宇宙を漂う。 大破したデュナメスのコックピットから出て、ロックオンはアリーに銃の照準をあわせた。 「てめぇだけは、許せねぇんだよ」 そのまま、引き金をひく。 ティエリアの笑顔が一瞬過ぎった。 「絶対に一緒にいるって、絶対に一人にしないって・・・永遠の愛を誓ったのに、ごめんな」 ロックオンは、眼帯の片方のエメラルドの瞳から涙を零した。 「愛してるよ、ティエリア」 引き金を引いた瞬間に、衝撃で体が吹き飛んだ。 「死に腐れ、この外道が」 アリーにむけて、精一杯の文句をぶつける。 ミサイルの起動は、確かにアリーののったガンダムスローネにあたった。 大破していく相手の機体を確認しながら、ロックオンは微笑んだ。 「なぁ、ティエリア。俺は、幸せだったぜ?お前がいてくれて、本当に幸せだった」 ティエリアの顔を思い出す。 涙がボロボロと零れた。 「一緒に生きたかったなぁ。お前を選ばなかった俺を許してくれ」 虚空に向けて、手を伸ばす。 その手を、微笑んだティエリアがしっかりと握り締めていた。 「ああ、ティエリア。そこにいたのか。愛してるぜ」 そのまま、ロックオンは堕ちていく。 果てしもない、暗闇の中へと。 堕ちて、堕ちて。 「愛してるぜ、ティエリア」 デュナメスのコックピットには、ハロだけがいた。 「ロックオン、ロックオン」 ハロの声を聞きながら、ティエリアは泣き叫んだ。 「嫌あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!こんなの嘘だあああああああぁぁぁぁぁーーー!!」 石榴の瞳を大きく見開き、絶叫する。 誰も、止めることはできなかった。 「ロックオン、ロックオン!!僕とずっと一緒にいてくれるって、誓ったのに!永遠の愛を誓ったのに!僕を残していってしまうというのですか!!」 ハロを抱きしめて、ティエリアはロックオンのコックピットで泣き叫んだ。 「こんなの嫌だあああぁぁぁぁぁ!!!」 「ロックオン、ロックオン」 ハロが、合成音声を出す。 「あああああぁぁぁぁ!」 悲鳴が余韻を残して、コックピットのなかでこだます。 「僕はあなた意外の何も望まなかったのに!」 「ロックオン、ロックオン」 「あなただけがいてくれれば、それだけで良かったのに!!」 「ティエリア、ナイテル。ティエリア、ナイテル」 「こんな現実僕はいりません!帰ってきてください、ロックオン」 手を伸ばしても、その手を掴んでくれる、ロックオンはいない。 ポロポロポロ。 いくつもの涙が、ティエリアの頬を伝った。 何時間くらい、茫然自失となって泣いていただろうか。 ティエリアは唄を歌いだした。 世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った 世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった 世界の終焉から あなたは私を連れ出す ロストエデン ロストエデン ロストエデン 失われた楽園に あなたは私を連れて行く ロストチャイルド ロストチャイルド ロストチャイルド 終わりからの始まり あなたと私は歩きだしていく 私の世界は終わったのに あなたはそこから私を連れ去る ロストエデン ロストエデン ロストエデン 失われた楽園に あなたは私を連れて行く あなたの愛がそこにある わたしのためだけの愛がある 世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った 世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった 私はもう一度歩きだす あなたと一緒に新しい世界を あなたに愛されながら 私もあなたを愛する あなたの愛に包まれながら 私は生きる 歩みだす ロストエデン ロストエデン ロストエデン あなたの愛が 私の楽園 あなたの愛が 私の世界 「ロックオン。僕を、ロストエデンに連れて行って」 ティエリアは立ち上がった。 そして、強い決意を胸に、ロックオンの部屋にくると、彼のジャケットを握り締めてないた。 「あなたの痛みを、僕に下さい。あなたがいないというのなら、僕が生きている理由はありません。僕は、生きることを放棄します」 そのまま、深く眠る。 白く白く、雪に埋葬されてくように、白く染まっていく。 ホワイトラヴァーズ。 愛は白く、愛は深く。 背中にあったはずの翼はもう、白く溶けてしまった。 あなたとの愛も、このまま白く溶けて形もなくなってしまうのだろうか。 ホワイトラヴァーズ。 このまま、白く白く、雪に埋葬されたい。 あなたの魂と一緒に。 待っていて。 あなたの元に、僕も行くから。 NEXT |