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結局、行く宛てもなく、そのまままたティエリアの家に戻った。
マリアは学校から帰ってきたようで、そのままマリアの遊び相手をした。荒んでいる心が癒されるのが分かる。もう、受け入れよう。現実は現実なんだ。
プログラミングを終えて、リビングルームに入ってきたティエリアが叫んだ。
「ロックオン!」
「んあ?」
気づくと、体の線が薄くなっていた。
周囲をエメラルド色の蝶が舞っている。
「あー。もうすぐ、時間切れなのかね?」
でも、別にいいやと思った。
この世界からさよならできるなら。ティエリアの顔も見れたし、ちゃんと未来を歩んでいってくれてることも分かったし。
「デート、しませんか?昔のように」
「ああ、いいね」
ロックオンははにかんだ。
最後に、昔の思い出に浸るのもいい。
ティエリアは着替えて、外行きの服になると、マリアを連れて三人で公園に出かけた。
そう、二人のペアリングを投げた池のある公園だった。
「ここに、お前とのペアリング、投げ入れたんだ」
「そうですか」
さして、顔色も変えずにティエリアは納得する。
マリアと公園で遊び、デートというデートにはならなかったけれど、ティエリアとロックオンは静かな時間を過ごした。
「お前さんも、強くなったんだな」
「あなたが、いてくれたから」
「過去形か」
「ええ」
「そうだなぁ。俺はもう、死んでるんだから」
なんだか不思議だった。
死んでるはずなのに、こうしてティエリアと会話ができる。
「俺、嬉しいわ」
「ロックオン?」
「もしかしたら、ティエリアずっと泣いてばっかで、今も泣いてるのかと思ってた」
「それは」
「刹那もいるし、子供もいるし。愛に包まれて、お前は幸せだな」
「・・・・・ええ」
幾分の沈黙のあと、ティエリアは肯定した。
そのまま、夕方になったので家に戻ると、ティエリアは用があるといって、夕飯だけを作ってどこかに行ってしまった。
「ママ、どこにいったのかなぁ?」
「さぁ?」
ロックオンは、もうすぐこの世界から消えるだろう。
もう、どうでもいい。
早くいなくなりたい。
「ママ、でかける時泣いてたよ。大切なものを、池に投げ捨てられたって」
その言葉に、ロックオンは眉を顰める。
「嘘だろ?だって、もういらないから俺に返してくれたんだろ?」
「ママ、ほんとに泣いてたんだから!」
マリアは怒ってしまった。
ロックオンは、動悸が早くなるのに気づいていた。
そのままマリアを家に残して、家を飛び出して夕暮れまでデートといって出かけた公園にやってくる。真っ暗な中、薄暗い街灯だけが頼りだった。
池のところにくると、水音が聞こえた。
ティエリアだった。
ずぶ濡れになって、池の底を手探りで探している。
「何してるんだ、ティエリア!!」
ティエリアを止めると、ティエリアは呟いた。
「あなたに返して、あなたがそれで納得するならいいと思った。でも、あれは僕のものでもあるんだ!僕の思い出を、捨てないで!!!」
涙が浮かんだ瞳で睨みつけられた。
「あなたは、いつだってそうだ!いつだって、いつだって。僕を最後は一人にして、いなくなってしまうんだ!」
「ティエ・・・・リア」
「あなたは卑怯だ!どうして・・・・僕はやっと乗り越えたのに!どうして、僕をまた!あなたがいなくても生きていけると思ったのに!!」
ティエリアは、泣き叫んだ。
暗い公園で、ずぶぬれになったままティエリアは、ペアリングを探し続ける。
ふと、池に沈んでいたペアリングがエメラルド色の光を放った。
「あった・・・・・僕と、あなたの、思い出の、つまった・・・・」
そのまま、ティエリアは泣き崩れた。
嗚咽するティエリアを抱き抱えて、ロックオンはティエリアの家に戻った。
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