「やぁ。また会ったね。その服、よく似合っているよ」 とある高級ホテルの最上階にあるスィートルームで、ティエリアは自分を呼び出したリボンズ・アルマークと、その背後に立ってクスリと笑う、自分と同じ容姿をした リジェネ・レジェッタを睨みつけた。 ティエリアのパソコンに、秘密裏に送られてきたメールは、ご丁寧にも画像と音声つきのものだった。 はじめて会った時のリジェネの服装をしたとリボンズが、連邦の中でもとりあわけ景気がよく、尚且つ治安もいい国のとある高級ホテルの スィートルームを取ったので、そこで再び会って会話がしたいというものだった。 ティエリアは迷った。 相手に銃を向けたことがある以上、ティエリア自身もまた彼に銃を向け発砲しないということは言い切れない。 自分の一番大切なあの人を、半ば愚弄したリボンズはティエリアにとって憎しみの対象でしかないし、例え彼がイオリア・シュヘンベルグの壮大なる計画の 中心となるために生み出されたイノベーターの統治者と分かってはいても、世界のために彼を消し去ってしまいたかった。 けれど、自分の中に流れるイノベーターの血が、彼に再び会いたいと叫んでいる。 なによりもリボンズとはじめて会った日、銃をつきつけたその瞬間に解放された、ヴェーダとの一瞬のリンクが、イノベーターである自分が彼を殺してはいけないのだと、 ティエリアを見えない鎖で絡めとっていた。 女装してまで出会ったリボンズは、世界の歪みの中心であると共に、自分を生み出したイオリアの計画の中心人物でもあった。 イオリアは強く世界から戦争を失くそうと、根絶しようとそれは計画の中でもガンダムを生み出したほどに強く願っていた。 けれど、ティエリアを含めた今のガンダムマイスターたちは、今となってはイオリアの計画の邪魔でしかない。 その矛盾が哀しく悔しかった。 リボンズに銃を向け、窓を飛び割った瞬間まで、目まぐるしくヴェーダが4年以上もの間にティエリアに与えていなかった情報を、 膨大な量と共に送り込んでいた。 リボンズ・アルマティという世界の歪みの元でありながら、イオリアの計画の最大の実行者である彼の存在。そして世界を 自分のもののように操っていく、イノベーターという、ヴェーダにアクセス権限を許された特別な存在を。 銃の腕は誰にもひけをとらぬはずのティエリアが、リボンズを撃ち損ねた。 同じイノベーターの手によって邪魔をされたという 理由もあったが、例え邪魔をされていてもティエリアには、リボンズを撃ち殺すことはできなかっただろう。 リボンズが、いきなりヴェーダへのアクセス権を解除し、強制的にティエリアをヴェーダと繋いだのだ。 警報がなる中、刹那の元に戻るまでどれほど時間がかかっただろう。 いっそのこと、ティエリアは持っていた銃で自分の頭を撃ちたくなっていた。 ヴェーダが与えた情報は、イノベーターという存在の他にもティエリア個人に関する詳細も含まれていた。 今まで知ることのなかった、ティエリアという個体に関する裏の情報。 そこで与えられた情報は、動画になっているものだった。イオリア・シュヘンベルグの隣に座り、笑っている自分の姿。 違う、正確にはイオリア・シュヘンベルグが唯一愛した女性の姿を象った、ティエリア・アーデという少年でも少女でもない その姿。 イオリアは、ティエリアのことを天使と呼んでいた。 ティエリアは、目覚めた時に、自分としての我を自分で築いたはずだった。 けれど、現実は違ったのだ。 ガンダムマイスターとなるために目覚める数年も前以上、その数百年も前に、イオリアの隣に立って彼と一緒に計画を手伝い、彼と一緒の日々を過ごしていたのだ。 そして、イオリアは自分の死期を悟った時に、その時代のティエリアという精神を消し去った。 ティエリアと同じ容姿の少年たちが並ぶコールドスリープを兼ねたカプセルには入れずに、地下にある特別なカプセルの中に ティエリアを眠らせた。 