神の庭は氷で覆い尽くされていた。 コールド。 まるで氷結地獄のような光景。 凍りついた創造の神々たち。 思念体のまま凍りついた女神ウシャス、玉座に座ったまま凍りついた女神アルテナ、そして。 自分が作り出した空と森の狭間で、凍りついた創造の主柱神であるルシエード。 昨日まで、世界はごく平凡な時を刻んでいた。 来るべき滅びの未来へ向けて、確実ではあるが歩んでいたけれど、それまで何百年か猶予はあるはずであった。神々のかけひきの末の滅び。 天界へと世界が滅びるとき世界は繋がる。そして、その滅びる世界から天界へと、神々は帰っていく。 やがて滅びる世界は、創造の神々がつくりし世界。 天界で生まれぬ神たちを産む、神々の養殖場。それが作られる世界の本当の理由。 神格をもつ者、神に位置する者たちが強制的に天界へと送られる。それが世界が滅びる本当の理由。もうもたなくなった世界を、創造の神々が壊して、その世界に新たに生まれた神々を天界へと届ける。滅びの儀式だ。 この世界に、ある神がうまれた。 創造神ルシエードの実の兄弟、天界を治める天帝の子にして唯一天界から落とされた邪神。 名はフォーリシュ。フォーリングダウンからつけられた。その神は、ネイと名乗った。 人によって人工的に作られし神、ネイ・フォーリシュ・エル・フラフ・ブラッディ・ナハト・ブラッディ。 彼は、天界から落とされた者だ。 この世界が天界と繋がっても、帰ることはできない。 滅びの世界をなくす。創造の神々の柱である、滅びの時を、いやその時を招き世界を壊そうとしている創造神ルシエードを殺す。それがネイの確固たる願いでもあり野望でもあった。 ネイはこの世界でロックオンと名乗っていた。 血の神でありながら、一人のヴァンパイアマスターとして生きる彼。彼には恋人であり、永遠の愛を誓った血族がいた。 名はティエリア・アーデ。 人工ヴァンパイア、イノベイターとして生まれながらヴァンパイアハンターとなるために生き続ける中性のヴァンパイア。それを血族にして、ロックオンは同じようにヴァンパイアハンターをはじめた。 ティエリアのよきパートーナーとして、そして恋人として。 刹那やリジェネ、ティエリアの使い魔であるフェンリル、新しくできた友、ヴァンパイアの上位亜種であるホワイティーネイのリエット、元神で無の精霊であるアクラシエル、新しき血を必要としないヴァンパイア「エゼキアル」のルシフェール。 たくさんの仲間がネイ、ロックオンの元に集っている。 世界はゆっくりと、変革を始める。 ゆっくりと、ゆっくりと。 まるでそう、天使が翼を広げ羽化するかのように。 ゆっくりと・・・・。 世界は、変革を迎えようとしている。 果たして、それはこの世界にとって良いことなのか悪いことなのか。 それはまだ、誰も知らない。 NEXT |