次の日の昼、警報が鳴り響いた。 「マネキン!」 操舵室で、ミス・スメラギはきたかと覚悟を決めた。 ライル、アレルヤ、ティエリア、それに刹那の四人全員がノーマルスーツに着替える。 厳しい戦況の中、怪我人であるとはいえ、ティエリアと刹那の戦力を欠くわけにはいかなかった。残酷であるが、それだけ苦戦を強いられているのだ。 刹那が、眼帯をしたまま、手を伸ばす。それに、アレルヤ、ライル、ティエリアが手を重ねた。 「俺たちは、必ず生き残る」 「生き残る」 「ああ、生き残るぜ」 「生き残ってみせる」 それぞれ、ガンダムのコックピットに乗り込む。 「刹那・F・セイエイ・、敵を駆逐する!」 刹那の乗ったダブルオーライザーがまずは発進した。 「アレルヤ・ハプティズム、迎撃行動に出る!」 次に、アレルヤのアリオスが発進する。 「ロックオン・ストラトス、敵を狙い撃つぜ!」 続いて、ライルの乗ったケルヴィムが発進した。 「ティエリア・アーデ、セラヴィ出ます!」 ティエリアが、最後にセラヴィを発進させた。 「本当に、生きて帰ってこいよ!」 イアンが、祈るようにガンダムの姿を見送った。 セラヴィの右足の修理も、ダブルオーライザーの修理も間に合ったとはいえない。 セラヴィにいたっては、右足はもがれたままだ。 それでも、戦う。 生き残るために。 ガデッサの容赦ない破壊の光が、セラヴィに向けられる。 「セラフィムガンダム、発進する」 セラヴィに隠されていたセラフィムガンダムを起動させ、ティエリアは宇宙をかけた。 アリオスも、ケルヴィムも、トレミーを離れて戦っていた。 とてもではないが、援護できない。 敵は本気だ。完全にこちらを沈黙させようと、ほぼ全機を投入してきている。 「ここが正念場よ!お願い、頑張って!」 トレミーの操舵室で、ミス・スメラギが祈るように手を組んでいた。 ダブルオーライザーが先陣をきって、敵を切り裂いていく。 「10機、11、12!」 うなるツインドライブ。加速する機体。 次々とその刃で切り裂いていく。 アリオスも、ダブルオーライザーと並んで敵を切り裂いていく。 「撃ち落とす!」 「メイチュウ、メイチュウ」 ハロが嬉しそうに合成音声を出した。 「おおおおおお!!!!」 セラフィムガンダムに乗ったティエリアは、二つのビームサーベルを手に、次々と敵を切り裂いていく。 その隙間をぬうように、ケルヴィムの正確な射撃が敵を撃ち落とす。 トレミーからもいくつものビームやミサイルが発射される。 「ガデッサ、解放!」 ヒリング・ケアがガデッサをセラフィムガンダムに向けた放った。 「なに!?」 セラフィムガンダムは、アームを外すとそこから濃縮されたGN粒子を満たし、破壊の光を放つ。 ガデッサの光と、セラフィムガンダムが放った光がぶつかり合い、消えた。 「ばかな、あんなものでガデッサの威力と同等だというのか!」 たじろぐヒリング・ケアの機体にダブルオーライザーが迫る。 「くそ!」 ガデッサを切り裂かれた。 バチバチと火花を散らして、ガデッサが爆発する。 通信が入る。 「新型は、全機をもってダブルオーライザーを破壊せよ!相手はこの前の戦いで負傷している上に、機体も整備が万全ではない。この機会に破壊するのだ!」 「ラジャー」 「ラジャ」 「命令、了解しました」 アロウズの兵士たちも、そしてイノベーターたちも、刹那のダブルオーライザーを沈めようと襲い掛かってくる。 それを、アリオスとセラフィムガンダムが応戦する。 「刹那だけ狙うなど卑怯だ!」 セラフィムガンダムに乗ったティエリアが、粒子サーベルを両手に新型をなぎ払う。 アリオスも、ビームサーベルを手に敵を切り裂きながら、ビームを発射する。 「お願い、もってちょうだい!」 トレミーの操舵室で、ミス・スメラギが祈っていた。 ケルヴィムも、ビームサーベルを手に肉薄してきた敵と切り結ぶ。 「トレミーは、このまま前進して!」 「でも、このままでは起動エレベーターとぶつかります」 「ギリギリの位置まで持っていって!」 「分かりました」 「おのれクジョウ、どういうつもりだ!?」 敵側の母艦の中で、腕を組みながらマネキンが声を荒げた。 すでに、ダブルオーライザーもアリオスもケルヴィムもセラフィムガンダムも、トランザムを使っている。 それでも、戦いは終わらない。 「はぁ!」 敵の刃とビームが刹那の機体に集中する。 ダブルオーライザーは、ばちばちと火花を散らせながらも、それでも敵を切り裂く。 「・・・・・・・・・ティエリア」 コックピットで、刹那がうめいた。 傷口が開いただけでない。衝撃で肋を数本折り、その何本かが肺に刺さった。 「ゴホッ」 大量の血を吐きながら、それでも刹那は止まらない。 バーサーカーのように敵を切り裂いていく。 「トレミー、起動エレベーターまで300M」 「停止して。ゆっくり進んで」 流石に、世界経済を支える軌道エレベーターに傷をつけてはいけないと、アロウズの兵ははここまでくることはなかった。 「敵の母艦と通信ルートを開いて!」 「はい!」 「聞こえている、マネキン!?これ以上戦うようであれば、起動エレベーターに接触するわ!」 「本気か、クジョウ!貴様ぁぁぁぁぁ!!!」 「本気よ!全軍に撤退命令を出して」 「くそおおお!!!」 クジョウなら、やりかねない。 マネキンは、全軍に撤退命令を出した。 「くそ!」 母艦の中で、荒々しくマネキンが床を蹴る。 起動エレベーターにもしものことがあれば、アロウズの名が地に落ちる。 クジョウめ。なんという苦肉の策を思いつくのか。起動エレベーターの傷が少しだとしても、世界を、地球を支える起動エレベーターに傷を負わせてしまうことが知られてしまえば、アロウズへの非難は集中する。 CBも無論その中にたたされるが、現在の世界にとっての敵であるCBにしてみれば、あまり現状と変わらないようなものだろう。 クジョウは、見えない最大の人質を盾にしているのだ。 普通の戦術予報士なら、そんな策はまずとらない。 「今回は、私の負けか」 マネキンが悔しそうに歯噛みした。 撤退していくアロウズの敵機を睨みながら、アリオス、ケルヴィムはトレミーに帰還した。半ば大破してしまったダブルオーライザーを抱えて、ティエリアのセラフィムガンダムもトレミーに帰還する。 NEXT |