ティエリア・アーデという名前ですら、ティエリアはイオリアが計画のために与えた、他の個体と自分を識別させるための暗号のようなものだと思っていた。 実際は、違うのだ。 ティエリア・アーデという女性が、数百年も前にこの世界に存在していた。イオリアを愛し、またイオリアが愛したその女性は 普通の人間ではなかった。 イオリアが、イノベーターたちを作るためのサンプルとして作り上げた実験体。 真実は、どこまでもティエリアを暗闇の中へと放り出す。 その実験体は、イオリアの実の妹を再現したものだった。 イオリアは、人間というものを嫌いながら、ただ一人きりの女性を愛した。それは、血の繋がった自分の実の妹。 妹だけを盲目的に愛しながら、イオリアは科学の未来のために彼女を捧げていた。 妹がもっていた我を消し去り、上からイオリアの計画を助けるための有能な腕をもった科学者としての人格を与える。そして、その科学者は誰よりもイオリアを愛していたと。 イオリアは、実の妹との間に子をもうけていた。 イオリアの妹は、その子を産む時の難産に耐え切れずに死んでしまう。 順調だったイオリアの世界が壊れていく。 イオリアは、自分と妹の間にできた子供の肉体をベースに、新人類を作り上げた。それはイノベーターと呼ばれた。 絶世の美貌を持った少女の姿をしたそのサンプル体は、イオリアの実の妹の容姿を再現したものだった。 後にイノベーターたちを人間の細胞から生み出すイオリアであったが、当時はまだ技術が足りずに人間の肉体を元に、新しい人類を開発しようとしていた。 それには、生きた人間でなければ意味がない。 イオリアの、当時は狂っているともいえる計画のために、身を捧げる者などいなかった。 身寄りのない子供などを引き取って、イオリアは科学のための生贄として、実験を繰り返していた。 後の世界に、科学者として神のように君臨することになるイオリアは、当時はただの狂った科学者でしかなかった。 実の子供の肉体を元に作った、妹の容姿をともなったサンプルに、イオリアはティリア・アーデという名前をつけた。 それは今はもうない、イオリアが生まれた国の神話に出てくる天使の名前だった。 サンプル体は、ほんの数年で死んでしまうが、イオリアの研究は続けられた。 実験の繰り返しの末に、イオリアはついに人間の細胞から、イノベーターという新しい人類の創造に成功する。 そして、まずは量産するように、妹と同じ容姿を持った少年を何体も作りあげる。それが、今もかの地でカプセルの中で 眠り続ける、ティエリアという個体の兄弟たちである。 そして、新たにイノベーターたちを作り上げるイオリア。 その中に、量産型と同じ容姿をしたイノベーターが一体混じっていた。 そのイノベーターだけは特別だった。 自分の子供の肉体をベースとして作り上げたサンプル体、つまりは最初の新人類を基盤に作りあげられた、絶世の美貌を持ったイノベーター。 生き続ける限り、その肉体が年と刻まないようにと、他のイノベーターと同じように遺伝子に細工を施す。 他のイノベーターたちと違ったのは、その肉体に性別というものがなかったという点である。まさに、新人類ともいえるその 存在。性別をもたぬ人間など、この世界には存在しない。 イオリアが作り上げた他のイノベーターたちはみな、少年か少女であった。 特別なその個体に、イオリアは「ティエリア・アーデ」という、子供に与えた天使の名前と同じ名前を与える。 そして、その個体だけがイオリアが生きた時代に目覚めた。 「私の天使」 イオリアはいつも、ティエリアと名づけた個体をそう呼んだ。 イオリアがもつ科学力の結晶として生まれた無性のイノベーターは、イオリアを愛し、そしてイオリアと共に数百年後に おこるであろうシナリオを生み出していく。 その中に、その個体がガンダムマイスターになることもすでに含まれていた。 計画の実現を、自分の代わりに見届ける天使。 イオリアの天使は、実に有能で、そして世界から戦争を根絶したいというイオリアの願いに忠実的に、計画の基盤となるシナリオを 生み出した。 