完全パラレル注意。 ティエリアが完全女の子。時代は現代。ニールの年齢も若いです。 大学生。日本の大学を元にしていますが、舞台は多分ヨーロッパ(w) ---------------------------------------------------------------------------------- 僕の瞳に、最後に映ったものはなんだったろうか。 忘れてしまった。 もう、遠いことのような気がする。 「おい、聞いたかよ。今頃転校生だってさ」 「今頃?もう今年もあんまりないじゃんか」 「なんでも、大学側に多額の寄付をしているからで、特別な計らいだってさ」 「何それー、生意気〜」 クラスのゼミの仲間がそんな会話をしていた。 ニールは、全く興味なくぼーっと窓から空の景色を見ていた。 ちらちらと雪が降っている。 寒いなぁと、暖房がついているにも関わらず、そんなことを思ってしまう。 「うーさぶ!」 友人の一人が、あけっぱなしだった窓を乱暴に閉めた。 「よ、おはようニール」 「ああ、おはよ・・・」 「元気ねーな。どーしたの?」 「別に」 ニールは今年で大学3回生になる。再来年になれば卒業だ。すでに4回生も近いということで、就職活動で忙しい生徒も多数いる。 連邦政府に所属しているこの国は、他の国と違って景気がいいとはいえ、国外から大量の労働者を雇っている現状では、そうそう簡単に就職先が見つかるわけでもなく、生徒たちの気分も荒んでいた。 景気が悪いのとそう状況は変わりない。 安い賃金で雇える国外の労働者に比べ、正規の賃金で雇わなければならない若い労働力はあまり歓迎されているとはいえない。大手企業は無論、毎年新卒の学生を多数雇用するし、不景気の時に比べればまだ就職はしやすい。 それでもリクルートスーツを着て、企業の説明会に参加しなければならないなど、めんどくさいことこの上ない。 ニールも他の生徒と同じで、就職先はまだ決まっていなかった。 「このクラスに転校生だってよ」 「ああ、さっき聞いた」 「こんなもうすぐ4回生になるって時期に転校だとか、バカじゃねーの?意味ねーよな」 「きゃはははは、あたしも思う思う!」 脳みそが軽そうな連中が、好き勝手に騒ぎ立てる。 ニールはそうした連中の周りにはおらず、どちらかというと一人で行動するタイプの人間だった。 それでも、成績優秀、容姿端麗、家柄もよいというニールの周りには友人が絶えることはない。 そのほとんどが、テスト前にニールがまとめたレポートを目当てにしているのだと、ニールも気づいていた。だが、ニールも学校を休んだ日は、かわりに代弁をとってもらったりノートをとってもらったりしているので、邪険することもない。持ちつ持たれつ。友人なんて、そんな気楽な関係でいいじゃないか。 希望していた大学を悉(ことご)く滑って、今の大学に入ってしまった時から、なんだか人生が半分どうでもいい気がして、大学を欠席する日も珍しくない。 無論、成績に響くほどは欠席していない。出席もとらない、適当に選択したどうでもいい授業の日なんかを選んで休んでいた。家は資産家で、ニールはバイトをしていない。金に困ったこともない。 将来は、親の跡を継ぐか継がないかというところなので、真剣に就職活動に打ち込んでいるわけでもない。 ただ、親からは就職して、数年は自立しろと言われているので、一応は就職活動をしている。もしも就職できなかったとしても、親は非難することはないだろう。甘い親だ。 今の両親とは、血が繋がっていなかった。 ニールの頭脳を買い込んで、ニールを養子にしたのだ。同じように、双子の弟も。 ニールの実の両親とそして一人の妹は、テロによって死んでしまった。そのまま施設に引き取られた。親戚はいたが、誰もニール兄弟を引き取ろうとする者はいなかった。 世の中、どうせそんなものだ。 自分の身が一番かわいいのだから。 今の親と出会ったのは、13歳の頃だ。その頃のニールは国内でもTOPに入る成績を維持していた。弟は気まぐれな性格で、成績は良いとはいえなかった。将来、何かあったときは弟を支えてやるのは、たった一人残った兄である自分の役目だとずっと思っていた。今も思っている。 ニールは地元の有名私立進学校に進み、そのまま希望する大学を受験した。だが、競争率も高く、世界でも有数の名門と呼ばれるその大学に進学することはできなかった。結局、隣国の大学に進んだ。ありふれた大学だった。それでも国内では名門、と呼ばれる位置にある大学だったが、ニールが第一志望として選んだ大学とは雲泥の差であった。弟のライルも、なぜか同じ大学に進んだ。気まぐれな猫のような弟は、その気を出せばニールよりも良い成績を出すことがあった。同じ大学に進む双子の兄弟に、親は文句を言わなかった。 ありふれた、といっても国内では有名な大学であったし、両親もこの大学の卒業生であった。 なので、文句をいわれることはなく、逆にこの大学を選ぶなんて、見る目があると褒められたくらいだ。 人生とは、なんてつまらないのだろうか。 ニールは漠然と思う。 頭脳を買われ、資産家の家の息子になった。親はとても人間性がよく、ニールと弟のライルを実の子供のように深く愛し、可愛がってくれた。愛されているという自覚もあったし、ニールも親を愛していた。 だが、まだどこかで失ってしまった本当の家族と暮らしたかったという寂寞とした思いが消えないでいた。 目の前で、ただの肉塊になってしまった両親と妹。 今でも、忘れることはできない。時折夢に出てきては、うなされた。 「よー兄貴、おはよー」 |