デジャヴ−記憶の欠片−「諦めない心」







「刹那。おはよう」
ティエリアは、治療カプセルから普通の病室に移った刹那の部屋で寝泊りしていた。
ドクターから、脳死の可能性が高いと宣告された。
最初は半狂乱になったティエリアであったが、大分落ちついた。
ティエリアは、あれからも一度手首を切ろうとして、右手首には痛々しい包帯が巻かれていた。
「刹那。ねぇ、起きて?」
ずっと眠り続ける刹那に、声をかける。
刹那は、もう一週間以上も昏睡状態のままであった。

ティエリアは、発作的に何をしでかすか分からないので、いつも傍でライルかアレルヤがついていた。
手首を切ったティエリアを発見したのはアレルヤだった。
処置が早かったので、一命は取り留めた。

「刹那、僕を一人にしないって言ってくれたよね。ねぇ、僕を置いていかないで」
ポタリ、ポタリ。
静かにティエリアは泣き出した。
涙をいくつ流しても、いくら声をかけても刹那はピクリとも動かなない。
刹那の唇に、ティエリアは自分の唇を重ねた。

「愛してるよ、刹那。僕を置いていかないで」
アレルヤは見ていられずに、涙を零していた。
なんて痛い関係なのだろうか、二人は。
恋人同士ではないはずなのに、恋人同士よりも深い絆で結ばれている。

「ねぇ、刹那。比翼の鳥は、片方だけでは生きていけないんだよ?」
刹那の黒髪を手ですく。
ティエリアの顔は穏やかだった。
だが、いつも涙を零していた。
もう、それからティエリアが自殺未遂をおこすことはなかった。
ただ、毎日眠り続ける刹那の傍から動かない。
ずっと、寄り添うように。

起動エレベーター付近で留まったまま、トレミーは動いていない。
アロウズの奇襲は、起動エレベーター付近を選んだのが功を奏したのか、あれから一向になかった。

「なぁ、ティエリア」
「刹那、戻ってきて」
「ティエリア、愛している」
「刹那、刹那、刹那」
ライルに抱きしめられても、ティエリアは反応しなかった。
何度愛しているといっても、ティエリアは首をふる。
「あなたの愛なんていらない。僕は、刹那が傍にいてくれるだけでいいんだ」
なんて、残酷な言葉。
ライルも辛かったが、それがティエリアの選んだ道なのだろう。
ティエリアは、ライルを選ばずに刹那を選んだ。
そうなるだろうとは思っていたが、まさに的中した。
最悪の結果だ。

「刹那、好きだよ」
今日も、病室でティエリアは辛抱強く刹那が目覚めるのを待っていた。
医師は脳死だと宣告したが、ティエリアは諦めない。
諦めてしまえば、そこで終わりなのだ。

終わりたくない。終わらせたくない。
まだ、ぼくたちの道ははじまったばかりじゃないか。
ねぇ、刹那。
ねぇ。
僕を、置いていかないで。
ロックオンの時のように、一人にしないで。
君がいなくなった世界で、僕は生きていけない。
君がいなくなった世界で、僕は生きたくない。

僕の世界は、ロックオンの時と同じように、ここで終わるのかな?

ねぇ、刹那。
大好きだよ。
君以外の誰もいらない。
君が傍にいてくれるだけで、それだけでいいから。
お願いだから、目を覚まして。
刹那。
僕の、魂の双子。
もう一人の僕。


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