ティエリア・アーデ。 イオリアが愛した妹の容姿を強く引き継いだ、イオリアだけの天使。 天使は無性でなくてはならない。誰にも汚されることのないように。 その願い通りに、美しい容姿を持った無性の天使が生まれた。 誰にでもない、イオリア・シュヘンベルグという科学者の手によって。 そして、イノベーターとしても新人類としても極めて有能なる、イオリアの片腕として、その時代のティエリアはイオリアと共に生きる。 イオリアが作りあげた計画の大半が、この時代のティエリア・アーデが生み出したものでもあった。 世界は、なんて面白く滑稽にできているのだろうか? ボクハ、イオリアノ、人形ダッタンダ。 イオリアが愛する、イノベーターという新人類の、天使を象った人形。 イオリアは、後にガンダムマイスターとして目覚めるティリア・アーデに、特別な細工を施していた。 それは、他のイノベーターにない、人間としての感情。 人間として生きる、イノベーターとなるように。 イオリアの時代に生きたティエリアの女性としての人格はかき消され、ガンダムマイスターとして目覚めた時は、男性としての自我がうまれるようにと。 そして、いつか人間を愛するようにと。 ならば、今の僕はなんだ? 今のティエリア・アーデはなんだ? ロックオン・ストラトス…ニール・ディランディを愛したことさえ、計画の一部だったというのか。 人間として生きている今さえ、イオリアの計画の一部に過ぎないと。 ティエリアの思考は、麻痺していた。 ヴェーダが与えた情報を処理しきれないものとして、ティエリアの脳は自分を守るために自らその情報に関する 思考をシャットアウトした。 リボンズから、ふいに招待のメールが届いた時に、凍りついたままだったその情報が再び脳内を目まぐるしくかけめぐる。 ティエリアは、本当ならリボンズの招待など受ける気はなかった。 けれど、リボンズに天使と呼ばれ、その一言だけでティエリアはリボンズと会うことを了承した。 世界の歪みの象徴である者と、世界の歪みを正す天使。 「本当に、よく似合うね。僕が着ても勿論似合うだろうけど、君は特別だからね」 リジェネが、リボンズの背後でクスクスと笑った。 ティエリアが着ている服は、リボンズから送られてきたものだ。 イオリア・シュヘンベルグと共に、ティエリア・アーデが女性の人格を有して生きていた頃に、よく着ていた服装にそれはとても よく似ていた。 フリルやレースをあしらいながらも、少女趣味に走らないようなデザイン。全体的にゆったりとした長衣のようであるが、 首と肩の部分は大胆にカットされて露出するようになっている。 眼鏡は外され、けれど眼球保護のためのコンタクトをしていた。ティエリアタイプのイノベーターは他のイノベーターや人間と比べても視力が高く、それは便利ではあるが 高すぎる視力はただの厄介な代物だけに過ぎず、しかも眼球が人工の光にも太陽の自然光にも弱いために、いつも眼鏡かコンタクトで眼球を保護する必要があった。 知らない者が見れば、ティエリアはただ目が悪いだけとられるだろうが、実際は違った。 ティエリアの着ている服は、なまじ細い肢体をもつティエリアの、その細く白い身体を強調するかのようなつくりになっていた。 確かに、リジェネが着ても同じ容姿を持っているから似合うだろうが、しかしティエリアのような着こなし方はできないだろう。 それは、着慣れた者が着慣れた服を身にまとうようなものだった。 それに、太ももの部分まで深いスリットが両側に入っており、リジェネのような性格からすれば、そのスリットから見える 肌の露出が嫌だろう。それに、リジェネは同じ容姿をしているとはいえ、れっきとした男性だ。無性であるティエリアとは違い、太ももの部分にまでスリットの 入った服を着るなんて、考えもしないだろう。 それは肌の露出を極端に嫌うティエリアでさえも同じことであったが、女装した時にかなり肌の露出への嫌悪感も薄らいでおり、 服を着終えた時に、不思議と不快感というものはなかった。 