、リエット、アクラシエル、全員がぽんと手を叩いて声をそろえた。

「「「「「ロックオンのこと忘れてた!」」」」」

みんな、すっかりロックオンのこと忘れてた。
ティエリアでさえも完全に忘れてた。
ロックオンは、アクラシエルの強大な無の力により、真っ黒焦げになっていた。イカと一緒に。
「ほかほか・・・ネイ焼き」
アクラシエルが、つんつんと指でつつくと、海水パンツがボロボロと灰になって。
ロックオンは、素っ裸になった。
「・・・・・・・・・きゃああああああ!!」
アクラシエルは悲鳴をあげると、ネイことロックオンを投げ飛ばす。
目の前にふってきたフルチンのロックオンに、リエットは悲鳴をあげてアッパーをかました。
「汚いものみせんじゃねええええ!!!」
「こっちくんなあああ!!」
「うわあああ!!」
刹那とリジェネも、投げ飛ばす。
そして、最後はティエリアのところにきた。
「・・・・・・・うわあああああ!」
ティエリアも投げ飛ばした。
勢いで、フェンリルもとんでいった。
ふにゃりとした感触に着地して、フェンリルは首を傾げた。
そして、ロックオンの裸を見て・・・。

「もにゃあああああああああ!!」
フェンリルは、悲鳴をあげて、ロックオンを引っ掻きまくって、ダッシュでティエリアの方に戻っていく。

「どうすんだ、これ」
「さぁ?」
巨大なイカ焼きと、焦げた素っ裸のロックオンを見て、リエットがため息を零す。
「とりあえず、ロックオンは埋めとこう。着替えホテルにいかないとねーし」
みんなの手で、ロックオンは浜辺に埋葬された。

「見て、見てしまった・・・見てしまった・・・きゃああああああああ!!」
アクラシエルは錯乱している。
騒ぎがひと段落して、戻ってきた海水浴客の、男だけを思いっきり投げ飛ばしている。
「なむなむ・・・・」
ティエリアはお経を唱え出す。
「なむだにゃ・・・ロックオン、お前のことは忘れないにゃ・・・う、思い出してしまったにゃ。おええええ」
フェンリルは、砂にうもれたロックオンの顔に、ゲロを吐いていた。

リエットは、残った巨大なイカ焼きの処分を決めた。


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