ティエリアと刹那はオペを終え、それぞれ治療カプセルに入れられた。 それを、複雑な表情でライルとアレルヤが見つめていた。 まだ、いつアロウズが襲ってくるかも分からない中、貴重な戦力を二つも欠いたことになる。 大きな痛手だ。 今アロウズに襲われたら、ひとたまりもないだろう。 ティエリアと刹那は、昏々と眠った。 やがて、通常よりも傷の治癒のスピードがはやいティエリアが先に目覚めた。 傷も大分いえて、カプセルから出る。 ティエリアの目は虚ろだった。 ずっと、刹那のカプセルに張り付き、食事も睡眠も刹那のカプセルの傍でとった。 ライルは、はじめ食事もとらず睡眠もとらないティエリアに危機感を抱いたが、自然とティエリアは刹那が生きていることを確認して、食事も睡眠もとるようになった。 「痛々しくて、僕見てられないよ」 アレルヤが、ずっとカプセルに話しかけるティエリアを見ていた。 それは、ライルとて同じことだった。 「刹那、早く目を覚まして?」 眠り続ける刹那に、ティエリアは涙を零しながら訴えかける。 「どうして僕なんて庇ったの。ねぇ、刹那。好きだよ。お願いだから、目を覚まして」 人工呼吸器は取り外され、傷も大分癒えている。 「刹那、刹那、刹那。僕を一人にしないで」 そっと、カプセルにはりつくティエリアに、ライルが毛布をかけた。 「ありがとう」 ティエリアは、ライルに頬を挟まれた。 「刹那は大丈夫だ!だからしっかりしろ、ティエリア」 「うん・・・・・」 そのまま二日が過ぎた。 相変わらず、ティエリアは刹那のカプセルの傍から離れない。 錯乱状態に一度陥ったが、医師が強制的に鎮静剤を投与した。 それから、大分落ち着いた。 そして、刹那が目を覚ました。 「刹那」 刹那は、自分の状況をすぐに理解し、傷むだろうに、ドクターストップも無視してカプセルから出て、自室で安静にすることにした。 カプセルに入っていると、ティエリアが何かと不便だからだ。 ティエリアは、その日からずっと刹那の部屋に泊まりこみだった。 刹那の看病の全てをほぼティエリアがした。 ドクターから言われたとおり、刹那は右目の眼球を酷く損傷しており、オペによって右目の眼球は摘出され、完璧に右目を失明した。 包帯に包まれた痛々しい傷跡。 刹那は、包帯を解いて、眼帯をした。 ロックオンのような右目から額を覆うようなアイパッチではない。 完全な眼帯であった。 まだ傷口の塞がっていない右目はガーゼに覆われ、その上から白の眼帯をする。 ロックオンの時のようではないが、それでもデジャブではないデジャブがティエリアを襲う。 ティエリアと刹那は、同じベッドで眠った。 「俺は死なない。ちゃんと右目の再生治療も受ける。ティエリア」 「うん」 刹那を抱きしめたまま、ティエリアは離れなかった。 そんなティエリアに言い聞かせるように、刹那は続ける。 「約束しただろう。一人にはしないと。絶対に離れない」 「うん」 ティエリアはまた涙を零した。 刹那は、鎮痛剤を服用していた。 傷はまだ大分痛むはずだ。 「お願いだから、僕を置いていかないで、刹那」 ティエリアの手が伸びて、眼帯の上から刹那の右目を触る。 「僕を庇うことなんてなかったのに」 「ティエリアは、俺にとって命よりも大事な存在だ。ティエリア、好きだ」 「刹那、大好きだよ。絶対に、僕を一人にしないで」 「約束する」 ティエリアと刹那は、一緒のベッドで抱き合って眠った。 もう、ライルとアレルヤが何を言っても無駄だった。 二人は、完全に二人だけの世界を構築していた。 刹那が、眠ったままのティエリアの髪をすく。 そして、また鎮痛剤を服用する。 痛みを堪えることはできるが、それにも限度がある。少しでも痛いというような表情を、ティエリアに決して見せたくはなかった。 「ティエリア、愛している」 紫紺の髪を撫でる。 ティエリアは、眠ったまま泣いていた。 頬を過ぎる涙のあとを、刹那の指が拭う。 「ん・・・・」 ティエリアが、石榴の瞳を開く。 目の前には、優しい表情の刹那がいた。 「刹那」 ティエリアは迷うことなく、刹那の首に手を回した。そして抱きつく。 その体温に安堵する。 刹那が生きている。 生きて、僕の目の前にいる。 「約束して?絶対に、僕を一人にしないって」 「約束する」 刹那の唇が、ティエリアの唇と重なった。 「んあ」 そのまま、舌を絡ませあう。 刹那の手が、ティエリアの服に伸びる。 ティエリアは、それを受け入れる。 比翼の鳥は、お互いの存在なしでは生きられない。 魂の双子。鏡の中のもう一人の自分。 石榴の瞳から、新しい涙が溢れた。 「僕に、刹那が生きているという証をくれ」 「逃げないのか」 「僕は、刹那を望む」 伸ばされる手。 衣服を脱がされる。 そのまま、二人はもつれあってベッドに倒れた。 NEXT |