服の着付けは、リボンズが手配した女性によって行われた。彼女もまたイノベーターなのだろう、リボンズやリジェネと同じ匂いがした。 深い濃紺の髪は綺麗に結い上げられ、瞳の色と同じ赤の、スタールビーをあしらった髪飾りでとめられた。 服のいたるところに、同じルビーの装飾が施され、首元にはルビーの赤と正反対のどこまでも青く澄んだサファイアの 首飾りをつけさせられた。 最後に鏡を見せられるが、どこかの神話から飛び出した、女神か天使のような姿になっていた。 「ティエリア・アーデ。本当に勿体無い。彼に感化させられなければ、もっと気高く美しかっただろうに。いや、彼に感化させられ、そして人間になることは 計画の中にも含まれていたね。彼でなくとも、他の誰かの人間を愛し、そして人間になっていたか、君は。そして人間になってさえ、僕たちイノベーターの中で一番美しい。同じ容姿のリジェネさえ、その足元に及びもしないくらいにね。流石は イオリアの天使というだけあるね。無性というものが、これほどまでに美しいのだとは僕も知らなかったよ」 「僕は……」 ティエリアは言いよどんだ。 リボンズに言いたいことは山ほどあったはずなのに、リボンズの顔を見ると、ヴェーダのアクセスから半ば強制的に与えられた情報が目まぐるしく ティエリアを支配して、その情報のせいで自分が変わってしまう予感がして、とても怖かった。 「ティエリア。無理をすることはない。昔のように、自分のことを”私”と呼んだらどうだい」 リボンズが、ティエリアの手をとって、その指に金色に光る、アレキサンドライトをあしらった指輪をはめる。 ティエリアに対する、ヴェーダへのアクセス権は再び解除されていた。 けれど、ティエリアはヴェーダへアクセスすることを頑なに拒否した。 「本当に、君は美しい。この指輪に見覚えがあるだろう?君が、イオリアと共に生きていた頃にいつもはめていたものだ」 「アレキ…サンドライト」 「そう。人工の光と太陽の自然の光で色を変えるこの宝石に、君はとてもよく似ている。自然の中…すなわち、人間たちと 一緒に過ごす君と、イノベーターとして生きる君の顔はとても違う。そして、この宝石はとても高価で有名だ。君もまた、その存在は イノベーターの中でも最も価値のあるものだ」 「僕は宝石じゃない」 首を左右に振る動きに、耳に飾られたスタールビーのピアスが反射する。 「あくまで例えだよ。君は、宝石よりも貴重だ。イオリアの天使。いいや、僕らイノベーターの天使」 「僕は人間だ!例え、イノベーターとして命を受けたとしても、僕は人間なんだ!」 「自分が苛められているみたいな気分だよ、リボンズ」 リボンズとティエリアのやりとりを見ていたリジェネが、リボンズの行動に少し嫉妬していた。 リボンズが、同じイノベーターに固執する姿を、見たことがない。 ヴェーダから与えられたアクセス権限は、レベル制限がある。リジェネはその点ではリボンズを上回っていた。そして、リジェネの脳を経由して ティエリア・アーデという存在の秘密を知ったリボンズは、しきりにティエリアのことを気にする素振りを見せた。 おえらいさんと一緒のパーティーの中に、ティエリアの姿を見出したリボンズは、表情には出さないが、まるで面白い玩具を みつけた子供のようであった。 そうだ、玩具だ。 リボンズにとって、イオリアの計画は重要なものであっても、彼個人に伴う情報などどうでもよいはずなのだ。 それは他のイノベーターも同じことであり、イノベーターという存在の中で生きてきたリボンズには、純粋に人間として生きるティエリア・アーデが面白おかしくて仕方ないのだ。 計画の遂行者であるリボンズと、計画のシナリオの発端者である天使と。 ティエリアがイオリアの生きた時代の人格を持っていたならば、理解しえるはずであった。 ティエリア・アーデが気に入ったのなら、彼の頑なな人間としての意思を無理やり折り曲げて、その脳に深く干渉すれば、 この穢れの知らない綺麗な自分の顔をもった天使は、リボンズに屈するだろう。 それほどまでに、リボンズの他のイノベーターへの干渉力は高かった。 リボンズが本気で深く干渉すれば、ティエリアは愛した人のことも忘れ、イノベーターとして生きるだろう。 そして、イオリアに施された誰かを愛するという人間性をもったまま、イノベーターの中で生きていたならば、きっと誰でもなくリボンズを愛していただろう。 いや、ティエリアなら、リボンズが深く脳に干渉してきた時点で、狂ってしまうかもしれない。 イオリアの天使は、他のイノベーターから干渉を受けにくくできている。 そうでなければ、とっくにリボンズはティエリアに干渉して、彼を手中におさめているだろう。 ティエリアに興味を持った時点で、そうなってもおかしくないはずだった。それほどまでに、リボンズはリジェネからティエリアという 存在に隠された裏の情報を知った時点で、ティエリアに対する価値観ががらりと変わってしまったのだ。 ただのイオリアの人形として泳がせているだけは勿体ない。それが最近のリボンズの口癖でもあった。 リボンズは、自分の意のままにならない存在に対しては、切り捨てるか、無理やり意思に従わせるかのどちらかを選ぶ。 リボンズには、そのどちらもできないのだ。ティエリアをただのイオリアの人形として切り捨てることも、そして自分の意思に従わせることも。 リジェネが、リボンズの、ティエリアに対する執着心というものに説明をつけるとすれば、決して自分の手に落ちることのない高嶺の花といったものか。 愛した人間を失ったティエリアは、それでも人間の中で折れることなく生きている。 同じイノベーターでありながら、人間を愛し、そして人間として生きようとするティエリアの姿が、リボンズには可笑しくて仕方ないのだ。 それがイオリアが差し向けたことであると知らない、無垢な姿が。 イオリアは、ティエリアに人間を愛し、人間として生きるように作っていた。それを、忠実なまでに 再現するティエリア。なんの疑いもなく、彼を愛し、そして人間の中で生き続けるティエリア。 、 イオリアの天使は今、イノベーターの第一号であり、イオリアの計画を手伝った者でありながら、イオリアの計画を壊そうとしている。 戦争根絶は、イオリアの計画の第一シナリオでしかないのだ。その時代はもう4年前に終わったのだ。 ティエリアは、リボンズにとって計画遂行の邪魔でしかない。 リボンズは、きっとはじめは殺してしまおうと思ったことだろう。 けれど、ティエリアが彼を愛しそして人間とし生きる姿が、イオリアの人形そのものに見えて、リボンズでさえも見ていて哀れに思えた。 残酷なまでに、計画の中で生きるイノベーターの天使に、リボンズははじめ自分のものにしてしまおうと思った。そうすることで、ティエリアをイオリアの計画から救い出すことができると思った。 けれど、ティエリアには他のイノベーターとは違って、深い干渉ができない。一時的に深く干渉することはできても、それでは彼の人格をただ歪めるだけだ。 彼を、救えない。 無垢な天使は、イオリアの計画の中で生き続ける。 イオリアの天使にして、イオリアの計画通りに生きる美しい人形。 リボンズは、イオリアの存在をとても疎ましく思った。人形として生きるティエリアを救えない。 せめて、イノベーターたちの間で生きていたのなら、深く干渉することができなくとも、長い間干渉し続ければ、ティエリアはイノベーターとして生き、自分の意思で誰かを 愛して、そして人間らしく生きただろう。 一人の仲間を救うこともできないことに、リボンズは自分の無力さを思い知った。 イオリアの天使は、果たして本当に自分の意思で彼を愛し、そして人間として生きているのだろか? 全てが、イオリアの描いた計画そのものなのではないだろうか? 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